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NY原油、60ドル割れ=終値で、2カ月弱ぶり(時事通信) - goo ニュース
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石油危機のレバレッジ, 2007/12/2
By tishbite - レビューをすべて見る
石油価格の高騰の原因は、<レバッレジ>の一言につきる。
アメリカのローカルな価格指標「WTI」に投機資金が入ると
そこに年金資金が注ぎ込まれるようになり
かつての100倍ものマネーが動くようになった。
今度はその指標を元に世界中の原油価格が上るようになった。
そしてそれは天然ガスなどの価格上昇をも招いた。
即ち、最初の投機資金に
数万、数十万倍のレバレッジがかかり
そこにピークオイルや資源ナショナリズム、
中国パニックや戦争までが
次々と乗っかり
世界中の資源価格が跳ね上げられているという構図だ。
皆が賭けている所に賭ける
そして長い長いバンドワゴンの行列を作る
そこに合理的に解釈できる価格など無い
…しかしそれは投機としてはきっと正しい。
98年にLTCMが破綻した時、
使っていたレバレッジは50倍だったという。
今のリスクは
その時と比べてどれくらいになっているだろう。。。
この本にはそんな石油価格高騰のメカニズムや
それによって起きている「21世紀型石油危機」の
その先にある、より大きな危機
…デタラメな価格の影響による産業としての衰退
そしてそれらとは一線を画した
よりリアルなエネルギーのあり方までが
幅広く書かれており
たいへん参考になるものだった。
石油 もう一つの危機石井 彰日経BP社このアイテムの詳細を見る |
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石油危機のレバレッジ, 2007/12/2
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石油価格の高騰の原因は、<レバッレジ>の一言につきる。
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今度はその指標を元に世界中の原油価格が上るようになった。
そしてそれは天然ガスなどの価格上昇をも招いた。
即ち、最初の投機資金に
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中国パニックや戦争までが
次々と乗っかり
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…しかしそれは投機としてはきっと正しい。
98年にLTCMが破綻した時、
使っていたレバレッジは50倍だったという。
今のリスクは
その時と比べてどれくらいになっているだろう。。。
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…デタラメな価格の影響による産業としての衰退
そしてそれらとは一線を画した
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脳死作成法としての無呼吸テスト
このページの概要
無呼吸テスト中に血液pHは7.2以下に低下し、呼吸中枢を刺激するどころか逆に抑制し脳死作成法となっている事例もある。平均値でみても組織への酸素供給が低下、酸素消費量も低下している。心臓に負荷もかかり、これ以上に炭酸ガス刺激を強化することもできないこと、侵襲性が高いことを示している。適正な刺激強度が不明で、単一の炭酸ガス刺激方法さえ満足できないこと(炭酸ガス刺激だけの無呼吸テスト参照)と併せて、無呼吸テスト検査を敢えて実行する意義を疑わせる。
無呼吸テスト終了時の二酸化炭素分圧:PaCO2目標値は、日本では60mmHg以上だが、外国は異なる。現行の無呼吸テストは数分間~10分間、人工呼吸を止めることになるが、過去には3分間とほとんどの患者には刺激にならない無呼吸テストが行なわれていた。目視で明らかな呼吸運動とは認められない場合でも、測定機器を使えば換気量が計測される。無呼吸テストを必須検査とせずに脳死と判定していた時期もある。これらの不十分な無呼吸テストを現行基準からみると、1970年代以前のほとんどの脳死判定は否定されることになり、厳粛であるべき人の死の判定が、脳死説を採用するときわめて不安定になる。
無呼吸テストは瀕死患者に対する傷害致死行為
*杉本 侃(大阪府医師会副会長・阪大特殊救急部教授):特別講演 脳死および臓器移植について、大阪府医師会報、234号、14-27、1988
自発呼吸があるかないかを知るのは、実際は簡単ではありません。なぜかというと、レスピレータがついてますから、レスピレータを切らなくてはなりません。じゃ何分切ったらいいかという話になってくるわけですね。長く切るほど判定は確実ですが、連呼吸状態があまり続くと心停止になります。そこで、これはいろんな基準がありまして、例えば、純酸素と炭酸ガスを5分か10分位吸わせておいて、レスピレータを10分切るとか純酸素を流し放しにしてレスピレータを切ってしまうというような方法などがあります。それぞれ一長一短ですが、要は、血液の中の酸素を余り減らさないようにしておいて炭酸ガスを上げていきます。炭酸ガスというのは、呼吸中枢の最高の刺激剤ですから、炭酸ガスを上けていくというのが基本的な形になります。現在では、酸素は十分に与えておいて炭酸ガスをふやすという形で、約10分間の呼吸停止を見るというのが原則的な形になっております。
これは、一見非常に合理的に脳死の判定に使えそうに思えますが、実際は、患者にとっては望ましいことではありません。なぜかというと、理屈のうえでは、これは今まさに脳が死のうかどうしようかということを判定しようとするわけですから、それだけ炭酸ガスが上がれば脳にいい影響があるわけでは決してないわけですね。だから、これは本当は、セレモニーに過ぎないわけです。もしも脳が少しでも生きていたら、そのテストによって脳は完全に死んでしまう、とどめを刺すことになると思います。だから、このテストは、脳が死んでいるか生きているかというテストというよりも、最終的な確認のセレモニーと考えるべきです。要するに、脳死であるかどうかという診断は、診断自体を問題にするのではなくて、大事なことは治療することなのです。つまり、脳死か脳死でないか疑わしければ、テストすべきではなく、治療を続けなければいけないわけです。
前ページの「重症呼吸不全患者に無呼吸テストはしない」で問題は解決したか以下に掲載の事実は、現行の無呼吸テストの採用している炭酸ガス刺激が弱い可能性を示している。「それならばより長時間、無呼吸テストを行ない、PaCO2目標値を上げればいいではないか」と考えるかもしれないが、現状の無呼吸テストでも侵襲性が高い傷害致死行為になっている。実際のデータは下記。
出典は、表の左側は大野 正博:脳死判定における無呼吸テストの心血管系、酸素需給バランスに及ぼす影響、大阪医科大学雑誌、52(1)、10-16、1993。右側は藤井 之正:脳死判定における無呼吸テスト時の体温と動脈血炭酸ガス分圧との関係、ICUとCCU、12(11)、1011-1016、1988。
22例に対する計31回の無呼吸テスト
(大阪府三島救命救急センター)
22例に対する計53回の無呼吸テスト
(山口大学救急・集中治療部)
before after
有意差あり
☆p<0.01
開始前 終了時 有意差あり
中略
心拍数 91.5±2.6 94.5±3.0
平均動脈圧 99.4±4.0 97.0±6.0
平均肺動脈圧 17.8±1.2 29.1±2.1 ☆
右房圧 5.4±0.8 5.8±0.9
肺動脈楔入圧 6.9±0.9 8.8±1.2
心係数 2.4±0.2 3.0±0.2 ☆
一回拍出量係数 27.8±1.9 33.6±2.5 ☆
体血管抵抗係数 3569±318 2818±316 ☆
肺血管抵抗係数 398±55 613±76 ☆
左室仕事係数 35.7±3.0 39.7±3.3
右室仕事係数 4.8±0.5 11.0±1.2 ☆
酸素運搬係数 395±29 492±37 ☆
酸素消費係数 80±5 80±6
酸素摂取率 20.5±1.6 17.1±1.5 ☆
ノルエピネフリン 1.6±0.6 2.1±0.6 ☆
エピネフリン 2.5±1.0 2.6±1.1
乳酸 23.5±2.9 18.8±2.5 ☆
収縮期血圧 86±34 86±35
拡張期血圧 46±19 44±19
脈拍数 103±32 101±30
計算式(前出の大野氏ら)
心係数 =心拍出量/体表面積
肺血管抵抗係数=[平均肺動脈圧-肺動脈楔入圧]×79.92/心係数
右室仕事係数 =一回拍出量×[平均肺動脈圧-中心肺靜脈圧]×0.0136
酸素運搬係数 =動脈血酸素含量×心係数×10
酸素消費係数 =動脈血酸素含量較差×心係数×10
酸素摂取率 =[動脈血酸素含量-混合靜脈血酸素含量]/動脈血酸素含量
無呼吸テストは脳死作成法
竹内 一夫:厚生省“脳死に関する研究班”による脳死判定基準(いわゆる竹内基準)覚書 神経所見と無呼吸テスト、日本医師会雑誌、118(6)、855-865、1997は、p858において「PaCO2が95mmHgを超えると炭酸ガスの中枢抑制作用が現れる。呼吸不全患者の炭酸ガス昏睡は90~120mmHgでみられる」という。唐澤 秀冶:呼吸中枢の刺激方法、脳死判定ハンドブック、214、羊土社、2001は「PaCO2が70mmHg以上になると、呼吸刺激ではなく呼吸抑制が生じてしまう。さらに80~90mmHgになると意識が消失し、これをCO2ナルコーシス」という。上記の大阪府三島救命救急センターにおける無呼吸テストは、この水準に達しておりテストというより脳死作成法となった可能性が高い。
無呼吸テストは心臓に負担
大野氏らは無呼吸テストの循環動態に及ぼす影響、麻酔、38(9S)、S236、1989において、大阪府三島救命救急センターにおける12例に対する計17回の「無呼吸テストにより、肺血管抵抗係数及び心係数の上昇により著しい右心負荷が加わることが判明し、心血管系に予備能の少ない患者の無呼吸テストには十分な注意が必要である」とした。右心負荷について大野氏は4年後の、脳死判定における無呼吸テストの心血管系、酸素需給バランスに及ぼす影響、大阪医科大学雑誌、52(1)、10-16、1993においても、平均肺動脈圧・肺血管抵抗係数・右室仕事係数の上昇から同じ注意を喚起している。
池田 壽昭:脳死判定時に於ける呼吸・循環系の変化、日本救急医学会雑誌、3(5)、357、1992は、脳死患者23名の判定前後の比較から「心機能の面からは収縮力の低下が伺えた」と報告した。
無呼吸テストで酸素消費も低下
林 成之:脳死診断の現場と無呼吸テスト、脳蘇生治療と脳死判定の再検討、近代出版、2001はp87で「PaCO2の上昇と共に、動脈血のpHは進行性に低下する。pH<7.2になると赤血球のヘモグロビンと酸素の結合を切り離す補因子(エフェクター)であるジホスホグリセリン酸(2,3-diphosphoglycerate:DPG)が産生されなくなり、酸素吸入の効果が低下して脳の神経細胞に例えPaO2が高い値を示しても、実際の神経細胞には充分酸素が行かなくなる危険性が生じる」。p95でも「長時間無呼吸テストが続行されると、例えPaO2が正常値にあっても、脳や心臓などの主要臓器レベルでは酸素供給が欠乏するという事態が発生する可能性がある」という。
無呼吸テスト(炭酸ガス刺激)の裏付け理論として「PaCO220mmHgの変化で脳脊髄液pHは0.2変化する。脳脊髄液pHが正常(7.32~7.36)から7.18以下に変化すると、呼吸中枢化学受容野に対して強力な刺激となる。だからPaCO2を正常値から約20mmHg上昇させて刺激する」とされる。無呼吸テスト中も100%酸素を与えているものの、本当は生体に酸素不足を引き起こさないと炭酸ガス刺激の効果がわからないのが現実だ。実際の無呼吸テスト終了時には、上記の表のとおり7.13~7.11まで低下し影響の大きさが伺える。
実際に酸素消費量が低下している。前出の池田 壽昭:脳死判定時に於ける呼吸・循環系の変化は、組織酸素摂取率は脳死判定前21.6%±7.7%に比べ判定後16.6±6.5%と低下を報告した。
大野 正博:無呼吸テストの酸素運搬能および酸素消費量に及ぼす影響、ICUとCCU、13(臨増秋)、93、1989も大阪府三島救命救急センターにおける12例に対する計17回の無呼吸テストでは「心係数が34%増加したため、酸素運搬能係数は29%有意に上昇した。・・・(略)・・・無呼吸テストによる血液pHの低下は・・・(略)・・・酸素運搬能係数の上昇により末梢組織への酸素供給は増加すると考えられるが、酸素消費係数は27%低下しており、末梢組織での酸素利用障害が示唆された。・・・(略)・・・無呼吸テストでは呼吸性アシドーシス(酸血症)をきたし、・・・(略)・・・解糖系が抑制され、酸素消費が低下したものと考えられる」と報告。pH<7.2以下で酸素供給が欠乏する、という林氏らの説明を裏付けた。
ところが同じ大阪府三島救命救急センターにおいて22例に対する計31回の無呼吸テストを報告した(上記表左側の)脳死判定における無呼吸テストの心血管系、酸素需給バランスに及ぼす影響、p14では「酸素消費係数に著変はなかったが、酸素運搬係数は心係数の増加を反映して平均24.4%の上昇を示し、その結果、酸素摂取率は20.5から17.1%に低下した。このことは、酸素需給バランスが良好に保たれるだけでなく、かえってよくなることを示している。・・・(略)・・・血中乳酸値も平均20.0%低下したことから、無呼吸テスト中に固定酸の蓄積をきたしたとは考えにくい」と酸素需給バランスに関する評価を逆転させた。pHの低下が低下していることは明らかで、生体組織に供給され、消費された酸素量は減少しているのではないだろうか。
大野氏らは4年間の間に「心拍数が増えて酸素消費量が減ったから、酸素は余っている」という理解に後退したのであろうか。1993年の大野論文p13記載の無呼吸テスト前後の変化を示すグラフをみると、酸素運搬係数、酸素消費係数ではテストの平均的傾向とは異なり、傾きの方向が逆(テスト前後で増減が逆転)の3~6テスト分が含まれる。酸素摂取率では20テストのうち17テストは減少しているが、1テストは横ばい、1テストは微増、1テストは3~4%と大きな増加を示す。乳酸のグラフに到っては12テストのうち2テストが40%近く低下し、平均値を大きく下げているとみられる。
大野氏らの測定が正しければ「脳死患者といえども、病態には大きな差がある」ことを明らかにしたと思われるが、多数の症例(テスト)の平均値で判断して「無呼吸テスト中に酸素需給バランスは、かえってよくなる」と書くのは、誤解を生じるだろう。
現行の無呼吸テストでも、瀕死の患者の心臓に負荷を与え、酸素摂取を減少させている。脳死判定時に自発呼吸がある患者に遭遇すると、判定医は「無呼吸テストをしたために、最後の助かる可能性を断ち切ったのでは」と恐怖感を持つ。患者に対して傷害致死行為をするようでは、もはや医療ではない。適正な刺激強度が不明で、単一の炭酸ガス刺激方法さえ満足できないことと併せて、無呼吸テスト検査を実行する意義が疑われる。
1970年代以前の脳死者は、本当に脳死だったのかわからない
