皆様ごきげんよう。月曜日なのに既にへろへろ、黒猫でございます。へろへろ。
でも今日は久しぶりに本のレビューを。
『ナツコ 沖縄密貿易の女王』(奥野修司著、文藝春秋)
終戦後の一時期、ほんの数年だが、沖縄には「ケーキ(景気)時代」と称される時期があった。
終戦後、沖縄には文字通り何もなかった。食べるものも着るものも、住む家もない沖縄で、生き残った人々は唯一できることをした。何も無いなら、ある所から運んでくればいい、というわけで、食料が豊富な台湾や香港と交易を始めたのだ。
米軍が放棄していった銃弾や金属、さらには米軍基地から掠め取ってくる小麦粉などを、沖縄の民間人、特に糸満の商人たちが船で運び、代わりに生活物資を仕入れてくるという貿易が行われるようになるが、当時の沖縄では民間人による貿易は禁じられていた。禁じられたからといって、食べるものがなければ死んでしまう。そんなわけで、戦後の一時期、沖縄では密貿易が盛んに行われたのだが、その中で最も有名だったのは、女だてらに大人数を使い、大量の荷をさばくナツコ(金城夏子)だった・・・。
これはナツコのことを沖縄の老人の口から偶然聞いた作者が、長い年月をかけて丹念に取材したノンフィクションです。
当時の沖縄では相当有名な人だったようなんですが、何故か記録として残っているものはほとんどなく、ひたすら関係者を探し当てて聞き取りをなさったようです。
わたしは不勉強で当時の沖縄の状況など全然知らなかったんですが、何もなかった沖縄で女ながらに大商人になっていくナツコの人生は本当に読みごたえがありました。大金を稼いで動かす一方で、頼ってくる人には気前よく融資してあげたそうで、ナツコの死後、実に大量の借用書が出てきたとか。
不幸にも30代で亡くなるんですが、病に倒れるまで働きづめだったため、娘たちとあまり交流できず、倒れてからも思春期の長女とはしっくりいかない、このあたりはとても切ないです。
すごい人物だったのに、記録がなく埋もれてしまいそうなところを、ギリギリで作者がまとめたかと思うと、すごい苦労だったろうと思いますが、そのぶんとても読みごたえがありました。こんな人がいたんですねえ・・・。やっぱり大きいことをやる人は違うなあ、などと思ってしまう本でした。
最近文庫も出たので、ご興味のある方、沖縄好きな方は是非どうぞ。