小満の翌日だった。
若葉はきらめき、森では木々が、衣みたいに藤の花を羽織っている。
志津川湾を正面に見て左に曲がり、うねる坂道を進んで歌津へと向かう。
伊里前川には、ぎざぎざに折れ曲がる形に、石が積まれていた。
「ざわ」と呼ばれる、漁の仕掛けだという。
この仕掛けで、シロウオを獲っている。
歌津のシロウオは、ハゼの仲間で、産卵のために遡上するもの。
海でも獲れるが、伊里前川に遡上したのを「ざわ」で捕まえるのが、いわば名物。
「ざわ」では、キアシシギも並んで待っていた。
いただきます。
そして命は廻る。
川で獲るシロウオは、少し飴色ががり、ぬめりもある。
朝に獲ったシロウオが、福幸商店のマルアラさんで売られていた。
何と、昼過ぎでもまだ生きているではないか。
買って仙台まで帰り、台所で思わず叫びながら飛び上がった。
夕餉にする段になっても、まだ数匹生きていたからびっくりだ。
思えば、海へ出て川へ戻るのだから、小さくもなかなか強い。
歌津で教わった通り、塩を振ってざっと洗ってぬめりを取り、韮も入れて卵とじにした。
かき揚げや、熱いご飯に乗せたシロウオ丼もこしらえた。
淡白だが、だしが出て美味しい。
伊里前川でのシロウオ漁は、4月5月6月と、春から初夏にかけて行われる。
自然の廻りは、恩恵でもある。
巧く付き合えば、小さくも、生きる強さを見せるシロウオも来て、元気をくれる。
シロウオの 力賜る 伊里前