竹内 一夫:厚生省“脳死に関する研究班”による脳死判定基準(いわゆる竹内基準)覚書 神経所見と無呼吸テスト、日本医師会雑誌、118(6)、855-865、1997は、「1、無呼吸テストの変遷」として下記を記述している。
自発呼吸の不可逆的消失を確かめない脳死判定基準はない。1977年のCollaborative studyでは、15分間の人工呼吸中に人工呼吸器に逆らって自発呼吸が出現しないというだけで無呼吸としている。厚生省研究班の調査では、1985年当時、血液ガス分析(動脈血中の酸素分圧:PaO2と炭酸ガスの分圧:PaCO2)をしている施設は30%以下であった。
そのころの米国で行われた調査結果は次のようである。神経内科医129人に対するアンケート調査で、回答者の12%は無呼吸テストを行っていない。行っている者についてみると、人工呼吸器を―定時間外すとする者が圧倒的に多いが、なかには患者が人工呼吸器をトリガ ー しないというだけで無呼吸としている。いずれの方法も含めてPaCO2の測定を行うという回答は23%にとどまっている。これが約10年前の実情である。
かつてみられた竹内基準に対する批判的報道の一部には、無呼吸テストをしないで脳死としている学会報告が取り上げられていた。これらは後に、脳死臨調内にも設けられた専門委員会によって調査され、竹内基準による脳死判定ではないことが明らかにされて決着をみた。
世界的に脳死判定基準が作成され始めた1970年代には、血液ガス分析ができないときのことも配慮して、無呼吸テストとして「人工呼吸器を―定時間外して呼吸運動の出現をみる」という表現が多かった。しかし、年代を経て血液ガス分析が普及し、その重要性が―層認識されるようになって、いわゆる rigorous test (血液ガス分析を行いPaCO2を目標値まで上げる)が推奨された。初出の竹内基準では、つとに血液ガス分析を必須とし、補遺では人工呼吸器を外す時間よりもPaCO2の値が重要であることを強調しておいた。
要するに竹内氏が書いていることは、過去には「人工呼吸器に逆らって自発呼吸が出現しないだけで無呼吸としている。あるいは、無呼吸テストを行なわずに無呼吸として脳死判定した施設、医師も相当数いた。どれくらいの炭酸ガス刺激を加えるべきか、目安となる血液ガス分析・PaCO2の測定ができる施設も少数派という時代があった」ということだ。
竹内氏らは「かつてみられた竹内基準に対する批判的報道の一部には、無呼吸テストをしないで脳死としている学会報告が取り上げられていた。・・・・・・」と言うが、植木幸明:脳の急性一次粗大病変における「脳死」の判定基準、日本医事新報、2636号、31-34、1974(日本脳波学会の脳死判定基準を示す論文)は「自発呼吸停止の確認については『まず10分間PaO2を正常域に保ち、PaCO2も正常範囲(35~45mmHg)にあるようにして人工呼吸器を3分間とめ、自発呼吸の再現しないことを確かめる』ことがもっとも厳格な方法である。但し常にこれを行なう必要はない。この際、気管粘膜を刺激して咳反射のないことを確かめることは重要である」としている。
「但し常にこれを行なう必要はない」という表現は、テスト前の条件を整えることを指すと思われるが、臨床的・神経学的・経験的判断に加えて無呼吸テストの侵襲性から、無呼吸テストを省いた脳死判定までも容認する響きがある(竹内氏は日本脳波学会「脳波と脳死に関する委員会メンバーだった)。竹内氏のように、判定医の責任のみを強調しすぎてはいけない。
現代でも無茶苦茶な無呼吸テストが行なわれている。奥地 一夫:脳死疑診例の脳波および臨床病態の検討、日本救急医学会雑誌、13(6)、320-327、2002は「1999年9月から2001年4月までの20か月の間に当施設で脳死判定基準の必須項目(深昏睡、瞳孔固定散大、前庭反射を除く6つの脳幹反射の消失、自発呼吸停止)を満足した後に脳波の測定を行った症例は28例である。自発呼吸消失はPaCO2が40㎜Hg以上の呼吸器設定とし、その後40~60秒程度呼吸器をはずして自発呼吸が出現しないことを確認し行った」。
以下の表では主な判定基準における無呼吸テストの変遷を、
坂部 武史:脳死について ICUの立場から、ICUとCCU、9(5)、575-582、1985
藤井 之正:脳死における無呼吸テスト中の酸素投与法、ICUとCCU、12(2)、127-134、1988
厚生省脳死に関する研究班:脳死の判定指針および判定基準、日本医師会雑誌、94(11)、1949-1972、1985
竹内 一夫:厚生省「脳死に関する研究班」による脳死判定基準の補遺、日本医師会雑誌、105(4)、525-546、1991
より。血液ガス分析機器の発達史はL.マーチン:序 基礎的な検査、わかる血液ガス、5-6、秀潤社、2000よりまとめた。
1950年 PaO2、PaCO2、pHを迅速確実に測定する電極が開発される。
1953年 Leland Clark が白金酸素電極を発明(現在の血液ガス電極に発展する原型)。
1960年代中頃 自動化されていない装置でPaO2、PaCO2、pHの測定ができる大学のセンターが複数に
1968年 Harvard判定基準(米国)
テスト前の条件:10分間以上空気換気、PaCO2正常。
テスト時間 :3分間
1973年 商品化された自動血液ガス測定器が初めて紹介される( Radiometer 社のABL1)
1974年 日本脳波学会基準(日本)
テスト前の条件:10分間PaO2正常、PaCO2 35~45mmHg
テスト時間 :3分間
1976年 Royal Colleges 基準(英国)
テスト前の条件 :10分間100%O2換気、ついで5%CO2混合し5分間換気、
PaCO2 40~45mmHg
テスト中の酸素投与:6L/分100%O2
テスト時間 :10分間
1977年 NINDS 基準(米国)
テスト前の条件:---
テスト時間 :15分間
1981年 大統領委員会基準(米国)
テスト前の条件 :10分間100%O2換気またはO2とCO2混合気で換気
テスト中の酸素投与:O2を受動的に吸入
テスト時間 :10分間 判定時PaCO2は60mmHg未満
1985年 厚生省基準(日本)
テスト前の条件 :10分間100%O2換気
PaCO2 が少なくとも40mmHgであること
テスト中の酸素投与:6L/分100%O2
テスト時間 :10分間
1986年 Severinghaus 社も測定機器を発売
1991年 厚生省基準(日本)
テスト前の条件 :10分間100%O2換気、体温35度以上が望ましい
PaCO2 が少なくとも40mmHgであること
テスト中の酸素投与:6L/分100%O2
テスト時間 :PaCO2が60mmHg以上であることを
確認できれば10分間以内でよい(PaCO2は70mmHgまで)
過去の無呼吸テストに関する規定を、現代の基準からみると、
無呼吸テスト中の低酸素血症を防ぐために、テスト中に酸素を投与しなければならない。
体温が高いと代謝も多く急速にPaCO2が上昇するため、無呼吸テスト開始時の体温に注意しなければならない。
無呼吸テスト開始時のPaCO2値が低いと、刺激に必要なPaCO2が値まで上昇するのに時間がかかり危険なため、テスト開始時のPaCO2値を正常値に戻してテストを開始する必要がある。
など、無呼吸テスト中の安全性を確保するための考慮が、まったくなかったことがわかる。
過去の無呼吸テストは正確に、(炭酸ガス刺激については)自発呼吸能力の有無を把握できたのだろうか。坂部 武史:脳死について ICUの立場から(前出)は、p578において「日本脳波学会の勧める方法でも十分判定は可能と考えられるが、PaCO2の上昇度合が少なく(通常は2mmHg/分)、3分後のPaCO2が呼吸中枢を刺激するに十分なレベルに達していないことも起こりうる」と指摘していた。
実際に、藤井 之正:脳死における無呼吸テスト中の酸素投与法(前出)は、p132において「過去にわれわれの施設で行なった11例の無呼吸テストの内、3分の無呼吸でPaCO2が60mmHgに達したのは1例のみであった」。竹内 一夫:厚生省“脳死に関する研究班”による脳死判定基準(いわゆる竹内基準)覚書-神経所見と無呼吸テスト-(前出)も、p860において「3分間の無呼吸ではPaCO2は20mmHg以下の上昇、血液pHは0.1の低下である。5~6分でPaCO2は25mmHg以上上昇する」としている。
つまりHarvard判定基準や日本脳波学会基準にもとづいて実施された無呼吸テストのほとんどは、無効だったことになる。前ページで紹介しているが、無呼吸テスト終了の目標とするPaCO2値は、国や研究者により44mmHg~90mmHgときわめて大きな幅がある。目視で明らかな呼吸運動とは認められない場合でも、測定機器を使えば換気量が計測される。無呼吸テストだけを取上げても、1970年代以前のほとんどの脳死判定は否定されることになる(一部の施設は血液ガス測定やテスト中の酸素投与など早期に採用したが)。
その後、現代においてもPaCO2が70mmHg以上になり呼吸抑制を、さらに80~90mmHgになり意識・中枢神経抑制をもたらしている一部の無呼吸テストは、脳死を判定する方法ではなく脳死体作成法となっている。
人は死亡すると、多くの社会的権利を失う。近親者の感情に加えて、権利喪失を宣告する側面からも、人の死の判定は厳粛であるべきだが、脳死説を採用するときわめて不安定になることが明らかになった。
このページの概要
無呼吸テスト中に血液pHは7.2以下に低下し、呼吸中枢を刺激するどころか逆に抑制し脳死作成法となっている事例もある。平均値でみても組織への酸素供給が低下、酸素消費量も低下している。心臓に負荷もかかり、これ以上に炭酸ガス刺激を強化することもできないこと、侵襲性が高いことを示している。適正な刺激強度が不明で、単一の炭酸ガス刺激方法さえ満足できないこと(炭酸ガス刺激だけの無呼吸テスト参照)と併せて、無呼吸テスト検査を敢えて実行する意義を疑わせる。
無呼吸テスト終了時の二酸化炭素分圧:PaCO2目標値は、日本では60mmHg以上だが、外国は異なる。現行の無呼吸テストは数分間~10分間、人工呼吸を止めることになるが、過去には3分間とほとんどの患者には刺激にならない無呼吸テストが行なわれていた。目視で明らかな呼吸運動とは認められない場合でも、測定機器を使えば換気量が計測される。無呼吸テストを必須検査とせずに脳死と判定していた時期もある。これらの不十分な無呼吸テストを現行基準からみると、1970年代以前のほとんどの脳死判定は否定されることになり、厳粛であるべき人の死の判定が、脳死説を採用するときわめて不安定になる。
無呼吸テストは瀕死患者に対する傷害致死行為
*杉本 侃(大阪府医師会副会長・阪大特殊救急部教授):特別講演 脳死および臓器移植について、大阪府医師会報、234号、14-27、1988
自発呼吸があるかないかを知るのは、実際は簡単ではありません。なぜかというと、レスピレータがついてますから、レスピレータを切らなくてはなりません。じゃ何分切ったらいいかという話になってくるわけですね。長く切るほど判定は確実ですが、連呼吸状態があまり続くと心停止になります。そこで、これはいろんな基準がありまして、例えば、純酸素と炭酸ガスを5分か10分位吸わせておいて、レスピレータを10分切るとか純酸素を流し放しにしてレスピレータを切ってしまうというような方法などがあります。それぞれ一長一短ですが、要は、血液の中の酸素を余り減らさないようにしておいて炭酸ガスを上げていきます。炭酸ガスというのは、呼吸中枢の最高の刺激剤ですから、炭酸ガスを上けていくというのが基本的な形になります。現在では、酸素は十分に与えておいて炭酸ガスをふやすという形で、約10分間の呼吸停止を見るというのが原則的な形になっております。
これは、一見非常に合理的に脳死の判定に使えそうに思えますが、実際は、患者にとっては望ましいことではありません。なぜかというと、理屈のうえでは、これは今まさに脳が死のうかどうしようかということを判定しようとするわけですから、それだけ炭酸ガスが上がれば脳にいい影響があるわけでは決してないわけですね。だから、これは本当は、セレモニーに過ぎないわけです。もしも脳が少しでも生きていたら、そのテストによって脳は完全に死んでしまう、とどめを刺すことになると思います。だから、このテストは、脳が死んでいるか生きているかというテストというよりも、最終的な確認のセレモニーと考えるべきです。要するに、脳死であるかどうかという診断は、診断自体を問題にするのではなくて、大事なことは治療することなのです。つまり、脳死か脳死でないか疑わしければ、テストすべきではなく、治療を続けなければいけないわけです。
前ページの「重症呼吸不全患者に無呼吸テストはしない」で問題は解決したか以下に掲載の事実は、現行の無呼吸テストの採用している炭酸ガス刺激が弱い可能性を示している。「それならばより長時間、無呼吸テストを行ない、PaCO2目標値を上げればいいではないか」と考えるかもしれないが、現状の無呼吸テストでも侵襲性が高い傷害致死行為になっている。実際のデータは下記。
出典は、表の左側は大野 正博:脳死判定における無呼吸テストの心血管系、酸素需給バランスに及ぼす影響、大阪医科大学雑誌、52(1)、10-16、1993。右側は藤井 之正:脳死判定における無呼吸テスト時の体温と動脈血炭酸ガス分圧との関係、ICUとCCU、12(11)、1011-1016、1988。
22例に対する計31回の無呼吸テスト
(大阪府三島救命救急センター)
22例に対する計53回の無呼吸テスト
(山口大学救急・集中治療部)
before after
有意差あり
☆p<0.01
開始前 終了時 有意差あり
中略
心拍数 91.5±2.6 94.5±3.0
平均動脈圧 99.4±4.0 97.0±6.0
平均肺動脈圧 17.8±1.2 29.1±2.1 ☆
右房圧 5.4±0.8 5.8±0.9
肺動脈楔入圧 6.9±0.9 8.8±1.2
心係数 2.4±0.2 3.0±0.2 ☆
一回拍出量係数 27.8±1.9 33.6±2.5 ☆
体血管抵抗係数 3569±318 2818±316 ☆
肺血管抵抗係数 398±55 613±76 ☆
左室仕事係数 35.7±3.0 39.7±3.3
右室仕事係数 4.8±0.5 11.0±1.2 ☆
酸素運搬係数 395±29 492±37 ☆
酸素消費係数 80±5 80±6
酸素摂取率 20.5±1.6 17.1±1.5 ☆
ノルエピネフリン 1.6±0.6 2.1±0.6 ☆
エピネフリン 2.5±1.0 2.6±1.1
乳酸 23.5±2.9 18.8±2.5 ☆
収縮期血圧 86±34 86±35
拡張期血圧 46±19 44±19
脈拍数 103±32 101±30
計算式(前出の大野氏ら)
心係数 =心拍出量/体表面積
肺血管抵抗係数=[平均肺動脈圧-肺動脈楔入圧]×79.92/心係数
右室仕事係数 =一回拍出量×[平均肺動脈圧-中心肺靜脈圧]×0.0136
酸素運搬係数 =動脈血酸素含量×心係数×10
酸素消費係数 =動脈血酸素含量較差×心係数×10
酸素摂取率 =[動脈血酸素含量-混合靜脈血酸素含量]/動脈血酸素含量
無呼吸テストは脳死作成法
