旅のウンチク

旅行会社の人間が描く、旅するうえでの役に立つ知識や役に立たない知識など。

たかが空き缶、されど空き缶

2007年12月15日 | 旅の風景
パキスタンをツーリングしていた時、道路脇で4リットルのオイル缶をきれいにピラミッド状に積み上げて売っているのをよく目にしました。私はそれを、ずっと"オイルを売っているのだ"と思っていました。

パキスタンの滞在もほとんど3ヶ月に至ろうとして、そろそろ滞在期限が切れる頃。私はイスラマバードのガソリンスタンドでオイルを購入。そのまま滞在期限切れと競争でイラン国境へ向かっていたのです。そして、ある日の夕刻、オイルを交換しようと考えて道路を外れて砂漠の中へ入っていきました。

酷い話ではあるのですが、廃油処理の方法が無いので、砂漠に穴を掘ってそこにオイルを抜き出していました。だから人目につきにくい砂漠の中を選んだわけです。

ところが、こういう所ではよくある話で、作業をしているうちに、いつのまにか数人の人間が周囲にやってきて、黙って作業を見つめています。咎められるかと思いきや、そういうわけではありません。

作業を終えて、空になったオイルの缶をどう捨てようかと考えていると、そのうちの一人が身振りでそのオイルの空き缶をいくらで売ってくれるかと。もちろん私は"あげるから持っていって"。

そういえば、チャイハナなどで食事をする際に、調理がなされるのを何気なく見ていると、ドラム缶に入ったギー(食用獣脂)をカストロールとかカルテックスのロゴが入った缶で掬い取る光景を何度か目にしたのを思い出しました。私はその時は、カストロールやカルテックスはエンジンオイルだけでなく、食用油も生産しているのかと思っていましたが、どうやら違ったようですね。

最初に書いた、道路脇に積み上げられたオイル缶も、オイルを売っているわけではなく、空き缶を売っていたのだという事がようやく理解できたのでした。

物が無い国で生活してみると気がつくのですが、オイルの缶や洗面器のように液体を入れる事ができる容器というのはなかなか貴重な品物なのです。


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