トランプ氏が安倍元首相を大切にしていたと実感 石破首相に見えぬ「同盟深化」 松井一郎
ドナルド・トランプ次期米大統領は15日(日本時間16日)、米南部フロリダ州の私邸「マールアラーゴ」に、安倍晋三元首相の妻、昭恵さんを招いて、プライベートな夕食会を開いた。メラニア夫人がX(旧ツイッター)に投稿した写真を見たが、トランプ夫妻の気遣いを感じた。トランプ氏が安倍元首相を大切にしていたと実感
米メディアによると、トランプ氏は、安倍氏が凶弾に倒れた後も、昭恵さんに電話をして近況を尋ねていたという。今回改めて、トランプ氏が安倍氏を大切にしていたことを実感した。日本の歴代首相で、安倍氏ほど世界のリーダーから慕われた人物はいないのではないか。
トランプ氏は、夕食会後の記者会見で、石破茂首相と来月20日の就任前に会談する可能性を記者団に問われ、「彼ら(日本側)が望めばあり得る」との考えを示した。
ただ、安倍政権時代とは違って、ディール(取引)などで相当高めの球を投げてくるのではないか。石破首相には「日米同盟の深化」を進める具体的戦略が見えない。
中国は、トランプ次期政権の対中強硬路線を意識したのか、「日本産水産物の輸入再開」や「日本人への短期滞在ビザ(査証)の免除措置再開」というカードを切ってきた。日米同盟に亀裂を入れようとしたのだろう。
米国は日本唯一の同盟国であり、この大原則は変わらない。石破政権は中国の覇権主義に異を唱え、日本の領空・領海への侵犯・侵入行為に強く抗議すべきだ。そのうえで、現状をチャンスにする戦略を打ち出してはどうか。
「御大」こと石原慎太郎元都知事はかつて、沖縄県・尖閣諸島での灯台設置を訴えていた。尖閣周辺海域は荒れることが多く、灯台は近くを航行する船舶を守ることになる。習近平国家主席の中国がトランプ次期政権への対抗上、日本に強く出られないなか、灯台を設置できれば実行支配を強めることになる。さて、野党が強く主張した「企業団体献金の禁止」に対し、石破氏が国会で「憲法違反」まで持ち出して抵抗・反対したのには驚いた。
リクルート事件など相次ぐ政治汚職をきっかけに、1994年の改正政治資金規正法で、「政治家個人」への企業団体献金は禁止となった。「政党」への企業団体献金についても、付則で「施行から5年後に見直しを行う」と盛り込んだ。
これを受けて、同時に成立した政党助成法では、国民1人当たり250円の血税が原資となる「政党助成金(政党交付金)」の導入が決まったのだ。野党は「30年前の国民との約束を守れ」と言っているだけである。ちなみに、日本維新の会は自主的に企業団体献金を禁止している。
先の衆院選で、国民は「『政治とカネ』の問題をクリーンにせよ」と審判を下した。石破首相は企業団体献金を死守したい「党内守旧派」に配慮しているのかもしれないが、来年夏には参院選がある。このままでは、自民党はさらに国民から見放されるのではないか。(前大阪府知事、前大阪市長 松井一郎) 夕刊フジ
トランプ氏、昭恵さんとの夕食会で「中国と台湾が大きな問題だ」…ゼレンスキー氏との会談にも言及
米国のトランプ次期大統領が今月、安倍晋三・元首相の昭恵夫人と面会した際、中国と台湾を巡る安全保障環境を議題にしていたことが21日、わかった。トランプ氏は台湾有事を念頭に「世界の平和のために、中国と台湾が大きな問題だ」と発言し、新政権で台湾情勢への対応を重視する姿勢をにじませた。
複数の関係者が明らかにした。トランプ氏は今月15日(日本時間16日)、メラニア夫人とともに米フロリダ州の自身の邸宅「マール・ア・ラーゴ」に昭恵氏を迎え、夕食会を開いた。安倍元首相の思い出話に加え、台湾を含む世界情勢にも話題が及んだ。
