誰も知らない南の島

いつか南の島にいきたい

もうひとつの北杜夫

2011年10月26日 | 無題
ドクトルまんぼうこと北杜夫先生がなくなられました。

私が初めて自分のお金で買った本は、新潮文庫から出されていたどくとるマンボウ昆虫記でした。

それで、今日は、同じ新潮文庫から先生の「夜と霧の隅で」を取り上げます。
ただし、作品そのものの解説はしませんので、話の概要を知りたい人は、下の本をクリックしてアマゾンレビューを読んでください。

ここでは、ごく最近の海外ニュースで気になったことを書きます。
それは、それを書くことが、先生の夜と霧に近づくと信じるからです。

しかし、その前に、少し前に聞いた気になったことを話さなければなりません。
 
 道端で傷ついている犬や猫を見つけたらどうしますか。
 
 傷ついた彼らを、動物病院に運んであげたらどうでしょうか。
 しかし、もし、彼らのために治療費を支払う用意がなければ、あなたは、かれらを動物 病院につれていってはなりません。動物病院は動物を無償で治療する場所ではないから です。

 たしかに、もっともな話です。大人が傷ついた犬を拾って動物病院に連れて行って、病院に無償で治療を要求したとしたら、その人は非常識な人です。
そして、傷ついた犬を病院に連れてきたのが、子供だとしても、その子供は、たぶん軽率な子供でしょう。でも、ほんのすこしですが、ひっかかるものがありました。

 そうです。私がはなしたかったのは、道路で車にはねられた女の子が、道端に倒れていても、誰も見て見ぬふりをして助けなかった話です。実際には助けた人がいましたが、それは車に二度撥ねられた後でした。

 しかし、もし、見て見ぬふりをしないで、車にはねられた子供を病院に連れて行っら、おそらく、病院は、治療費を、見て見ぬふりをしなかった人に請求するだろう。

 病院は存続しなければならない。存続しなければ治療はできない。しかし、赤字の病院は駆逐される。だから、病院が赤字にならないために、治療費の払えない患者は治療しない。

夜と霧の隅では、遠い昔の物語ではなく、優れて今日的な課題を提示しつづけている。

 
夜と霧の隅で (新潮文庫)
北 杜夫
新潮社