竹内 一夫:厚生省“脳死に関する研究班”による脳死判定基準(いわゆる竹内基準)覚書 神経所見と無呼吸テスト、日本医師会雑誌、118(6)、855-865、1997は、p858において「PaCO2が95mmHgを超えると炭酸ガスの中枢抑制作用が現れる。呼吸不全患者の炭酸ガス昏睡は90~120mmHgでみられる」という。唐澤 秀冶:呼吸中枢の刺激方法、脳死判定ハンドブック、214、羊土社、2001は「PaCO2が70mmHg以上になると、呼吸刺激ではなく呼吸抑制が生じてしまう。さらに80~90mmHgになると意識が消失し、これをCO2ナルコーシス」という。上記の大阪府三島救命救急センターにおける無呼吸テストは、この水準に達しておりテストというより脳死作成法となった可能性が高い。
無呼吸テストは心臓に負担
大野氏らは無呼吸テストの循環動態に及ぼす影響、麻酔、38(9S)、S236、1989において、大阪府三島救命救急センターにおける12例に対する計17回の「無呼吸テストにより、肺血管抵抗係数及び心係数の上昇により著しい右心負荷が加わることが判明し、心血管系に予備能の少ない患者の無呼吸テストには十分な注意が必要である」とした。右心負荷について大野氏は4年後の、脳死判定における無呼吸テストの心血管系、酸素需給バランスに及ぼす影響、大阪医科大学雑誌、52(1)、10-16、1993においても、平均肺動脈圧・肺血管抵抗係数・右室仕事係数の上昇から同じ注意を喚起している。
池田 壽昭:脳死判定時に於ける呼吸・循環系の変化、日本救急医学会雑誌、3(5)、357、1992は、脳死患者23名の判定前後の比較から「心機能の面からは収縮力の低下が伺えた」と報告した。
無呼吸テストで酸素消費も低下
林 成之:脳死診断の現場と無呼吸テスト、脳蘇生治療と脳死判定の再検討、近代出版、2001はp87で「PaCO2の上昇と共に、動脈血のpHは進行性に低下する。pH<7.2になると赤血球のヘモグロビンと酸素の結合を切り離す補因子(エフェクター)であるジホスホグリセリン酸(2,3-diphosphoglycerate:DPG)が産生されなくなり、酸素吸入の効果が低下して脳の神経細胞に例えPaO2が高い値を示しても、実際の神経細胞には充分酸素が行かなくなる危険性が生じる」。p95でも「長時間無呼吸テストが続行されると、例えPaO2が正常値にあっても、脳や心臓などの主要臓器レベルでは酸素供給が欠乏するという事態が発生する可能性がある」という。
無呼吸テスト(炭酸ガス刺激)の裏付け理論として「PaCO220mmHgの変化で脳脊髄液pHは0.2変化する。脳脊髄液pHが正常(7.32~7.36)から7.18以下に変化すると、呼吸中枢化学受容野に対して強力な刺激となる。だからPaCO2を正常値から約20mmHg上昇させて刺激する」とされる。無呼吸テスト中も100%酸素を与えているものの、本当は生体に酸素不足を引き起こさないと炭酸ガス刺激の効果がわからないのが現実だ。実際の無呼吸テスト終了時には、上記の表のとおり7.13~7.11まで低下し影響の大きさが伺える。
実際に酸素消費量が低下している。前出の池田 壽昭:脳死判定時に於ける呼吸・循環系の変化は、組織酸素摂取率は脳死判定前21.6%±7.7%に比べ判定後16.6±6.5%と低下を報告した。
大野 正博:無呼吸テストの酸素運搬能および酸素消費量に及ぼす影響、ICUとCCU、13(臨増秋)、93、1989も大阪府三島救命救急センターにおける12例に対する計17回の無呼吸テストでは「心係数が34%増加したため、酸素運搬能係数は29%有意に上昇した。・・・(略)・・・無呼吸テストによる血液pHの低下は・・・(略)・・・酸素運搬能係数の上昇により末梢組織への酸素供給は増加すると考えられるが、酸素消費係数は27%低下しており、末梢組織での酸素利用障害が示唆された。・・・(略)・・・無呼吸テストでは呼吸性アシドーシス(酸血症)をきたし、・・・(略)・・・解糖系が抑制され、酸素消費が低下したものと考えられる」と報告。pH<7.2以下で酸素供給が欠乏する、という林氏らの説明を裏付けた。
ところが同じ大阪府三島救命救急センターにおいて22例に対する計31回の無呼吸テストを報告した(上記表左側の)脳死判定における無呼吸テストの心血管系、酸素需給バランスに及ぼす影響、p14では「酸素消費係数に著変はなかったが、酸素運搬係数は心係数の増加を反映して平均24.4%の上昇を示し、その結果、酸素摂取率は20.5から17.1%に低下した。このことは、酸素需給バランスが良好に保たれるだけでなく、かえってよくなることを示している。・・・(略)・・・血中乳酸値も平均20.0%低下したことから、無呼吸テスト中に固定酸の蓄積をきたしたとは考えにくい」と酸素需給バランスに関する評価を逆転させた。pHの低下が低下していることは明らかで、生体組織に供給され、消費された酸素量は減少しているのではないだろうか。
大野氏らは4年間の間に「心拍数が増えて酸素消費量が減ったから、酸素は余っている」という理解に後退したのであろうか。1993年の大野論文p13記載の無呼吸テスト前後の変化を示すグラフをみると、酸素運搬係数、酸素消費係数ではテストの平均的傾向とは異なり、傾きの方向が逆(テスト前後で増減が逆転)の3~6テスト分が含まれる。酸素摂取率では20テストのうち17テストは減少しているが、1テストは横ばい、1テストは微増、1テストは3~4%と大きな増加を示す。乳酸のグラフに到っては12テストのうち2テストが40%近く低下し、平均値を大きく下げているとみられる。
大野氏らの測定が正しければ「脳死患者といえども、病態には大きな差がある」ことを明らかにしたと思われるが、多数の症例(テスト)の平均値で判断して「無呼吸テスト中に酸素需給バランスは、かえってよくなる」と書くのは、誤解を生じるだろう。
現行の無呼吸テストでも、瀕死の患者の心臓に負荷を与え、酸素摂取を減少させている。脳死判定時に自発呼吸がある患者に遭遇すると、判定医は「無呼吸テストをしたために、最後の助かる可能性を断ち切ったのでは」と恐怖感を持つ。患者に対して傷害致死行為をするようでは、もはや医療ではない。適正な刺激強度が不明で、単一の炭酸ガス刺激方法さえ満足できないことと併せて、無呼吸テスト検査を実行する意義が疑われる。
1970年代以前の脳死者は、本当に脳死だったのかわからない
竹内 一夫:厚生省“脳死に関する研究班”による脳死判定基準(いわゆる竹内基準)覚書 神経所見と無呼吸テスト、日本医師会雑誌、118(6)、855-865、1997は、「1、無呼吸テストの変遷」として下記を記述している。
自発呼吸の不可逆的消失を確かめない脳死判定基準はない。1977年のCollaborative studyでは、15分間の人工呼吸中に人工呼吸器に逆らって自発呼吸が出現しないというだけで無呼吸としている。厚生省研究班の調査では、1985年当時、血液ガス分析(動脈血中の酸素分圧:PaO2と炭酸ガスの分圧:PaCO2)をしている施設は30%以下であった。
そのころの米国で行われた調査結果は次のようである。神経内科医129人に対するアンケート調査で、回答者の12%は無呼吸テストを行っていない。行っている者についてみると、人工呼吸器を―定時間外すとする者が圧倒的に多いが、なかには患者が人工呼吸器をトリガ ー しないというだけで無呼吸としている。いずれの方法も含めてPaCO2の測定を行うという回答は23%にとどまっている。これが約10年前の実情である。
かつてみられた竹内基準に対する批判的報道の一部には、無呼吸テストをしないで脳死としている学会報告が取り上げられていた。これらは後に、脳死臨調内にも設けられた専門委員会によって調査され、竹内基準による脳死判定ではないことが明らかにされて決着をみた。
世界的に脳死判定基準が作成され始めた1970年代には、血液ガス分析ができないときのことも配慮して、無呼吸テストとして「人工呼吸器を―定時間外して呼吸運動の出現をみる」という表現が多かった。しかし、年代を経て血液ガス分析が普及し、その重要性が―層認識されるようになって、いわゆる rigorous test (血液ガス分析を行いPaCO2を目標値まで上げる)が推奨された。初出の竹内基準では、つとに血液ガス分析を必須とし、補遺では人工呼吸器を外す時間よりもPaCO2の値が重要であることを強調しておいた。
要するに竹内氏が書いていることは、過去には「人工呼吸器に逆らって自発呼吸が出現しないだけで無呼吸としている。あるいは、無呼吸テストを行なわずに無呼吸として脳死判定した施設、医師も相当数いた。どれくらいの炭酸ガス刺激を加えるべきか、目安となる血液ガス分析・PaCO2の測定ができる施設も少数派という時代があった」ということだ。
竹内氏らは「かつてみられた竹内基準に対する批判的報道の一部には、無呼吸テストをしないで脳死としている学会報告が取り上げられていた。・・・・・・」と言うが、植木幸明:脳の急性一次粗大病変における「脳死」の判定基準、日本医事新報、2636号、31-34、1974(日本脳波学会の脳死判定基準を示す論文)は「自発呼吸停止の確認については『まず10分間PaO2を正常域に保ち、PaCO2も正常範囲(35~45mmHg)にあるようにして人工呼吸器を3分間とめ、自発呼吸の再現しないことを確かめる』ことがもっとも厳格な方法である。但し常にこれを行なう必要はない。この際、気管粘膜を刺激して咳反射のないことを確かめることは重要である」としている。
「但し常にこれを行なう必要はない」という表現は、テスト前の条件を整えることを指すと思われるが、臨床的・神経学的・経験的判断に加えて無呼吸テストの侵襲性から、無呼吸テストを省いた脳死判定までも容認する響きがある(竹内氏は日本脳波学会「脳波と脳死に関する委員会メンバーだった)。竹内氏のように、判定医の責任のみを強調しすぎてはいけない。
現代でも無茶苦茶な無呼吸テストが行なわれている。奥地 一夫:脳死疑診例の脳波および臨床病態の検討、日本救急医学会雑誌、13(6)、320-327、2002は「1999年9月から2001年4月までの20か月の間に当施設で脳死判定基準の必須項目(深昏睡、瞳孔固定散大、前庭反射を除く6つの脳幹反射の消失、自発呼吸停止)を満足した後に脳波の測定を行った症例は28例である。自発呼吸消失はPaCO2が40㎜Hg以上の呼吸器設定とし、その後40~60秒程度呼吸器をはずして自発呼吸が出現しないことを確認し行った」。
以下の表では主な判定基準における無呼吸テストの変遷を、
坂部 武史:脳死について ICUの立場から、ICUとCCU、9(5)、575-582、1985
藤井 之正:脳死における無呼吸テスト中の酸素投与法、ICUとCCU、12(2)、127-134、1988
厚生省脳死に関する研究班:脳死の判定指針および判定基準、日本医師会雑誌、94(11)、1949-1972、1985
竹内 一夫:厚生省「脳死に関する研究班」による脳死判定基準の補遺、日本医師会雑誌、105(4)、525-546、1991
より。血液ガス分析機器の発達史はL.マーチン:序 基礎的な検査、わかる血液ガス、5-6、秀潤社、2000よりまとめた。
1950年 PaO2、PaCO2、pHを迅速確実に測定する電極が開発される。
1953年 Leland Clark が白金酸素電極を発明(現在の血液ガス電極に発展する原型)。
1960年代中頃 自動化されていない装置でPaO2、PaCO2、pHの測定ができる大学のセンターが複数に
1968年 Harvard判定基準(米国)
テスト前の条件:10分間以上空気換気、PaCO2正常。
テスト時間 :3分間
1973年 商品化された自動血液ガス測定器が初めて紹介される( Radiometer 社のABL1)
1974年 日本脳波学会基準(日本)
テスト前の条件:10分間PaO2正常、PaCO2 35~45mmHg
テスト時間 :3分間
1976年 Royal Colleges 基準(英国)
テスト前の条件 :10分間100%O2換気、ついで5%CO2混合し5分間換気、
PaCO2 40~45mmHg
テスト中の酸素投与:6L/分100%O2
テスト時間 :10分間
1977年 NINDS 基準(米国)
テスト前の条件:---
テスト時間 :15分間
1981年 大統領委員会基準(米国)
テスト前の条件 :10分間100%O2換気またはO2とCO2混合気で換気
テスト中の酸素投与:O2を受動的に吸入
テスト時間 :10分間 判定時PaCO2は60mmHg未満
1985年 厚生省基準(日本)
テスト前の条件 :10分間100%O2換気
PaCO2 が少なくとも40mmHgであること
テスト中の酸素投与:6L/分100%O2
テスト時間 :10分間
1986年 Severinghaus 社も測定機器を発売
1991年 厚生省基準(日本)
テスト前の条件 :10分間100%O2換気、体温35度以上が望ましい
PaCO2 が少なくとも40mmHgであること
テスト中の酸素投与:6L/分100%O2
テスト時間 :PaCO2が60mmHg以上であることを
確認できれば10分間以内でよい(PaCO2は70mmHgまで)
過去の無呼吸テストに関する規定を、現代の基準からみると、
無呼吸テスト中の低酸素血症を防ぐために、テスト中に酸素を投与しなければならない。
体温が高いと代謝も多く急速にPaCO2が上昇するため、無呼吸テスト開始時の体温に注意しなければならない。
無呼吸テスト開始時のPaCO2値が低いと、刺激に必要なPaCO2が値まで上昇するのに時間がかかり危険なため、テスト開始時のPaCO2値を正常値に戻してテストを開始する必要がある。
など、無呼吸テスト中の安全性を確保するための考慮が、まったくなかったことがわかる。
過去の無呼吸テストは正確に、(炭酸ガス刺激については)自発呼吸能力の有無を把握できたのだろうか。坂部 武史:脳死について ICUの立場から(前出)は、p578において「日本脳波学会の勧める方法でも十分判定は可能と考えられるが、PaCO2の上昇度合が少なく(通常は2mmHg/分)、3分後のPaCO2が呼吸中枢を刺激するに十分なレベルに達していないことも起こりうる」と指摘していた。
実際に、藤井 之正:脳死における無呼吸テスト中の酸素投与法(前出)は、p132において「過去にわれわれの施設で行なった11例の無呼吸テストの内、3分の無呼吸でPaCO2が60mmHgに達したのは1例のみであった」。竹内 一夫:厚生省“脳死に関する研究班”による脳死判定基準(いわゆる竹内基準)覚書-神経所見と無呼吸テスト-(前出)も、p860において「3分間の無呼吸ではPaCO2は20mmHg以下の上昇、血液pHは0.1の低下である。5~6分でPaCO2は25mmHg以上上昇する」としている。
つまりHarvard判定基準や日本脳波学会基準にもとづいて実施された無呼吸テストのほとんどは、無効だったことになる。前ページで紹介しているが、無呼吸テスト終了の目標とするPaCO2値は、国や研究者により44mmHg~90mmHgときわめて大きな幅がある。目視で明らかな呼吸運動とは認められない場合でも、測定機器を使えば換気量が計測される。無呼吸テストだけを取上げても、1970年代以前のほとんどの脳死判定は否定されることになる(一部の施設は血液ガス測定やテスト中の酸素投与など早期に採用したが)。
その後、現代においてもPaCO2が70mmHg以上になり呼吸抑制を、さらに80~90mmHgになり意識・中枢神経抑制をもたらしている一部の無呼吸テストは、脳死を判定する方法ではなく脳死体作成法となっている。
人は死亡すると、多くの社会的権利を失う。近親者の感情に加えて、権利喪失を宣告する側面からも、人の死の判定は厳粛であるべきだが、脳死説を採用するときわめて不安定になることが明らかになった。
