映画「アドルフの画集」

2009年12月31日 07時49分31秒 | 巻十五 アニメ・ドラマ・映画
全体に沈鬱な色合い。
混沌とした印象といい、
敗戦直後のドイツ社会の一端を感じることができる。

アドルフの画集 [DVD]

アミューズソフトエンタテインメント

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物事を一面だけで捉えるのは愚の骨頂であり、
ヒトラーを史上最大の犯罪的独裁者として批判断罪するだけでは
あまりに不十分なのは自明のことだ。

それにしても、画家を目指していた彼が
もしこの時才能を見出されその道で開花していたとしたら?
(それは偶然の結果として充分あり得ること)
それでも彼は、政治の道を結局選んだかもしれない。

芸術の道と政治の道の間で揺れ動くアドルフ=ヒトラーが描かれている。
それはまた、
「ユダヤ人画商への依存感情」と「強烈な反ユダヤ主義」という、
相反する心理の揺れでもある。

しかしそれは、けして矛盾なのではないのだろう。
個人としての利益獲得と思想信条などというものは元々別物だ。
大概の人間はそうだろう。
○○国人を嫌悪するからと言って、
自分の身につけているモノの生産国を厳密に峻別している者などそうはいないように。

コンプレックスの塊で、演説というもう一つの才能に覚醒した男。
どこにでも、出現し得る男だ。
今この世の中に、幸いにして彼のような人間はいない。
しかし、今後も現れないとは誰も確信できないだろう。
社会状況は、当時とそう変わっていない。
むしろ、民衆の劣情にダイレクトに訴える手段を人間は手に入れてしまった。
そしてそれに対抗しうる重要な手段もまた同じなのだろうが。


関連書籍
アドルフ・ヒトラー―「独裁者」出現の歴史的背景 (中公新書 (478))
村瀬 興雄
中央公論社

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