池上彰・佐藤優「大世界史 現代を生きぬく最強の教科書」

2015年10月30日 00時00分00秒 | 巻十六 読書感想
佐藤優氏はあとがきで言う。
佐藤氏と池上氏が今直面している相手は二つ。

客観的な事実を無視し自分の好きなように世界を理解する、
まるであの首相のような、反知性主義。

そして、大学の文系学部を軽視する言説に見られるような、
極端な実学重視主義。

この点については、俺も全くもっておんなじ感覚でいるので、
なるほど本書を非常にスムーズに読むことが出来たのは
根本でそういう共感があるからだな、と。

大世界史 現代を生きぬく最強の教科書 (文春新書)
クリエーター情報なし
文藝春秋


机上の理屈だけでなく、現場の生の情報に触れてきた(とされる)二人だからこそ
その発する言葉に妙なリアルさというか説得力があるのではないだろうか。

印象に残った点をメモ。

現在の中東のカギは、トルコとイラン(ペルシャ)という
二つの帝国の再興。
特にトルコの話は面白かった。
エルドアンがカリフを意識しているというのも、
実際はどうあれなるほどと思わせられる。

習近平政権は明王朝。
鄭和の遠征が、南シナ海の九段線に繋がっている。
本来、「帝国」は航海の自由を重視した。
なのに現在の中国は、帝国的な一方で、領海の囲い込みを行っている。

韓国の教科書はテロリズム史観。
北朝鮮の方がまだ冷静。

ギリシャは人造国家。
オスマントルコの解体の過程で、
在露のギリシャ人と、トルコ領内のギリシャ正教徒がその構成員となった。
古代ギリシャからの伝統など断絶している。
成り立ちから言って現代ギリシャはそこに国として存在することに意義があり、
以前から援助漬けだった。
彼らに勤勉であれというのも矛盾している。
共産化を警戒して工業化させなかったというのもおもしろい。



…などなど
これだけでもまだ一部だけど、
歴史好きな自分でも「そういう見方があったか!」って話が少なくない。

もちろん、これらもある意味一つの視点に過ぎず、
歴史観というか現代を捉える視点というものは無数にあっていい。
俺だって妄信するつもりもない。
リテラシーリテラシー笑

ただ、純粋に知的散策のツールとしても、
この本を読むために数時間を費やすことに躊躇いも惜しみもない。

非常に楽しい時間だった。

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