定説だったり俗説だったり、
いわゆる「未完成曲」には様々なストーリーがまとわりついている。
よっぽど好きな人でもない限り、
いったん染みついたイメージを能動的に置き換えようとする人は多くないだろう。
そうした作業の一助になる書。
著者の中川さんは自分にとって
↑なんかでおなじみ。
ちなみに「週刊金曜日」にも連載を持っていて、
今回の「未完成」と通じる内容となっている。
中川氏はおそらく資料を非常に丹念に読み込んでいるのだろう。
時系列に従い縦糸と横糸を手繰り合わせるような記述が「売り」だと思う。
だから、「ああ、この人の行動にはあの人のあれが関係してたのか」とか
そういうプチ発見がたくさん楽しめる。
ブルックナーの9番はほとんど完成していたのに、
死去時のどさくさで遺稿が散逸。
4楽章の補完版もあるけれど、
聴く側と売る側が「死=未完成」のイメージを好むがゆえに、
静かに終わる3楽章までの演奏が定着している。
マーラーの10番にまつわる伝説、
「三つの打撃」「死の影への怯え」「アルマの不倫に対する苦悩」。
著者は事実検証を経た結果、これらに懐疑的である。
有名な「九の伝説」についても、
必ずしも既定の話ではないという。
ショスタコーヴィチの「オランゴ」は
その存在自体がまさに黒歴史として忘れ去られた。
それはスターリン時代の闇黒を生きた人々が、
「なかったこと」にしてしまっていた。暗黙のうちに。
モーツァルトの「レクイエム」は、
モーツァルト自身が作曲依頼者のゴーストライターだった、
という話が興味深かった。
他にも、シューベルトとプッチーニのエピソードあり。
上記のような話は、
まあ知る人にとっては半分常識な面もあるのかもしれないけど、
俺のようなライトなファン(と敢えて自虐的自称をするが)にとっては
結構新鮮だったね。
もちろん、これらは中川氏なりの組み立てであって、
史実はまた別のところに存在する可能性もある。
なかなか奥深い音楽ミステリーを新書という手軽なフォーマットで楽しめるのだから、
少しでも興味のある人は読んで損はない。
かくいう俺も、
自分的三大好きな作曲家(ブルックナー・マーラー・ショスタコーヴィチ)が
まんまと俎上に乗せられてるわけで、
誰得?俺得!な読書でありました。
いわゆる「未完成曲」には様々なストーリーがまとわりついている。
よっぽど好きな人でもない限り、
いったん染みついたイメージを能動的に置き換えようとする人は多くないだろう。
そうした作業の一助になる書。
未完成 角川SSC新書 大作曲家たちの「謎」を読み解く | |
クリエーター情報なし | |
角川マガジンズ(角川グループパブリッシング) |
著者の中川さんは自分にとって
ショスタコーヴィチ評盤記 | |
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アルファベータ |
松田聖子と中森明菜 (幻冬舎新書) | |
クリエーター情報なし | |
幻冬舎 |
↑なんかでおなじみ。
ちなみに「週刊金曜日」にも連載を持っていて、
今回の「未完成」と通じる内容となっている。
中川氏はおそらく資料を非常に丹念に読み込んでいるのだろう。
時系列に従い縦糸と横糸を手繰り合わせるような記述が「売り」だと思う。
だから、「ああ、この人の行動にはあの人のあれが関係してたのか」とか
そういうプチ発見がたくさん楽しめる。
ブルックナーの9番はほとんど完成していたのに、
死去時のどさくさで遺稿が散逸。
4楽章の補完版もあるけれど、
聴く側と売る側が「死=未完成」のイメージを好むがゆえに、
静かに終わる3楽章までの演奏が定着している。
マーラーの10番にまつわる伝説、
「三つの打撃」「死の影への怯え」「アルマの不倫に対する苦悩」。
著者は事実検証を経た結果、これらに懐疑的である。
有名な「九の伝説」についても、
必ずしも既定の話ではないという。
ショスタコーヴィチの「オランゴ」は
その存在自体がまさに黒歴史として忘れ去られた。
それはスターリン時代の闇黒を生きた人々が、
「なかったこと」にしてしまっていた。暗黙のうちに。
モーツァルトの「レクイエム」は、
モーツァルト自身が作曲依頼者のゴーストライターだった、
という話が興味深かった。
他にも、シューベルトとプッチーニのエピソードあり。
上記のような話は、
まあ知る人にとっては半分常識な面もあるのかもしれないけど、
俺のようなライトなファン(と敢えて自虐的自称をするが)にとっては
結構新鮮だったね。
もちろん、これらは中川氏なりの組み立てであって、
史実はまた別のところに存在する可能性もある。
なかなか奥深い音楽ミステリーを新書という手軽なフォーマットで楽しめるのだから、
少しでも興味のある人は読んで損はない。
かくいう俺も、
自分的三大好きな作曲家(ブルックナー・マーラー・ショスタコーヴィチ)が
まんまと俎上に乗せられてるわけで、
誰得?俺得!な読書でありました。
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