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原著名A Demon of our own Design
大型ジェット旅客機は、誰でもが安価に海外旅行に飛び立てる社会を作った。
このことが新型インフルエンザのパンデミックの防止の妨げになるとしても、もはやジャンボを使わない社会に戻すことはできない。
同じように、インターネットの時代に情報が瞬時でいきわたる完全効率市場の情報を遮断することは、遮断しなければ日米欧と新興国が同時に恐慌に突入する危険があるとしても、不可能であると言わざるをえない。
そうだとすれば、アクセラレータとしてのレバレッジを強く規制すること以外に、この危険を緩和する手段はありえないと著者は実体験に基づいて主張する。
よって、著者の言うA Demon of our own Designとは、不安定な金融マーケットのことではなく、「アセラレータとしてのレバレッジ」そのものではないだろうか。
完全市場のもろさを暴露, 2009/5/5
By しおぴー (ニュージーランド) - レビューをすべて見る
原題は"A Demon of our own Design"「我々が創りし悪魔」で、自分たちがこの「不安定な金融マーケット」を創ってしまったことについての、懺悔の意味が込められているのでは。著者が働いてきた投資銀行、ヘッジファンドという少し前の最先端、サブプライムショック後の今では「衰退していく恐竜」にもたとえられる業界モノ。その変遷と彼らが巻き起こした金融イノベーション、そしてその弊害として頻発するようになった「暴落」リスクについて。マーケットの急激な変動が過度のレバレッジによって発生することは他著者も指摘している通り。著者は根本原因のレバレッジそのものの規制を主張している。
逆に空売り規制などのよくある「市場に対する規制」には一貫して反対の態度。というのも、規制を作れば対応するシステムがさらに複雑になり、思いもかけぬところで暴落リスクが顕在化する、というもの。
量子力学やカオス理論、ネットワーク理論、生物学などを援用し、
「全てのリスクを見通すことはできない」
「密結合したシステムは脆弱」
「過度の最適化は想定外リスクに対して無力」
という主張はおっしゃる通りで、説得力が高い。
マーケットが理想とした「情報が瞬時でいきわたる完全効率市場」は、システムとして非常にもろいということは大きな皮肉。金融システムはグローバル化することにより世界のマーケットを密結合に変えてしまい、NYでの出来事がロンドン、東京、そして新興国マーケットに多大な影響を及ぼすことになった。それを粗結合に戻すことは「情報の流通を遮る」ことになり、大きな困難が伴うだろう。
とすると、彼の主張する
「アクセラレータとしてのレバレッジを強く規制すること」
は非常に的を射ているのでは。
#それだけでは弱いかもしれないが、他に選択肢がない、という意味で。
訳は非常にこなれていてレベルが高い。金融用語もきっちり理解して訳していることがよくわかる。他の翻訳ものも、このくらいのレベルでがんばって欲しいなあと思う。
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金融商品の複雑さが今回の金融危機の制御を難しくしている。, 2008/12/23
By 21世紀のケインジアン (兵庫県) - レビューをすべて見る
世界的バブルのもう一つの原因である「金融工学」。本書はサブプライムショック以前に書かれているが、金融工学と金融市場システムの問題について考えるヒントは多い。金融工学が金融商品を複雑にして、金融市場システムを不安定にしている構図がよくわかる。
今、議論されているように、たとえ金融市場を規制したとしても、複雑性を放置したままでは、かえって問題を悪化させるおそれがあるというから厄介だ。著者は、金融商品をシンプルなものにして、金融市場の複雑性を減らすよう提言する。危機を増幅するレバレッジも減らすべきだと言う。
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リスクをヘッジする手段は、何もやらないこと?, 2008/12/14
By ひょいひょい (千葉県) - レビューをすべて見る
著者は、ウォール街の投資銀行で、リスクヘッジに関する仕事に関わっていた、その実体験を赤裸々に述べている。
エピソードが実名入りで書かれており、ノンフィクションとしても読み応えがある。しかし、金融の知識が無いと、読み込むのは難しいと思う。
個人的には、リスクヘッジを行うことが、更にリスクを生むといった、リスクヘッジの合成誤謬が興味深かった。この考え方は、金融以外でも、プロジェクトを進める際の考え方として、参考になるのではないかと思った。
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必然なんて書いてない, 2008/10/28
By Isis - レビューをすべて見る
ザクッと言えば、現在の金融システムが如何に危ないかとここ数年の投資銀行内部で行われていた事柄の紹介と言った所です。実名がかなり出ています。黒木亮の巨大投資銀行の内容ともだぶっているところがあります。
株式や債権の投資を行っている人や金融関係の人にとっては、とても参考になるし、読み物としてもまずまずです。
中程で冗長な部分があり、総頁も結構あるので、一気に読み切れないのでマイナス一つです。
結論としては流動性維持、リスクヘッジがリスクを大きくする合成の誤謬、あたりなのではないかと解釈したのですが。。。
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巨大な災厄をもたらした金融イノベーション, 2008/10/23
By 白河夜舟 (東京都国立市) - レビューをすべて見る
邦訳題名が的外れだというのではないが、原題の”A Demon of our own Design” は「俺たちが魂を入れた魔神」、つまり人間ファウストが契約を結んだ悪魔を思わせる。これが投資世界にかかわるものであることを知らせるために副題は「マーケット、ヘッジファンド、そして金融イノべーションの災厄」となっている。「魔神」とはこの「災厄」の元凶であり、著者によればその災厄は現状ではほとんど避けがたい。それが今や現実のものになってしまったことはわれわれが身をもって知るところである。
それではこの魔神の正体は何か。それは一言でいえば「市場の複雑性」(高度にレバレッジを組み込んだ多種多様な金融商品の市場)とその市場内部あるいは相互間の「密結合」状態(本来はプロセスの構成要素が緊密に連携している状態を指すエンジニアリング用語)である。これだけではまだ抽象的にすぎるかも知れないが、ここから現実に起きている事態、つまり各種のデリバティブズの流通とそれが招来するシステミック・リスクに思いを及ばせることは可能だろう。著者は「金融商品を単純化し、レバレッジを減らすことが、金融市場の制度設計を修正する処方箋である」という。(それは正しい結論だと思われるが、07年に出版された本書が現下の危機が不可避だったと主張しているわけではない。)
本書は幾つもの投資銀行でリスク・マネジメントの実務に従い、半ばは学者でもある著者の実践と研鑽にもとづいた力作である。ここに紹介した結論に到達する以前に描かれた80年代以降の投資銀行各行の浮き沈みはこの世界に渦巻く欲望の強烈さと幾多の大銀行がそれに立ち向かい、危うく立ち直った、リスクの巨大さを改めて思わせる。賢人賢者と讃えられる投資世界の大御所たちがITバブルでは一敗地にまみれていることも興味をそそる。著者はヘッジファンドとは定義不能と考えているようである。たとえそうでないとしてもその定義には明らかに手を焼いている。そうとすればリスクを対象とする本書を細部まで理解できなくても恥とするには当たらない。
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金融危機の原因に迫る, 2008/10/16
By hbspmd - レビューをすべて見る
本書は87年のブラックマンデー以降、金融市場に起こった様々な事件の背景についてマーケットの真っ只中に居た筆者が生々しく語った一冊である。現下に起こっている金融不安・金融危機に関する直接的な記述はないものの、現在の金融市場における暴落のリスク、市場のメカニズムについて舞台裏を知ることが出来、現状起こっている事象を理解するのに非常に役立つ。
現在我々が直面している問題は流動性やレバレッジの問題であるが、複雑になり過ぎた金融システムが「密結合」している為に危険度が増していると言え、誰の手にも負えない代物になっているという指摘がある。
その一方で、生物学的には極めて単純な能力特性の方が複雑な環境識別・適応能力よりも、種の保存には有効であるという教訓から、貴重な情報を敢えて無視するような粗視的な意思決定をする方が、市場リスクから身を守る為に有効であるという考え方を示していることは興味深い。
ともあれ金融市場の過去20年を振り返り、リスクを極小化する為に編み出された金融工学の発達にも拘らず、市場リスクは逆に増幅しているのではないかと感じる直感を裏付けてくれる著作である。
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金融クラッシュの処方箋?。, 2008/9/29
By Frypan "amano70" - レビューをすべて見る
数々の金融クラッシュの実況中継、みたいなところがあって、野次馬根性で読むにはなかなか楽しい読み物です。
また、著者が述べる、「今の市場にまかせたままではクラッシュは不可避」というのは、納得できる意見です。「市場に任せておけば万事OK」なんていう話が、「まさに空論」であることは、本書の中身から良く見て取れます。
といいながら、一方で著者は、それを防ぐための「各種の規制」には否定的です。で。「それではどうする?」という問いに対する答え。これはなかなか興味深いものですので、ぜひご一読の上考えられてみてはいかがでしょうか?。
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地味な研究書, 2008/9/3
By ヒデ - レビューをすべて見る
訳文は読みやすいかと思いますが、地味で盛り上げに欠け、専門用語や固有名詞が多く出てくる特に前半は、門外漢には読み難いです。後半は、スリーマイル島やビクトリア湖のお魚から、グレイシー柔術の歴史まで、小話が多く差し挟まれ、金融リスクへの最適解とは何かを探ります。ぜんたいとしては、体験を印象的に綴った静かな研究書といった趣でしょうか。
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リスク・暴落・バブルなどを考えるのに良い本。ただし、金融に関する基本的な用語は知っていないと読み通せない。, 2008/8/16
By コンタナトス (東京都) - レビューをすべて見る
学問と実務の両方を理解している著者が、著者自身のすぐ近くで起きた暴落について述べている本。理論そのものと、その理論を用いる人々の両方についての多くの含蓄のある本。投資家や金融関係者のみならず、不確実なリスクに晒されている人が読んでおくべき良書。とはいえ、金融に関する基本的な用語やメカニズムは理解していないと読み通せない。そこが、万人向きではなく、残念である。
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2007年5月12日の英語版へのレヴューを再録させていただきました。, 2008/7/26
By recluse - レビューをすべて見る
どういうタイミングなんでしょうか、black swanに続く、市場関係者による警告の作品です。この作品には2つの焦点があります。ひとつは著者による金融市場の危機の分析です。題材として取り上げられるのは、著者が経験したblack mondayとsalomon brothersでの経験です。著者はこの経験を通して、現在のリスク管理モデルが抱える内在的な欠陥を指摘します。それは市場の流動性へのナイーヴな信仰とプレーヤーの個別には”合理的”な行動がもたらすことになる全体的な非合理性です。それぞれの危機の現場にいた著者によるこれらの状況の同時代的な描写と事後的な分析は類書には見られないものです。というよりも今明らかにされる当時の実情は恐ろしくなるほどです。これらの経験をベースに後半はどちらかというと哲学的なリスク管理の議論が展開されることになります。著者はこの世界でのいくつもの常識とされる前提への疑問を提示していきます。著者は、更なる精緻な管理手法の強化、情報の更なる開示が危機回避にもたらす効果には懐疑的です。著者は流動性こそが市場の鍵であることを強調し、そしてこの流動性の維持ほど市場参加者の微妙なバランスに依存するものは、ほかにはない点を強調します。著者が最後にたどり着いた結論は、”simpler financial instruments and less leverage"です。著者は、この提言が現在の金融市場の傾向と矛盾することは十分認識した上で、ある意味では自己否定とも思える結論にたどり着いているわけです。
10 人中、7人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
読み物としてもおもしろい, 2008/7/1
By 是富金蔵 (セントクロイ島) - レビューをすべて見る
ブラックマンデーのLORのポートフォリオ・インシュアランスからLTCMまで幅広い事例を扱っています。
読み物としてもとても興味深く読めました。
とにかくシンプルにという考えが流石という感じでした。
コキブリとヘッジファンドという章のタイトルはカッコ悪いですが、まさにその通りだと思いました。
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結局、金融工学は無力だったのか?, 2008/6/29
By mikeexpo - レビューをすべて見る
金融工学がもたらしたのは、結局市場の不安定性だったというある意味身も蓋もない結論を読者に納得させるため、ありとあらゆる逸話が披露されている。
もちろんアジア通貨危機やネットバブルなど金融に関する事案も多いのだが、スペースシャトルの爆発事故やスリーマイル島やチェルノブイリの原発事故などにも言及し、何故危機は回避できなかったのかが、冷静に分析されている。
日本金融界は金融工学の遅れをさんざん指摘されてきたが、遅れていたが故に今回のサブプライム危機の損傷は少なかったのだろう。本書を読むとそんな気がしてきた。
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現代金融物語, 2008/6/3
By くろとわ (埼玉県) - レビューをすべて見る
・ブラックマンデー前にプットオプションを買い、見事ヤングリタイヤしたトレーダー
・日本の不況時、日本国債の取引等で20億ドル稼いだソロモン日本支店
・ロシア危機寸前に、ロシア国債とルーブルから脱出したソロモン
・流動性の無い優先株をUBSに買わせ、大損させた日本の金融機関
・インターネットバブル時にバリュー投資を貫き、破綻したタイガー・マネジメント
実にさまざま悲喜劇が本書で展開され、さながら現代金融物語である。
また、投資のヒントが満載であり、読み終わるのが勿体無く感じた。