夕食会でトランプ氏は、ロシアのウクライナ侵略に関し、停戦交渉に重ねて意欲を示した。12月上旬に訪問したパリで行ったウクライナのゼレンスキー大統領との会談で、戦争をすぐに終わらせるよう求めたことも説明したという。
トランプ氏は昭恵氏を通じて、石破首相に贈った自身の写真集にも「PEACE(平和)」と直筆で記していた。
中国は台湾への軍事的圧力を強めており、日米両政府は台湾有事への警戒感を高めている。岸田前首相とバイデン米大統領による首脳会談では台湾海峡の平和と安定の重要性について確認してきた。今後は、石破首相がトランプ氏と台湾情勢への認識を共有できるかどうかが焦点となる。
トランプ氏は、首相との会談について、来年1月20日の大統領就任式前の同月中旬であれば可能だと日本側に伝えている。
読売新聞
トランプ氏と昭恵夫人の面会は日本に大きな貢献 前回就任前は外務省が抵抗 高橋洋一
安倍晋三元首相の妻、昭恵さんとドナルド・トランプ次期米大統領夫妻が面会した。
トランプ氏は、フロリダ州の私邸「マールアラーゴ」の自宅で、昭恵さんと会った翌日、ソフトバンクグループの孫正義会長兼社長とも会った。記者会見では、トランプ氏は孫氏とともに現れ、今後、ソフトバンクグループが米国に1000億ドル(約15兆円)の投資を行い、少なくとも10万人の雇用を創出すると発表した。
この順番で分かるのは、トランプ氏にはまず「友情」、次に「カネ」がモノを言うことだ。
会見でトランプ氏は、石破茂首相との会談の可能性について質問されると「首相と会うだろう」と述べた。さらに「(来年1月20日の)大統領就任式の前に会うこともあるのか」という質問には「彼らが望むなら、そうする」と述べた。前日に面会した昭恵さんを通じて、石破首相に本などを贈ったとも明らかにした。
この会見では、トランプ氏は安倍元首相の名前を何度も出したが、石破首相の名前を出すことはなく、「日本の首相」という表現だった。トランプ氏が「ぜひ会いたい」と述べたとの報道もあったが、トランプ氏の会見の様子からは、そこまでの熱意は感じられなかった。
日本政府は水面下で石破・トランプ会談を模索していた。昭恵さんとの夕食会もあったので、トランプ氏は石破首相と会う意向はあるのだろう。
筆者としては、石破首相がトランプ氏と会って、自らの「アジア版NATO(北大西洋条約機構)」を説明したらどうかと思っている。トランプ氏は、アジア版NATOのメンバーを聞くだろう。もしその中に中国が入っていれば、日本は「敵国」に認定されてもおかしくない。「中古の原子力潜水艦でも購入したい」と持ちかければ応じてくれるかもしれないが、深い話ができるだろうか。
ある民放の情報番組で、トランプ夫妻と会食した昭恵さんを非難するコメンテーターがいた。「(国民が)選んでも託してもない」「マイナスの結果が出たらどうする」などと発言していた。
実際には昭恵さんと孫氏が、かろうじてトランプ氏の日本への関心をつなぎ止めてくれた。日本のことを思うと、素直に評価したい。いずれも、日本政府とは別のチャンネルだが、広い意味での日本の国益にかなっている。
2016年当時も似た状況で、トランプ氏の就任前の会談には外務省が抵抗して消極的だった。そこで、安倍元首相の個人的なツテを頼りにトランプ氏との会談を行った。筆者もそのときは微力ながら協力させてもらった。
石破氏がアジア版NATOを主張していることは、トランプ氏の側近であれば知っているだろう。それを転じて、米英豪の安全保障の枠組み「AUKUS(オーカス)」に加わりたいというくらいでないと日米同盟を深化させられないのではないだろうか。いずれにしても、世界中の人がトランプ氏との会談を望んでいるので、日本としても出遅れることなく頑張ってほしい。(元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)
産経新聞