中国の「漁業区域」 既成事実化の試み許せぬ
中国が、周辺諸国・地域と領有権を争う島々を含む南シナ海に、一方的に外国の漁船の操業を制限する区域を設けた。
尖閣諸島が浮かぶ東シナ海の上空に、防空識別圏の設定を宣言した、そのやり口とそっくりだ。海洋進出拡大の既成事実化を推し進めるという意図において同根であり、日本も看過してはならない。
力を背景に現状変更を試みる暴挙は直ちにやめてもらいたい。防空圏の撤廃も改めて求める。
外国漁船の操業制限区域は、中国が台湾、フィリピン、ベトナムなどと係争中のスプラトリー(南沙)諸島といった島々が点在し、南シナ海の3分の2に及ぶ。
区域に進入する外国の漁船は中国側の許可を求められ、従わない場合の、漁獲物没収などの罰則まで定められているという。台湾当局が「受け入れられない」と拒否したのは、当然である。
制限区域設定は中国南部の海南省の法的措置に基づくとされ、どこまで履行されるかはなお不明だ。はっきりしているのは、その狙いが南シナ海での管轄権を唱え、海洋進出の既成事実を積み重ねる点にあることだ。
中国は、南シナ海の広い範囲を自国の海と見なし、東シナ海の防空識別圏に続き、南シナ海でも防空圏を宣言する構えだ。「漁業区域」がまかり通れば、対象が商船や軍艦船に広がり、「航行の自由」が著しく侵害されかねない危険性も認識する必要がある。
実際、南シナ海では昨年12月、中国の海軍演習を監視していたとみられる米艦に、中国艦が異常接近し、2009年には米調査船が中国艦に包囲されている。
米国務省が制限区域を「挑発的で、危険な結果につながりかねない行動だ」と非難したのも、そんな危機感からだろう。
防空圏の設定は、米韓など各国が批判し、日本は再三、撤回を求めているのに対し、中国は聞く耳を持たない。しかし、中国による海洋進出の既成事実化にはその都度、警告の表明など厳しく根負けせず対応しなければならない。
先の日本・東南アジア諸国連合(ASEAN)特別首脳会議で、共同声明に「飛行の自由」がうたわれたのは極めて適切だった。
今回の漁業区域設定には、加盟国のフィリピンなどから懸念が示されている。日本政府も大きな声を上げるべきだろう。<iframe id="dapIfM2" name="dapIfM2" src="about:blank" frameborder="0" scrolling="no" width="1" height="1"></iframe>