大型ジェット旅客機は、誰でもが安価に海外旅行に飛び立てる社会を作った。
このことが新型インフルエンザのパンデミックの防止の妨げになるとしても、もはやジャンボを使わない社会に戻すことはできない。
同じように、インターネットの時代に情報が瞬時でいきわたる完全効率市場の情報を遮断することは、遮断しなければ日米欧と新興国が同時に恐慌に突入する危険があるとしても、不可能であると言わざるをえない。
そうだとすれば、アクセラレータとしてのレバレッジを強く規制すること以外に、この危険を緩和する手段はありえないと著者は実体験に基づいて主張する。
よって、著者の言うA Demon of our own Designとは、不安定な金融マーケットのことではなく、「アセラレータとしてのレバレッジ」そのものではないだろうか。
完全市場のもろさを暴露, 2009/5/5
By しおぴー (ニュージーランド) - レビューをすべて見る
原題は"A Demon of our own Design"「我々が創りし悪魔」で、自分たちがこの「不安定な金融マーケット」を創ってしまったことについての、懺悔の意味が込められているのでは。著者が働いてきた投資銀行、ヘッジファンドという少し前の最先端、サブプライムショック後の今では「衰退していく恐竜」にもたとえられる業界モノ。その変遷と彼らが巻き起こした金融イノベーション、そしてその弊害として頻発するようになった「暴落」リスクについて。マーケットの急激な変動が過度のレバレッジによって発生することは他著者も指摘している通り。著者は根本原因のレバレッジそのものの規制を主張している。
逆に空売り規制などのよくある「市場に対する規制」には一貫して反対の態度。というのも、規制を作れば対応するシステムがさらに複雑になり、思いもかけぬところで暴落リスクが顕在化する、というもの。
量子力学やカオス理論、ネットワーク理論、生物学などを援用し、
「全てのリスクを見通すことはできない」
「密結合したシステムは脆弱」
「過度の最適化は想定外リスクに対して無力」
という主張はおっしゃる通りで、説得力が高い。
マーケットが理想とした「情報が瞬時でいきわたる完全効率市場」は、システムとして非常にもろいということは大きな皮肉。金融システムはグローバル化することにより世界のマーケットを密結合に変えてしまい、NYでの出来事がロンドン、東京、そして新興国マーケットに多大な影響を及ぼすことになった。それを粗結合に戻すことは「情報の流通を遮る」ことになり、大きな困難が伴うだろう。
とすると、彼の主張する
「アクセラレータとしてのレバレッジを強く規制すること」
は非常に的を射ているのでは。
#それだけでは弱いかもしれないが、他に選択肢がない、という意味で。
訳は非常にこなれていてレベルが高い。金融用語もきっちり理解して訳していることがよくわかる。他の翻訳ものも、このくらいのレベルでがんばって欲しいなあと思う。
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金融商品の複雑さが今回の金融危機の制御を難しくしている。, 2008/12/23
By 21世紀のケインジアン (兵庫県) - レビューをすべて見る
世界的バブルのもう一つの原因である「金融工学」。本書はサブプライムショック以前に書かれているが、金融工学と金融市場システムの問題について考えるヒントは多い。金融工学が金融商品を複雑にして、金融市場システムを不安定にしている構図がよくわかる。
今、議論されているように、たとえ金融市場を規制したとしても、複雑性を放置したままでは、かえって問題を悪化させるおそれがあるというから厄介だ。著者は、金融商品をシンプルなものにして、金融市場の複雑性を減らすよう提言する。危機を増幅するレバレッジも減らすべきだと言う。
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リスクをヘッジする手段は、何もやらないこと?, 2008/12/14
By ひょいひょい (千葉県) - レビューをすべて見る
著者は、ウォール街の投資銀行で、リスクヘッジに関する仕事に関わっていた、その実体験を赤裸々に述べている。
エピソードが実名入りで書かれており、ノンフィクションとしても読み応えがある。しかし、金融の知識が無いと、読み込むのは難しいと思う。
個人的には、リスクヘッジを行うことが、更にリスクを生むといった、リスクヘッジの合成誤謬が興味深かった。この考え方は、金融以外でも、プロジェクトを進める際の考え方として、参考になるのではないかと思った。
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必然なんて書いてない, 2008/10/28
By Isis - レビューをすべて見る
ザクッと言えば、現在の金融システムが如何に危ないかとここ数年の投資銀行内部で行われていた事柄の紹介と言った所です。実名がかなり出ています。黒木亮の巨大投資銀行の内容ともだぶっているところがあります。
株式や債権の投資を行っている人や金融関係の人にとっては、とても参考になるし、読み物としてもまずまずです。
中程で冗長な部分があり、総頁も結構あるので、一気に読み切れないのでマイナス一つです。
結論としては流動性維持、リスクヘッジがリスクを大きくする合成の誤謬、あたりなのではないかと解釈したのですが。。。
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巨大な災厄をもたらした金融イノベーション, 2008/10/23
By 白河夜舟 (東京都国立市) - レビューをすべて見る
邦訳題名が的外れだというのではないが、原題の”A Demon of our own Design” は「俺たちが魂を入れた魔神」、つまり人間ファウストが契約を結んだ悪魔を思わせる。これが投資世界にかかわるものであることを知らせるために副題は「マーケット、ヘッジファンド、そして金融イノべーションの災厄」となっている。「魔神」とはこの「災厄」の元凶であり、著者によればその災厄は現状ではほとんど避けがたい。それが今や現実のものになってしまったことはわれわれが身をもって知るところである。
それではこの魔神の正体は何か。それは一言でいえば「市場の複雑性」(高度にレバレッジを組み込んだ多種多様な金融商品の市場)とその市場内部あるいは相互間の「密結合」状態(本来はプロセスの構成要素が緊密に連携している状態を指すエンジニアリング用語)である。これだけではまだ抽象的にすぎるかも知れないが、ここから現実に起きている事態、つまり各種のデリバティブズの流通とそれが招来するシステミック・リスクに思いを及ばせることは可能だろう。著者は「金融商品を単純化し、レバレッジを減らすことが、金融市場の制度設計を修正する処方箋である」という。(それは正しい結論だと思われるが、07年に出版された本書が現下の危機が不可避だったと主張しているわけではない。)
本書は幾つもの投資銀行でリスク・マネジメントの実務に従い、半ばは学者でもある著者の実践と研鑽にもとづいた力作である。ここに紹介した結論に到達する以前に描かれた80年代以降の投資銀行各行の浮き沈みはこの世界に渦巻く欲望の強烈さと幾多の大銀行がそれに立ち向かい、危うく立ち直った、リスクの巨大さを改めて思わせる。賢人賢者と讃えられる投資世界の大御所たちがITバブルでは一敗地にまみれていることも興味をそそる。著者はヘッジファンドとは定義不能と考えているようである。たとえそうでないとしてもその定義には明らかに手を焼いている。そうとすればリスクを対象とする本書を細部まで理解できなくても恥とするには当たらない。
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金融危機の原因に迫る, 2008/10/16
By hbspmd - レビューをすべて見る
本書は87年のブラックマンデー以降、金融市場に起こった様々な事件の背景についてマーケットの真っ只中に居た筆者が生々しく語った一冊である。現下に起こっている金融不安・金融危機に関する直接的な記述はないものの、現在の金融市場における暴落のリスク、市場のメカニズムについて舞台裏を知ることが出来、現状起こっている事象を理解するのに非常に役立つ。
現在我々が直面している問題は流動性やレバレッジの問題であるが、複雑になり過ぎた金融システムが「密結合」している為に危険度が増していると言え、誰の手にも負えない代物になっているという指摘がある。
その一方で、生物学的には極めて単純な能力特性の方が複雑な環境識別・適応能力よりも、種の保存には有効であるという教訓から、貴重な情報を敢えて無視するような粗視的な意思決定をする方が、市場リスクから身を守る為に有効であるという考え方を示していることは興味深い。
ともあれ金融市場の過去20年を振り返り、リスクを極小化する為に編み出された金融工学の発達にも拘らず、市場リスクは逆に増幅しているのではないかと感じる直感を裏付けてくれる著作である。
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金融クラッシュの処方箋?。, 2008/9/29
By Frypan "amano70" - レビューをすべて見る
数々の金融クラッシュの実況中継、みたいなところがあって、野次馬根性で読むにはなかなか楽しい読み物です。
また、著者が述べる、「今の市場にまかせたままではクラッシュは不可避」というのは、納得できる意見です。「市場に任せておけば万事OK」なんていう話が、「まさに空論」であることは、本書の中身から良く見て取れます。
といいながら、一方で著者は、それを防ぐための「各種の規制」には否定的です。で。「それではどうする?」という問いに対する答え。これはなかなか興味深いものですので、ぜひご一読の上考えられてみてはいかがでしょうか?。
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地味な研究書, 2008/9/3
By ヒデ - レビューをすべて見る
訳文は読みやすいかと思いますが、地味で盛り上げに欠け、専門用語や固有名詞が多く出てくる特に前半は、門外漢には読み難いです。後半は、スリーマイル島やビクトリア湖のお魚から、グレイシー柔術の歴史まで、小話が多く差し挟まれ、金融リスクへの最適解とは何かを探ります。ぜんたいとしては、体験を印象的に綴った静かな研究書といった趣でしょうか。
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リスク・暴落・バブルなどを考えるのに良い本。ただし、金融に関する基本的な用語は知っていないと読み通せない。, 2008/8/16
By コンタナトス (東京都) - レビューをすべて見る
学問と実務の両方を理解している著者が、著者自身のすぐ近くで起きた暴落について述べている本。理論そのものと、その理論を用いる人々の両方についての多くの含蓄のある本。投資家や金融関係者のみならず、不確実なリスクに晒されている人が読んでおくべき良書。とはいえ、金融に関する基本的な用語やメカニズムは理解していないと読み通せない。そこが、万人向きではなく、残念である。
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2007年5月12日の英語版へのレヴューを再録させていただきました。, 2008/7/26
By recluse - レビューをすべて見る
どういうタイミングなんでしょうか、black swanに続く、市場関係者による警告の作品です。この作品には2つの焦点があります。ひとつは著者による金融市場の危機の分析です。題材として取り上げられるのは、著者が経験したblack mondayとsalomon brothersでの経験です。著者はこの経験を通して、現在のリスク管理モデルが抱える内在的な欠陥を指摘します。それは市場の流動性へのナイーヴな信仰とプレーヤーの個別には”合理的”な行動がもたらすことになる全体的な非合理性です。それぞれの危機の現場にいた著者によるこれらの状況の同時代的な描写と事後的な分析は類書には見られないものです。というよりも今明らかにされる当時の実情は恐ろしくなるほどです。これらの経験をベースに後半はどちらかというと哲学的なリスク管理の議論が展開されることになります。著者はこの世界でのいくつもの常識とされる前提への疑問を提示していきます。著者は、更なる精緻な管理手法の強化、情報の更なる開示が危機回避にもたらす効果には懐疑的です。著者は流動性こそが市場の鍵であることを強調し、そしてこの流動性の維持ほど市場参加者の微妙なバランスに依存するものは、ほかにはない点を強調します。著者が最後にたどり着いた結論は、”simpler financial instruments and less leverage"です。著者は、この提言が現在の金融市場の傾向と矛盾することは十分認識した上で、ある意味では自己否定とも思える結論にたどり着いているわけです。
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読み物としてもおもしろい, 2008/7/1
By 是富金蔵 (セントクロイ島) - レビューをすべて見る
ブラックマンデーのLORのポートフォリオ・インシュアランスからLTCMまで幅広い事例を扱っています。
読み物としてもとても興味深く読めました。
とにかくシンプルにという考えが流石という感じでした。
コキブリとヘッジファンドという章のタイトルはカッコ悪いですが、まさにその通りだと思いました。
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結局、金融工学は無力だったのか?, 2008/6/29
By mikeexpo - レビューをすべて見る
金融工学がもたらしたのは、結局市場の不安定性だったというある意味身も蓋もない結論を読者に納得させるため、ありとあらゆる逸話が披露されている。
もちろんアジア通貨危機やネットバブルなど金融に関する事案も多いのだが、スペースシャトルの爆発事故やスリーマイル島やチェルノブイリの原発事故などにも言及し、何故危機は回避できなかったのかが、冷静に分析されている。
日本金融界は金融工学の遅れをさんざん指摘されてきたが、遅れていたが故に今回のサブプライム危機の損傷は少なかったのだろう。本書を読むとそんな気がしてきた。
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現代金融物語, 2008/6/3
By くろとわ (埼玉県) - レビューをすべて見る
・ブラックマンデー前にプットオプションを買い、見事ヤングリタイヤしたトレーダー
・日本の不況時、日本国債の取引等で20億ドル稼いだソロモン日本支店
・ロシア危機寸前に、ロシア国債とルーブルから脱出したソロモン
・流動性の無い優先株をUBSに買わせ、大損させた日本の金融機関
・インターネットバブル時にバリュー投資を貫き、破綻したタイガー・マネジメント
実にさまざま悲喜劇が本書で展開され、さながら現代金融物語である。
また、投資のヒントが満載であり、読み終わるのが勿体無く感じた。
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昨年から、ノーベル経済学賞の選定基準は新自由主義の賞賛から批判に転換した。
もちろん、選定基準の転換にかかわらず、クルーグマンの著作はすばらしい。
