高島俊男「中国の大盗賊・完全版」

2007年08月16日 15時06分27秒 | 巻十六 読書感想
講談社現代新書。
2004年10月刊。

中国の歴史を賑わした「盗賊」たち、
劉邦、朱元璋、李自成、洪秀全、毛沢東の姿が描かれている。

ここでミソなのはやはり、
毛沢東が含まれていることだろう。

著者があとがきで匂わせているように、
本当に言いたかったことは
毛沢東も中国史上の盗賊の系譜で位置づけられる、ということだ。

確かに著者の論で行けば、
王朝末期の豪傑であること、
徒党(私党)の結成、
政敵打倒権力奪取、
粛正、世襲化…
まあ、おっしゃるとおりだろうな。
絵に描いたような「盗賊」のお仲間に違いない。

前後するが、著者によれば
中国史における盗賊とは、
「官以外・武装・要求実現には実力行使・集団」がキーワード。
現代日本における「盗賊」とは似て非なるものである。

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文章は至って平易。
どっかで聞いたことのある話も含めて、
豪傑・首領たちのエピソードは非常に面白い。
と同時に、
歴史っていうのはやはり繰り返されるんだな、という感も改めて。

現在の中華人民共和国は、
清朝までの王朝時代以上に、
「帝国」であるという。
いわく、
個人の自由が失われた、
儒教以上に経典化されたマルクスレーニン主義…。

まあ、
よっぽど共産中国(というか毛沢東)がイヤなんだな
という気配も無くはないけど。
それはそれで、自分の中でバランス取って読んでるからいい。

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印象に残ったのは、
小平が明王朝の永楽帝に準えられているところ。
永楽帝は、初代皇帝の遺訓に背き、
自ら二代目を倒して帝位についた。
そして、結果的に明王朝の繁栄をもたらした。

小平もまた、
毛沢東の夢見た(?)共産主義社会への道を大転換し、
現代へと続く改革開放路線を歩む。
その結果、一応は現在の繁栄社会に到達した。

永楽帝の国家も、小平の国家も、
洪武帝や毛沢東が目指した国家の有りようとは変わってしまった。
しかし、創業者の一番の願いが
その国家の安定と繁栄にあったのだとしたら、
皮肉にも永楽帝も小平も一番の忠臣と言えるのである。らしい。

なんだかんだ言っても、
共産党政権ができてまだ半世紀。
半世紀と言えば、
百年単位で興亡してきた中国の歴代王朝に比べれば
まだまだ短期政権。

次なる中華帝国の姿はいったいどうなるんだろうか。
自分は、地獄の二丁目からこそっと覗いていようかと思う。

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2 コメント

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結論は遠くないのかも?! (クマッチ)
2007-08-17 01:22:27
どこかで読んだ言葉で
「規律無い情報の氾濫が家庭を崩壊させる」
を思い出しました。

共産主義(指向)と資本主義のダブスタを
持ってしまったアノ国。
読んだ言葉のようにならなければいいですが。
実はもう、なってるのかも?!
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Unknown (朱厚照)
2007-08-17 21:50:38
クマッチさん

近世までと現代の大きな違いは
止め処ない「情報化社会」であることだと思います。
だから、もう百年も安定して続く帝国なんてありえないでしょうね。
そういう視点で言えば、
隣の半島の北側の国の行く末の方が興味ありますが。
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