前回
②ニートクリスマス誕生前夜
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Elektra Records |
12月に入り、ハローワークに行った。そこにクドウがついて来た。
俺の家の側には、わけのわからない公園があり
その先にクドウの家がある。
高校を卒業した後に俺が引っ越して来て、その後、しばらくはクドウとは会ったことがなかった。
クドウは多分、引っ越していたことを知らないでいる。と、俺は思っていたが、どうやら俺が引っ越してここに居たことは知っていたようだ。俺は甘かった。この石畳の向こうの家に住むクドウが知らないはずがなかったのだ。
「なんで前の会社辞めたの?」
「カノが会社に連絡したら、もう辞めてて驚いてたよ」
「なんか眠れなくなってさ、わけわかんなくなったんだよ」
「何日かズル休みして」
「そのあと精神的におかしくなったから病院行きます。って一身上の都合で辞めたんだよ」
「あの会社人事移動激しくなってさ」
「ギスギスしてて、俺もついてけなくなって」
「前は職場内で仲良くしてて、楽しい時もあったけどさ」
「もうなんだか辞める口実で精神的におかしくなったとしか言えなかったよ」
「世間の笑いものだなー俺」
「もう少しで3年目だったけどな、3年経ってないから退職金出ないって言われてさ」
「なんか損だったなー」
「ボーナスもカノがノルマ製品買ってくれたりしたから、基本給が安い分」
「まあまあ、あった」
「失業保険もらってないの?」
「自己都合退社だからもらえないよ」
「そんなことないでしょ」
「あんたバカなんじゃないの?」
「病院行った?」
「行ったことないし、もう社会保険じゃないし」
「あんたほんとにバカなところあるよ」
俺をほんとにバカだと言ってくるクドウ。クドウとは、中学時代から高校時代もあまり落ち着いて話したことはなかった。
ハローワークの行き帰り。クドウは軽快な語り口で俺と話していたが、懐かしそうにしていたのは俺のほうだった。
クドウはこの日はタイトスカートを履いていた。この辺に両親の知り合いがけっこういるようで、それでタイトスカートを履いていたのかは?謎だが。俺のほうは、今日からカノの事は忘れることにしたのだ。
クドウは昔から冷静というかクール。
時々コミカルな話をしたかと思えば、真面目に熱のこもった話しもする。とりわけ前の仕事の時の話となると熱がこもるというか、クールに熱いのだ。
タイトスカートもそのイメージで履いているのかと思うほど。とりわけ、今は俺と同じニート無職中だった事には驚いた。
「俺が前の職場で会ったときは、35億のオーラで会社内を俺の前で素通りしてさ」
「あの時、営業で来てて、アララギが居たのは気付いてたよ」
「全然気付いてなさそうだったからさ、スルーするのも勿体ないから声かけたんだよ」
「クドウに知らんふりされるかと思ったけど」
「それがこないだの夜、ブルゾンどころか!あらくれ姿で部屋に入ってくるんだもんなー」
「アララギに知らないふりしたことないでしょ」
ハローワークデートの後、再就職するまでは断られると思いつつ、「家に寄っていかないか?」と、クドウに言ったらすんなり入って来た!。
「あれ!」
(あれあれの連続なんだよな)
(カノとクドウと会ってから・・)
「あれ!カーペット引いたの?布団は?」
「さすがにあれから布団は二階の部屋に上げたよ」
「文房具屋で履歴書も買ったし、履歴書書こうか?」
「ちょっとテーブルとかないの?」
「テーブル?」
「あー今もってくるから」
電気コタツを後で置こうとして、テーブルは置いてなかった。
「どこ?」
「そこにちょっとしまってある」
・・・・
「けっこう大きくて重たそうじゃん」
「持てる?」
「中身空洞で、見た目だけで重たくないよ」
クドウは何も言わずに俺とテーブルを運んだ。
「あいやいや! ごめん あーありがとう」
(俺とクドウで履歴書を書き。夕食は出前を頼み、あとは帰るかと思いきや・・・)
あれよあれよという間にクドウと俺は二階の部屋で一夜を過ごした。
クドウと俺が気が合うまでのことは、関係を持ってから語り合うことになった。
次回
④ニートクリスマス 燃える欲望