そして、クルーグマンはオバマ氏を経済理論の側面から応援し、その勝利に貢献した。
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5つ星のうち 4.0 扱いやすい機体です, 2009/5/2
By corundum "corundum" - レビューをすべて見る
値段は大差のないニコンD90と迷った末、此方を選びました
下開きのバリアングル液晶に不安を感じてましたが、実際使ってみると横開きより自然に使えます
特に縦に構えたときは全く違和感有りません
三脚やブラケットをつけた場合は下向きに180度開くことは出来ないので使い勝手は制限されますが、下向き90度まで開いて捻る等それなりに利用できます。
購入前の比較にニコンショールームで確認したところ
基本の撮影能力は1ランク上のD90と全く一緒、AFの速度も一緒とのこと(ニコンショールームの人談)
同じレンズをつけて手に取るとD90に対しカタログ値以上に軽く感じます
全体的に小振りでD90では手に余るけどこれだと丁度収まり、小柄な男性や女性だと使い勝手がイイかと思います。
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5つ星のうち 4.0 ニコンファンにはおすすめ!, 2009/5/1
By rai009 - レビューをすべて見る
(TOP 1000 REVIEWER)
EOSKISSX3の対抗と思われるのが本機。
画素1230万でAF11点、Dムービーが使えるという点ではD90と同等。違いとしましては液晶部分が2,7型で約23万ドット、連続撮影速度が秒間4コマ、D90が3型で約92万ドット、秒間4,5コマというくらいなので、お写真としましてはそこまで変わりませんのでよっぽどの液晶画面と連射に高性能を求めない限りこちらの方がお値段的にも良いかと思います。
5つ星のうち 4.0 扱いやすい機体です, 2009/5/2
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値段は大差のないニコンD90と迷った末、此方を選びました
下開きのバリアングル液晶に不安を感じてましたが、実際使ってみると横開きより自然に使えます
特に縦に構えたときは全く違和感有りません
三脚やブラケットをつけた場合は下向きに180度開くことは出来ないので使い勝手は制限されますが、下向き90度まで開いて捻る等それなりに利用できます。
購入前の比較にニコンショールームで確認したところ
基本の撮影能力は1ランク上のD90と全く一緒、AFの速度も一緒とのこと(ニコンショールームの人談)
同じレンズをつけて手に取るとD90に対しカタログ値以上に軽く感じます
全体的に小振りでD90では手に余るけどこれだと丁度収まり、小柄な男性や女性だと使い勝手がイイかと思います。
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5つ星のうち 4.0 ニコンファンにはおすすめ!, 2009/5/1
By rai009 - レビューをすべて見る
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EOSKISSX3の対抗と思われるのが本機。
画素1230万でAF11点、Dムービーが使えるという点ではD90と同等。違いとしましては液晶部分が2,7型で約23万ドット、連続撮影速度が秒間4コマ、D90が3型で約92万ドット、秒間4,5コマというくらいなので、お写真としましてはそこまで変わりませんのでよっぽどの液晶画面と連射に高性能を求めない限りこちらの方がお値段的にも良いかと思います。
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ゼネラル・モータスGMが倒産した年に、マイケルが亡くなったのではない。
マイケル・ジャクソンが死んだ年にGMが倒産したのだ。
世界中の、誰もキャデラックをほしがってはいない。
ほしいのは、マイケルのアルバムなのだ。
マイケル・ジャクソンが死んだ年にGMが倒産したのだ。
世界中の、誰もキャデラックをほしがってはいない。
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初めて買ったLPレコードは紙ジャケットだった。
しかし、CDを買うようになるとプラスチックのケースをかっこいいとおもうようになった。
そして、今レコード店でCDのケースが髪ジャケットだと、思わず手にとって見てしまう自分に気づく。
アメリカの頂点に最初に到達した黒人はオバマ氏ではなかった。
彼よりも早く頂点に達した男が、ここにいる。
天才の早すぎる死を悔やむ必要など、ありえない。
芸術家としてのマイケル自身にも悔いはなかろう。
しかし、アメリカは、かけがいのない家族を失ったのだ。
もう、生で彼の声を聞くことはできない。
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彼がジャクソン・ファイブで唄っていたのは、いつのことだったか。
あれから、どれほど高く、遠くに登ったことか。
たしかに、彼は無敵だった。
そして、なお高く登ろうとしていた。
疑うものは、このアルバムを聞けばいい。
1. Unbreakable
2. Heartbreaker
3. Invincible
4. Break Of Dawn
5. Heaven Can Wait
6. You Rock My World
7. Butterflies
8. Speechless
9. 2000 Watts
10. You Are My Life
11. Privacy
12. Don't Walk Away
13. Cry
14. The Lost Children
15. Whatever Happens
16. Threatened
商品の説明
Amazon.co.jp
ニュージャックスウィングがシーンを駆け抜けた1991年、マイケル・ジャクソンはアルバム『デンジャラス』のメインプロデューサーにテディ・ライリーを起用。そしてダークチャイルド旋風が吹き荒れる2001年、待望のニューアルバムに迎えられたのは、時代の風雲児、ロドニー・ジャーキンスである。ポップなミッドビートのファーストカット<6>をはじめとするアップナンバー6曲をロドニー・ジャーキンスが手がけ、前作からのテディ・ライリーも3曲でプロデュースを担当。
温かいサウンドが壮大に広がる珠玉のバラード<10>ではベイビーフェイスを起用し、優しいヴォーカルの<12>はマイケル自らがプロデュースを努めている。R.ケリー、ザ・ノトーリアスB.I.G.、カルロス・サンタナ、クリス・タッカーと、豪華ゲストも顔をそろえた壮大なアルバムだ。(速藤年正)
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For such a boldly titled and apparently driven attempt to reinstate Michael Jackson at the center of the pop world, Invincible is a listless thing. Split between scratchy funk workouts and midtempo ballads that might have appeared as Bad B-sides, the album plays on and on while never seriously promoting dancing or romancing. Its handful of weird moments--the resurrection-by-tape of Biggie Smalls on the bridge of the title track, for instance--are hardly large-scale bizarre like the first disc of HIStory. The title track turns out to be hardly the rampant egofest you'd imagine; instead, its subject is a female whom Jackson cheers on. Likewise, the most ear-catching moments of the "comeback" single "You Rock My World" come with Chris Tucker's jivey introduction. Despite a debt to "Payback"-era James Brown, "Rock" floats away like steam midway through. It's almost a relief when the old self-regard turns up: on the growling "Privacy," Jackson rants about muckrakers "stalking" him in search of "the stories you need to bury me," all this long after foundering divas and troubled boy-group members have replaced him on tabloid covers. The man may occasionally break away from the mirror but seems unsure where else to find inspiration. --Rickey Wright
あれから、どれほど高く、遠くに登ったことか。
たしかに、彼は無敵だった。
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1. Unbreakable
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7. Butterflies
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9. 2000 Watts
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11. Privacy
12. Don't Walk Away
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ニュージャックスウィングがシーンを駆け抜けた1991年、マイケル・ジャクソンはアルバム『デンジャラス』のメインプロデューサーにテディ・ライリーを起用。そしてダークチャイルド旋風が吹き荒れる2001年、待望のニューアルバムに迎えられたのは、時代の風雲児、ロドニー・ジャーキンスである。ポップなミッドビートのファーストカット<6>をはじめとするアップナンバー6曲をロドニー・ジャーキンスが手がけ、前作からのテディ・ライリーも3曲でプロデュースを担当。
温かいサウンドが壮大に広がる珠玉のバラード<10>ではベイビーフェイスを起用し、優しいヴォーカルの<12>はマイケル自らがプロデュースを努めている。R.ケリー、ザ・ノトーリアスB.I.G.、カルロス・サンタナ、クリス・タッカーと、豪華ゲストも顔をそろえた壮大なアルバムだ。(速藤年正)
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For such a boldly titled and apparently driven attempt to reinstate Michael Jackson at the center of the pop world, Invincible is a listless thing. Split between scratchy funk workouts and midtempo ballads that might have appeared as Bad B-sides, the album plays on and on while never seriously promoting dancing or romancing. Its handful of weird moments--the resurrection-by-tape of Biggie Smalls on the bridge of the title track, for instance--are hardly large-scale bizarre like the first disc of HIStory. The title track turns out to be hardly the rampant egofest you'd imagine; instead, its subject is a female whom Jackson cheers on. Likewise, the most ear-catching moments of the "comeback" single "You Rock My World" come with Chris Tucker's jivey introduction. Despite a debt to "Payback"-era James Brown, "Rock" floats away like steam midway through. It's almost a relief when the old self-regard turns up: on the growling "Privacy," Jackson rants about muckrakers "stalking" him in search of "the stories you need to bury me," all this long after foundering divas and troubled boy-group members have replaced him on tabloid covers. The man may occasionally break away from the mirror but seems unsure where else to find inspiration. --Rickey Wright
15歳未満の子供への移植が法律で認められていないことは、現在の臓器移植法の欠陥なのか。私は、欠陥であると断定できない。
長期脳死児:診断後1カ月以上60人 全国病院調査(毎日新聞 2007年10月12日)
脳死状態と診断された後、1カ月以上心停止に至らない「長期脳死」の子どもが全国に少なくとも60人いることが、全国約500病院を対象にした毎日新聞の調査で分かった。長期脳死児がこれほど多数に上ることが明らかになるのは初めて。臓器移植法は15歳未満の子どもからの臓器提供を認めていないが、年齢制限を撤廃する法改正案も国会に提出されており、議論を呼びそうだ。調査は今年8~10月、日本小児科学会が専門医研修施設に指定する計522施設を対象に実施。医師が脳死状態と診断後、医療やケアを提供中の長期脳死児(診断時満15歳未満)の有無などを尋ね、272施設(52.1%)から回答を得た。その結果、診断から1カ月以上経過しても心停止に至らない患者は39病院の60人で、うち14人は在宅療養中だった。年齢は2カ月~15歳7カ月で、診断後の期間の最長は10年5カ月だった。
