愛国者は信用できるか 鈴木邦男講談社このアイテムの詳細を見る |
あとがきにおいて、著者は言う。
「いっそ日本一の『反日書』『売国本』と呼ばれたい」
本書の中で鈴木が言うところの日本的「謙虚さ」に溢れた「自虐的」表現だが、
極めて真っ当な事を真っ当に書いた好著、だとこの際だから敢えて言いましょう。
当たり前すぎて少々肩透かしさえ感じ。
(思想的には相容れないところも多いが。)
最近流行の「ネット右翼」とか、
強制されないはずの君が代斉唱を強制する奴等とか、
そういう勘違い自称愛国者への、
これは筋金入り先輩右翼としてのメッセージでもある。
例えば左翼過激派に対してさえも、
「憂国」の一点において一種の共感を隠さない。
こういう巨視的というか流動的な視点があるから、
やはりこの人の一言はメディアでも耳目を惹かれるのだろう。
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そもそも、
愛国にいうところの「国」ってなんなのさ。
本書では、著者の意図するところかどうかは別にしても、
日本国に住んでいる「外国人」や「在日」と呼ばれる人々、
そして「先住民」的存在、
こうした人々に対する言及は無い。
天皇を中心とした共同体を意識し、真の愛国心を持つ、
この態度はこの列島に住む限り当然の前提のように論が進む。
公平さを期すなら、
著者は、「愛国的思想に反する態度」を否定しているわけではない。
多種多様な言論があることはむしろ推奨している。
しかし、彼が是とする「日本国」像は、
「素直には天皇制国家を有難く頂くことのできない人々」に対する想像力が、
いま少し欠けているんではないのかな、と、
この本を読む限りでは感じた次第だ。
もっとも鈴木のことだから、
ここら辺の言及は他の場で行なっているんだろうが。
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以下は本書の感想というよりは、独り言。
どっかで誰かも言ってたが
右翼思想≒保守思想っていうのは、
やはり理屈ではないんだな。
不条理と不合理の集えし世界。
キャリア官僚から皇太子妃となった女性に対して、
気の毒に、という感情は表すけれども、
そもそもそんな「気の毒」を生産するシステムである天皇制に対しては
根本のところで疑問を差し挟むことは無いのか。
天皇制は素晴らしいと言い続けるばかりで、
当の天皇・皇族を一個の人間と捉えた想像力は示されぬのか。
「」に生まれた不幸と皇室に生まれた(所属した)不幸は
同じレベルで論じられるべきなのではないか。
もちろんそれが「幸福」であったとしても。
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結論(?)
根っからの反天皇制人間や、「正論」あたりを有難がる人間、
両方に是非読んでもらいたい。
この本のために夏の午後の3時間潰しても惜しくないよん。
例によってwikipwdiaで仕入れた話ですが。
安倍宗任って初めて知りました。
再チャレンジ、ってことでしょうか(意味不明)