米国のジョー・バイデン大統領は、世界の首脳の中で最初に対面会談する相手として日本の菅義偉首相を選んだ。
米国にとって日本は最も重要な国だと世界に示した形である。会談では、覇権主義的な行動をとり国際秩序を乱す日米の共通の敵である中国に、共同で対抗するという認識で一致した。
併せて、「台湾海峡の平和と安定の重要性」を強調、「日米安保条約5条が尖閣諸島に適用される」ことが再確認された。
具体的には、日本には最前線である尖閣が有事になれば、米国に介入してもらう。台湾には、米国に現状維持を支持・支援してもらうというものだ。
中国、日本、台湾を中心に地図を見ると、米国に介入してもらうという片務的に見える。だが、米国の関係を環太平洋の地勢で眺めてみれば、日米同盟は、片務的ではなくて、双務的に見える
中国の台頭が日米同盟を双務的に
ソ連邦崩壊によるロシア軍事力の低下と入れ替わり、中国軍の急激な増強で、米中が広大な太平洋を挟んで対立する構図が新たに出来上がった。
地政学的観点から米中を見ると、日本列島(特に南西諸島)と台湾が中国の太平洋への進出を塞ぐように位置している。
つまり、日本の独立が守られて、そこに米国の勢力圏にあるからこそ、中国軍を東シナ海以東に抑え込むことができるのだ。
すなわち、中国軍は米本土(ハワイを含む)に近づくことができず、米国本土が守られているということだ。
軍事力を飛躍的に増強してきた中国軍の太平洋正面での現在から近未来の軍事戦略は、A2/AD(接近阻止/領域拒否)と呼ばれる。
第1列島線である日本の九州~南西諸島~台湾~フィリピンなど(南シナ海の取り囲む国々)で米軍の侵入を阻止すること、第2列島線である伊豆諸島~小笠原諸島~グアム~パラオの線の以西(内側)で、米軍の行動を妨害することである。
10~30年後、中国軍がさらに増強され、西太平洋において中国が攻勢に出て、日米が防勢することになり、第1列島線である日本列島~南西諸島~台湾が中国軍に占拠されてしまえば、第2列島線と呼称される線は、北太平洋上のまばらに存在する小さな点(島)を結ぶ線にすぎないものとなってしまう。
北太平洋での中国軍の東進を阻止することは地形的に見て難しい。戦力を展開できる拠点として使えるのは、ハワイとグアムだけだ。