このうち、25病院の31人は、法的脳死判定基準か、旧厚生省研究班が00年にまとめた小児脳死判定基準の無呼吸テストを除く全項目を満たしていた。臓器提供をしない場合は必要ないため、他の患者は全項目の判定はしていないが、主治医が脳死とみられると判断した患者だった。臓器提供を前提に、小児脳死判定基準が妥当だと思うかとの問いには、回答した医師270人のうち42%が「分からない」とした。理由は「長期脳死児を『死者』として受け入れることは、家族だけでなく医療者側も難しい。移植の道を閉ざすことはできないが、一定の配慮が必要」など。「妥当でない」は17%、「妥当」は12%だった。法的基準を作った際の調査では、子どもの場合、脳死から10日程度で心停止に至るとされた。だが、小児の基準を検討した旧厚生省研究班の調査は、87年4月からの12年間に長期脳死児が25例いたことを報告。日本小児科学会の04年の調査でも18例が報告された。子どもの脳は障害に強いとされるが、原因の究明などは進んでいない。
法改正に関しては(1)脳死を一律に人の死とし、提供年齢制限を撤廃、家族同意のみで提供可能にする(2)提供可能年齢を12歳以上に引き下げる--の2案が出されている。同学会の調査を担当した小児神経科医の杉本健郎・びわこ学園医療福祉センター統括施設長は「これまでの調査よりかなり多い結果だ。臓器提供を否定はしないが、脳死診断後も長く心停止に至らない子どもが多数いることを厳粛に受け止め、単なる『死』と片付けずにオープンな議論をすべきだ」と話している。【臓器移植取材班】
「脳死」判定後、6年間心臓が動き、成長した7歳の男の子(中日新聞・東京新聞 2006年12月23日)
臓器移植に関心が高まる陰に、脳死診断後に一カ月以上生きる「長期脳死」という状態の子どもたちがいる。国内での小児臓器移植を可能にする臓器移植法改正の前提を覆すような事例にもかかわらず、その存在はほとんど知られていない。 (井上圭子)
A君(7つ)は一歳半の時、原因不明の高熱で急性脳症となった。医師からは「大人なら脳死の状態」と宣告されたが、六年後の今も、人工呼吸器を付けて「生きている」。
発症後三カ月は肺炎などの合併症を繰り返したが乗り越え、やがて状態は安定。四歳で退院した。母親はA君の皮膚を清浄綿でふき、半開きになるまぶたを閉じて目の乾燥を防ぐ軟こうを塗る。たんを吸引し、三時間に一度の体位交換。栄養は鼻のチューブから。「苦には感じない。毎日一緒にいられることが幸せ」と母親は言う。
この六年間で身長は三六センチ伸び一一〇センチに、体重は七キロ増え一六キロに成長、顔つきもすっかり男の子らしくなった。暑ければ汗をかき、排便時は顔を真っ赤にして踏ん張る。注射針を刺すと体をよじる。この五年間に受けた臓器移植法に基づく脳死判定では、無呼吸テスト以外のすべての検査で脳死の要件を満たしたのに、である。
「Bちゃん、お客さんにごあいさつしようね」。母親に促され、記者がB君(10)の手に触れると、B君は温かい手でギューッと握り返してきた。
四年前、B君は交通事故に遭い、頭蓋(ずがい)内に血液があふれ脳圧が異常に高くなる「急性硬膜下血腫」と診断された。緊急手術でも意識は戻らず、一カ月後「もう脳死に近い状態。手は尽くした。あとはご家族で静かに見守って」と言われた。だが二カ月後、だらんとしていた手がピクッと動き、浅い自発呼吸も戻った。事故から一年後、奇跡的に退院できた。
今も瞳孔は開いたままで脳波もないが、母親は自信に満ちて言う。「この子のおかげで家族や友人と命について真剣に考えるようになった。出会いもあった。この子の存在が家族の幸せ」
二〇〇四年に日本小児科学会が全国の救急病院などを対象に行った調査によると、小児脳死七十四例(疑い含む)のうち、脳死状態と判断してから心停止まで三十日以上かかったケースは十八例(24%)あった。人工呼吸器など医療技術の進歩もあり、長期脳死例は新たな問題として浮上している。家族にとり「脳死を人の死」とする同法の考え方は受け入れがたい。
日本移植学会によると、脳死からの移植を前提とする心臓・肝臓移植の希望待機者は二百二十九人(先月三十日現在)いる。小児も含め臓器移植を進めるため、与党はドナーの年齢制限撤廃などを盛り込んだ同法改正案をまとめた。
だが、松本歯科大学の倉持武教授(倫理学)は「脳死のドナーが豊富な社会なんて、逆に異常だ。脳死を一律に死と認めれば、死の解釈は移植の大義名分のもと植物状態、重度脳障害へと拡大していく」と警告する。
渡航費用の寄付を求める移植希望者家族と比べ、長期脳死の子の家族の声は世の中に届きにくい。ある母親は「社会に説明しなきゃという気持ちと、やっぱり怖いという気持ちと」と心は揺れる。「ドナー不足」という言葉が「臓器をくれ」に聞こえるという。
「難病の子を救おうと臓器を求める親の思いも分かる。ただ、ドナーになる子の立場も知ってほしい。それだけ」
「超重症児」長期生存も、自発呼吸や体温調節回復例(2007年12月18日 読売新聞)
「脳死」「脳死に近い」などと診断された子どもが何年も生きるケースが少なくない。自発呼吸などが回復する例も目立ち、脳死診断のあり方を見直す必要がある。(大阪科学部 山崎光祥)
子どもの脳死で長期生存例がしばしばあることは、学会などで報告されていたが、実際の病状や生活の様子はほとんど知られていない。
そこで記者は今秋、出産時のトラブルによる心肺停止や頭部外傷、脳炎などで深刻な脳障害に陥って意識がなくなり、人工呼吸器を装着した「超重症児」の家族にアンケートを行い、14人(存命9人)の両親から回答を得た。
その結果、明らかになったのは、「脳死状態」などと絶望的な診断を受けた後も、何年も心臓が動き続けることが珍しくないばかりか、脳の機能が若干でも回復した例がかなりあることだ。
14人のうち、8人は診断時に脳機能の兆候がなく、脳死または脳死に近い状態とされ、6人は若干脳機能が残っていたが脳死に近い状態などと言われた。リスクを伴う無呼吸テストは誰も受けていないため、正式な脳死判定ではないが、脳機能の兆候のなかった8人とも身長が伸び、うち6人は自発呼吸、脳波、刺激への反応、体温調節のいずれかが、多少なりとも回復していた。4人は歯が生え替わった。
14人全体で見ると症状の改善は11人にのぼり、子どもの脳の回復力の強さを改めて示した。東海地方の男児(11)は6歳の時にひき逃げ事故に遭い、「脳死に近い」として、3週間で積極治療が打ち切られたが、1か月余りたって自発呼吸がわずかに戻った。
こうしたケースは何を意味するのだろうか。脳死の定義は「全脳の不可逆的な機能喪失」だ。無呼吸テストが行われていないので、現在の脳死判定基準の不備には直接にはつながらないが、「脳死」という言葉が、安易に使われている実態がうかがえる。
6歳未満の脳死判定基準の作成に携わった杉本寿・大阪大教授(救急医学)は「治療が始まって間もないのに、回復不能だと親に納得させるため、拙速に『脳死』と説明される例が多い」と危ぶむ。必要な検査をしていないケースのほか、脳に作用する薬の影響は考慮したか、脳波検査の感度が十分だったかといった疑問があり、脳機能が残っていたのに見落としていた可能性があるという。そうした不十分な“脳死診断”でも積極的治療の打ち切りにつながるし、人工呼吸器を取り外して腎臓提供が行われることもある。先の東海地方の男児の家族は、主治医から「看病の負担を考えて呼吸器を外しては?」と勧められたという。
「脳死」という言葉は、親を絶望に突き落とす。それでも家族は愛情を持って子どもたちを育てている。14人のうち11人は在宅療養を継続中か、または経験した。最長は11年を超える。
関東地方の男児(8)は、1歳2か月の時に高熱とけいれんに襲われ、無呼吸テスト以外のすべての検査を経て「臨床的脳死」と診断された。脳血流が全くなかったが、3年半前に退院し、その後も感染症などによる命の危機を乗り越えてきた。身長は発症時から30センチ以上伸び、乳歯6本が永久歯になった。鼻の粘膜に吸引用の管が当たると痛そうに首と肩を動かし、最近は体温があまり下がらなくなったという。主治医は「体温をつかさどる脳の視床下部が多少、機能を取り戻した可能性はある。体の動きは脳の活動とは考えにくい」と慎重だが、母親は「どんなにつらくても治療に全身で反応して戦っている。生きているのは息子の意志」と話す。神戸市東灘区の男児(4)も、1歳半の時に肺炎から呼吸困難に陥り、「臨床的脳死」と診断された。症状の改善は見られないが、今年6月から在宅療養に移り、車いすで散歩に出ることもある。「この子がいるだけで家族が笑顔になれる」と母親は話す。
国会には、15歳未満の子どもからの脳死移植を可能にする臓器移植法改正案が提出されているが、審議では、子どもの脳死の実態や判定基準の妥当性なども検証すべきだろう。親への説明のあり方も考え直す必要がある。
*子どもの長期脳死についてのその他の記事は、てるてる日記にまとめられています。
「脳死」の乳児、判定6日後呼吸戻る 近畿大病院 (朝日新聞 2006年06月03日00時03分)
近畿大病院救命救急センター(大阪府大阪狭山市)で、厚生労働省研究班の小児脳死判定基準で脳死と診断された5カ月の男児が、診断6日後に自発呼吸が一時的に戻り、その後4年3カ月間生存していたことがわかった。回復力の強い乳児では、正確な脳死判定が難しく、「現在の基準では不十分」との声も出ていた。この基準見直しの動きや、子どもの脳死移植を実現しようと国会に提案された臓器移植法改正案にも影響を与えそうだ。富山市で開催中の日本脳死・脳蘇生学会で3日、発表される。
同センターの植嶋利文講師によると、男児は98年秋、心肺停止の状態で搬送された。厚労省研究班が98年に作った6歳未満の小児の脳死判定用の仮基準に従い、搬送20日目と24日目に診断を実施。その結果、自発呼吸や脳幹反射など五つの検査項目すべてで反応がなく脳死と診断した。
しかし、脳死患者では調節能力が失われる血圧や尿量、体温などが安定した状態が続き、30日目ごろからは、一時的に弱い自発呼吸が戻ることもあった。ただ、人工呼吸器をはずせるほどの呼吸は戻らず4年3カ月後に肺炎などで死亡した。植嶋講師は「脳の血流検査など、新たな判定項目の追加検討が必要」と指摘している。 (記事中「脳死患者では調節能力が失われる血圧や尿量、体温などが安定した状態が続き」の箇所は記者の認識不足。安定する脳死患者は多数いる。森岡註)→その後、無呼吸テストをしてないという理由で学会発表予定が取り消された。(移植目的でないと無呼吸テストはできない)
脳死:米国・カナダで判定の3人、日本帰国後に意識回復 (毎日新聞 2006年7月26日15時00分)
米国やカナダ滞在中に脳血管の病気で意識不明になった日本人で、家族らが現地の医師から「脳死」と説明されたにもかかわらず、帰国後に意識を回復した人が3人いたことが中堅損害保険会社の調査で明らかになった。東京都内で開かれた日本渡航医学会で、損保の担当者が報告した。海外での脳死診断は日本ほど厳格でなく、治療を打ち切る場合があることを浮き彫りにする事例で、報告した担当者は「医療文化が違う国にいることをはっきり認識すべきだ」と警告する。>>すべて読む
脳死宣告から4カ月後、意識を取り戻した青年(AP通信 2008年3月24日)
脳死を宣告されてから4カ月、医師が移植のために彼の臓器を摘出しようとしたところで、ザック・ダンラップさんは意識を取り戻した。三輪バギーで交通事故に遭ったダンラップさんは、11月19日、テキサス州ウィチタフォールズのユナイテッド・リージョナル・ヘルスケア・システムで脳死を宣告された。彼の家族は彼の臓器を提供することに同意した。親族が最後の別れを告げにきたとき、彼は足と手を動かした。彼はポケットナイフによる足や爪への刺激に反応を見せ、48日後、家へ帰ることができた。現在も自宅で回復中だ。
32 人中、24人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
心臓外科医ですが・・
不定愁訴外来という設定はとても面白かったし、そこでの風景もリアルでよかった。厚労省の役人白鳥もよかった。
が、作者は内科医で心臓外科は専門外なんでしょうが、もう少しきちんと取材してから書かれたほうがよかったと思う。バチスタ手術そのものが今の日本の心臓外科の世界では見限られている術式であるための違和感もさることながら、そもそも術中にこのような行為が行われたからといって心臓がまるきり拍動しないということは決してないし、またこの状況で心臓がぜんぜん動かないからといってその場で臨終を宣告して終了するなどという事態も考えにくいと思う。一般の方はごまかせるでしょうが、その専門の人間にはこのことが非常にひっかかり興を削がれてしまいました。著者が医者ならばこそきちんと調べてから書いてほしかったです。
投稿日: 2007/2/23 投稿者: たあたん
手術室という密室で起こった死は、はたして医療事故なのか、殺人なのか。, 2009/6/13
By モコ (千葉県) - レビューをすべて見る
全3部からなる作品であり、それぞれが大きく異なる顔を見せる秀作。
1部はまじめな医療物。拡張型心筋症に有効な治療法は心臓移植。しかし日本では、保険対象外であり、ドナーが少なく、そもそも15歳未満の子供への移植は法律で認められていない。そこで、心臓移植に代わる拡張型心筋症の治療方法として、バチスタ手術が注目されている。この手術は拡張した心臓の一部(変性部位)を切り取ってしまうという大胆な手術法であり、そのため高度な技術が必要である。この手術を26例連続で成功したのが、桐生率いるチーム・バチスタであった。しかし、27例目の術死をかわきりに、29、30、31例と術死が頻発する。このことに懸念を持った高階病院長が、万年講師の田口に術死の原因究明の調査を依頼するのであった。。という感じ。国内の医療問題への言及やトレンドである手術方法、大学病院の文化などをおりまぜ、なかなかのまじめっぷり。「はーちみつ・きんかん・のどーあめ」のリフレインなど、田口の一言がたまに笑いを誘う程度である。
一転、2部になると心理戦モノへすさまじい変貌振り。2部から登場する白鳥の存在が、この作品を単なる医療物に終わらせない。歯に衣着せぬ物言いといい、その生い立ちや人物像といい、なにからなにまで規格外。強烈なキャラクターである。「砂漠」の西嶋といい勝負である。それでいて、応用心理学、アクティブ・フェーズ、パッシヴ・フェーズ、スネイル・トーク、セルフ・ポートレートなどの専門用語が、おいらの中の無駄な知識欲をそそる。
3部では、医者とは、命とは、そして人間とは、というテーマへのある種の答えも垣間見え、締めとしてふさわしい終わり方であった。
この作品は、「このミステリーがすごい!大賞」の第4回大賞作品である。そう、実はこの作品はミステリでもある。手術室という密室で起こった死は、はたして医療事故なのか、殺人なのか。ミステリとしても十分おもしろい作品だ。そして、ぜひ、白鳥の部下である姫宮(あだ名が氷姫)が主人公のスピンオフも読んで
長期脳死児:診断後1カ月以上60人 全国病院調査(毎日新聞 2007年10月12日)
脳死状態と診断された後、1カ月以上心停止に至らない「長期脳死」の子どもが全国に少なくとも60人いることが、全国約500病院を対象にした毎日新聞の調査で分かった。長期脳死児がこれほど多数に上ることが明らかになるのは初めて。臓器移植法は15歳未満の子どもからの臓器提供を認めていないが、年齢制限を撤廃する法改正案も国会に提出されており、議論を呼びそうだ。調査は今年8~10月、日本小児科学会が専門医研修施設に指定する計522施設を対象に実施。医師が脳死状態と診断後、医療やケアを提供中の長期脳死児(診断時満15歳未満)の有無などを尋ね、272施設(52.1%)から回答を得た。その結果、診断から1カ月以上経過しても心停止に至らない患者は39病院の60人で、うち14人は在宅療養中だった。年齢は2カ月~15歳7カ月で、診断後の期間の最長は10年5カ月だった。
このうち、25病院の31人は、法的脳死判定基準か、旧厚生省研究班が00年にまとめた小児脳死判定基準の無呼吸テストを除く全項目を満たしていた。臓器提供をしない場合は必要ないため、他の患者は全項目の判定はしていないが、主治医が脳死とみられると判断した患者だった。臓器提供を前提に、小児脳死判定基準が妥当だと思うかとの問いには、回答した医師270人のうち42%が「分からない」とした。理由は「長期脳死児を『死者』として受け入れることは、家族だけでなく医療者側も難しい。移植の道を閉ざすことはできないが、一定の配慮が必要」など。「妥当でない」は17%、「妥当」は12%だった。法的基準を作った際の調査では、子どもの場合、脳死から10日程度で心停止に至るとされた。だが、小児の基準を検討した旧厚生省研究班の調査は、87年4月からの12年間に長期脳死児が25例いたことを報告。日本小児科学会の04年の調査でも18例が報告された。子どもの脳は障害に強いとされるが、原因の究明などは進んでいない。
法改正に関しては(1)脳死を一律に人の死とし、提供年齢制限を撤廃、家族同意のみで提供可能にする(2)提供可能年齢を12歳以上に引き下げる--の2案が出されている。同学会の調査を担当した小児神経科医の杉本健郎・びわこ学園医療福祉センター統括施設長は「これまでの調査よりかなり多い結果だ。臓器提供を否定はしないが、脳死診断後も長く心停止に至らない子どもが多数いることを厳粛に受け止め、単なる『死』と片付けずにオープンな議論をすべきだ」と話している。【臓器移植取材班】
「脳死」判定後、6年間心臓が動き、成長した7歳の男の子(中日新聞・東京新聞 2006年12月23日)
臓器移植に関心が高まる陰に、脳死診断後に一カ月以上生きる「長期脳死」という状態の子どもたちがいる。国内での小児臓器移植を可能にする臓器移植法改正の前提を覆すような事例にもかかわらず、その存在はほとんど知られていない。 (井上圭子)
A君(7つ)は一歳半の時、原因不明の高熱で急性脳症となった。医師からは「大人なら脳死の状態」と宣告されたが、六年後の今も、人工呼吸器を付けて「生きている」。
発症後三カ月は肺炎などの合併症を繰り返したが乗り越え、やがて状態は安定。四歳で退院した。母親はA君の皮膚を清浄綿でふき、半開きになるまぶたを閉じて目の乾燥を防ぐ軟こうを塗る。たんを吸引し、三時間に一度の体位交換。栄養は鼻のチューブから。「苦には感じない。毎日一緒にいられることが幸せ」と母親は言う。
この六年間で身長は三六センチ伸び一一〇センチに、体重は七キロ増え一六キロに成長、顔つきもすっかり男の子らしくなった。暑ければ汗をかき、排便時は顔を真っ赤にして踏ん張る。注射針を刺すと体をよじる。この五年間に受けた臓器移植法に基づく脳死判定では、無呼吸テスト以外のすべての検査で脳死の要件を満たしたのに、である。
「Bちゃん、お客さんにごあいさつしようね」。母親に促され、記者がB君(10)の手に触れると、B君は温かい手でギューッと握り返してきた。
四年前、B君は交通事故に遭い、頭蓋(ずがい)内に血液があふれ脳圧が異常に高くなる「急性硬膜下血腫」と診断された。緊急手術でも意識は戻らず、一カ月後「もう脳死に近い状態。手は尽くした。あとはご家族で静かに見守って」と言われた。だが二カ月後、だらんとしていた手がピクッと動き、浅い自発呼吸も戻った。事故から一年後、奇跡的に退院できた。
今も瞳孔は開いたままで脳波もないが、母親は自信に満ちて言う。「この子のおかげで家族や友人と命について真剣に考えるようになった。出会いもあった。この子の存在が家族の幸せ」
二〇〇四年に日本小児科学会が全国の救急病院などを対象に行った調査によると、小児脳死七十四例(疑い含む)のうち、脳死状態と判断してから心停止まで三十日以上かかったケースは十八例(24%)あった。人工呼吸器など医療技術の進歩もあり、長期脳死例は新たな問題として浮上している。家族にとり「脳死を人の死」とする同法の考え方は受け入れがたい。
日本移植学会によると、脳死からの移植を前提とする心臓・肝臓移植の希望待機者は二百二十九人(先月三十日現在)いる。小児も含め臓器移植を進めるため、与党はドナーの年齢制限撤廃などを盛り込んだ同法改正案をまとめた。
だが、松本歯科大学の倉持武教授(倫理学)は「脳死のドナーが豊富な社会なんて、逆に異常だ。脳死を一律に死と認めれば、死の解釈は移植の大義名分のもと植物状態、重度脳障害へと拡大していく」と警告する。
渡航費用の寄付を求める移植希望者家族と比べ、長期脳死の子の家族の声は世の中に届きにくい。ある母親は「社会に説明しなきゃという気持ちと、やっぱり怖いという気持ちと」と心は揺れる。「ドナー不足」という言葉が「臓器をくれ」に聞こえるという。
「難病の子を救おうと臓器を求める親の思いも分かる。ただ、ドナーになる子の立場も知ってほしい。それだけ」
「超重症児」長期生存も、自発呼吸や体温調節回復例(2007年12月18日 読売新聞)
「脳死」「脳死に近い」などと診断された子どもが何年も生きるケースが少なくない。自発呼吸などが回復する例も目立ち、脳死診断のあり方を見直す必要がある。(大阪科学部 山崎光祥)
子どもの脳死で長期生存例がしばしばあることは、学会などで報告されていたが、実際の病状や生活の様子はほとんど知られていない。
そこで記者は今秋、出産時のトラブルによる心肺停止や頭部外傷、脳炎などで深刻な脳障害に陥って意識がなくなり、人工呼吸器を装着した「超重症児」の家族にアンケートを行い、14人(存命9人)の両親から回答を得た。
その結果、明らかになったのは、「脳死状態」などと絶望的な診断を受けた後も、何年も心臓が動き続けることが珍しくないばかりか、脳の機能が若干でも回復した例がかなりあることだ。
14人のうち、8人は診断時に脳機能の兆候がなく、脳死または脳死に近い状態とされ、6人は若干脳機能が残っていたが脳死に近い状態などと言われた。リスクを伴う無呼吸テストは誰も受けていないため、正式な脳死判定ではないが、脳機能の兆候のなかった8人とも身長が伸び、うち6人は自発呼吸、脳波、刺激への反応、体温調節のいずれかが、多少なりとも回復していた。4人は歯が生え替わった。
14人全体で見ると症状の改善は11人にのぼり、子どもの脳の回復力の強さを改めて示した。東海地方の男児(11)は6歳の時にひき逃げ事故に遭い、「脳死に近い」として、3週間で積極治療が打ち切られたが、1か月余りたって自発呼吸がわずかに戻った。
こうしたケースは何を意味するのだろうか。脳死の定義は「全脳の不可逆的な機能喪失」だ。無呼吸テストが行われていないので、現在の脳死判定基準の不備には直接にはつながらないが、「脳死」という言葉が、安易に使われている実態がうかがえる。
6歳未満の脳死判定基準の作成に携わった杉本寿・大阪大教授(救急医学)は「治療が始まって間もないのに、回復不能だと親に納得させるため、拙速に『脳死』と説明される例が多い」と危ぶむ。必要な検査をしていないケースのほか、脳に作用する薬の影響は考慮したか、脳波検査の感度が十分だったかといった疑問があり、脳機能が残っていたのに見落としていた可能性があるという。そうした不十分な“脳死診断”でも積極的治療の打ち切りにつながるし、人工呼吸器を取り外して腎臓提供が行われることもある。先の東海地方の男児の家族は、主治医から「看病の負担を考えて呼吸器を外しては?」と勧められたという。
「脳死」という言葉は、親を絶望に突き落とす。それでも家族は愛情を持って子どもたちを育てている。14人のうち11人は在宅療養を継続中か、または経験した。最長は11年を超える。
関東地方の男児(8)は、1歳2か月の時に高熱とけいれんに襲われ、無呼吸テスト以外のすべての検査を経て「臨床的脳死」と診断された。脳血流が全くなかったが、3年半前に退院し、その後も感染症などによる命の危機を乗り越えてきた。身長は発症時から30センチ以上伸び、乳歯6本が永久歯になった。鼻の粘膜に吸引用の管が当たると痛そうに首と肩を動かし、最近は体温があまり下がらなくなったという。主治医は「体温をつかさどる脳の視床下部が多少、機能を取り戻した可能性はある。体の動きは脳の活動とは考えにくい」と慎重だが、母親は「どんなにつらくても治療に全身で反応して戦っている。生きているのは息子の意志」と話す。神戸市東灘区の男児(4)も、1歳半の時に肺炎から呼吸困難に陥り、「臨床的脳死」と診断された。症状の改善は見られないが、今年6月から在宅療養に移り、車いすで散歩に出ることもある。「この子がいるだけで家族が笑顔になれる」と母親は話す。
国会には、15歳未満の子どもからの脳死移植を可能にする臓器移植法改正案が提出されているが、審議では、子どもの脳死の実態や判定基準の妥当性なども検証すべきだろう。親への説明のあり方も考え直す必要がある。
*子どもの長期脳死についてのその他の記事は、てるてる日記にまとめられています。
「脳死」の乳児、判定6日後呼吸戻る 近畿大病院 (朝日新聞 2006年06月03日00時03分)
近畿大病院救命救急センター(大阪府大阪狭山市)で、厚生労働省研究班の小児脳死判定基準で脳死と診断された5カ月の男児が、診断6日後に自発呼吸が一時的に戻り、その後4年3カ月間生存していたことがわかった。回復力の強い乳児では、正確な脳死判定が難しく、「現在の基準では不十分」との声も出ていた。この基準見直しの動きや、子どもの脳死移植を実現しようと国会に提案された臓器移植法改正案にも影響を与えそうだ。富山市で開催中の日本脳死・脳蘇生学会で3日、発表される。
同センターの植嶋利文講師によると、男児は98年秋、心肺停止の状態で搬送された。厚労省研究班が98年に作った6歳未満の小児の脳死判定用の仮基準に従い、搬送20日目と24日目に診断を実施。その結果、自発呼吸や脳幹反射など五つの検査項目すべてで反応がなく脳死と診断した。
しかし、脳死患者では調節能力が失われる血圧や尿量、体温などが安定した状態が続き、30日目ごろからは、一時的に弱い自発呼吸が戻ることもあった。ただ、人工呼吸器をはずせるほどの呼吸は戻らず4年3カ月後に肺炎などで死亡した。植嶋講師は「脳の血流検査など、新たな判定項目の追加検討が必要」と指摘している。 (記事中「脳死患者では調節能力が失われる血圧や尿量、体温などが安定した状態が続き」の箇所は記者の認識不足。安定する脳死患者は多数いる。森岡註)→その後、無呼吸テストをしてないという理由で学会発表予定が取り消された。(移植目的でないと無呼吸テストはできない)
脳死:米国・カナダで判定の3人、日本帰国後に意識回復 (毎日新聞 2006年7月26日15時00分)
米国やカナダ滞在中に脳血管の病気で意識不明になった日本人で、家族らが現地の医師から「脳死」と説明されたにもかかわらず、帰国後に意識を回復した人が3人いたことが中堅損害保険会社の調査で明らかになった。東京都内で開かれた日本渡航医学会で、損保の担当者が報告した。海外での脳死診断は日本ほど厳格でなく、治療を打ち切る場合があることを浮き彫りにする事例で、報告した担当者は「医療文化が違う国にいることをはっきり認識すべきだ」と警告する。>>すべて読む
脳死宣告から4カ月後、意識を取り戻した青年(AP通信 2008年3月24日)
脳死を宣告されてから4カ月、医師が移植のために彼の臓器を摘出しようとしたところで、ザック・ダンラップさんは意識を取り戻した。三輪バギーで交通事故に遭ったダンラップさんは、11月19日、テキサス州ウィチタフォールズのユナイテッド・リージョナル・ヘルスケア・システムで脳死を宣告された。彼の家族は彼の臓器を提供することに同意した。親族が最後の別れを告げにきたとき、彼は足と手を動かした。彼はポケットナイフによる足や爪への刺激に反応を見せ、48日後、家へ帰ることができた。現在も自宅で回復中だ。
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心臓外科医ですが・・
不定愁訴外来という設定はとても面白かったし、そこでの風景もリアルでよかった。厚労省の役人白鳥もよかった。
が、作者は内科医で心臓外科は専門外なんでしょうが、もう少しきちんと取材してから書かれたほうがよかったと思う。バチスタ手術そのものが今の日本の心臓外科の世界では見限られている術式であるための違和感もさることながら、そもそも術中にこのような行為が行われたからといって心臓がまるきり拍動しないということは決してないし、またこの状況で心臓がぜんぜん動かないからといってその場で臨終を宣告して終了するなどという事態も考えにくいと思う。一般の方はごまかせるでしょうが、その専門の人間にはこのことが非常にひっかかり興を削がれてしまいました。著者が医者ならばこそきちんと調べてから書いてほしかったです。
投稿日: 2007/2/23 投稿者: たあたん
手術室という密室で起こった死は、はたして医療事故なのか、殺人なのか。, 2009/6/13
By モコ (千葉県) - レビューをすべて見る
全3部からなる作品であり、それぞれが大きく異なる顔を見せる秀作。
1部はまじめな医療物。拡張型心筋症に有効な治療法は心臓移植。しかし日本では、保険対象外であり、ドナーが少なく、そもそも15歳未満の子供への移植は法律で認められていない。そこで、心臓移植に代わる拡張型心筋症の治療方法として、バチスタ手術が注目されている。この手術は拡張した心臓の一部(変性部位)を切り取ってしまうという大胆な手術法であり、そのため高度な技術が必要である。この手術を26例連続で成功したのが、桐生率いるチーム・バチスタであった。しかし、27例目の術死をかわきりに、29、30、31例と術死が頻発する。このことに懸念を持った高階病院長が、万年講師の田口に術死の原因究明の調査を依頼するのであった。。という感じ。国内の医療問題への言及やトレンドである手術方法、大学病院の文化などをおりまぜ、なかなかのまじめっぷり。「はーちみつ・きんかん・のどーあめ」のリフレインなど、田口の一言がたまに笑いを誘う程度である。
一転、2部になると心理戦モノへすさまじい変貌振り。2部から登場する白鳥の存在が、この作品を単なる医療物に終わらせない。歯に衣着せぬ物言いといい、その生い立ちや人物像といい、なにからなにまで規格外。強烈なキャラクターである。「砂漠」の西嶋といい勝負である。それでいて、応用心理学、アクティブ・フェーズ、パッシヴ・フェーズ、スネイル・トーク、セルフ・ポートレートなどの専門用語が、おいらの中の無駄な知識欲をそそる。
3部では、医者とは、命とは、そして人間とは、というテーマへのある種の答えも垣間見え、締めとしてふさわしい終わり方であった。
この作品は、「このミステリーがすごい!大賞」の第4回大賞作品である。そう、実はこの作品はミステリでもある。手術室という密室で起こった死は、はたして医療事故なのか、殺人なのか。ミステリとしても十分おもしろい作品だ。そして、ぜひ、白鳥の部下である姫宮(あだ名が氷姫)が主人公のスピンオフも読んで