皆様ごきげんよう。黒猫でございます。今日は先送りにしていたジョジョ小説の感想を。
『THE BOOK jojo's bizarre adventure 4th another day』(乙一著、集英社)
M県S市に隣接する街、杜王町。1980年代からM市のベッドタウンとして急速に発展したこの街は、古くから避暑地としても有名で、武家の別荘もいくつか残っている。街の花は福寿草、名物は牛タンの味噌漬け。
その杜王町で、西暦2000年の冬、不可解な事件が起きた。自宅の部屋に居たにもかかわらず、自動車に轢かれたとしか思えない怪我を負い、出血多量で死亡している女性が発見されたのだ。
それを見つけたのは、よからぬ思惑を持ってこの家の飼い猫のあとをつけていた天才漫画家・岸辺露伴と、その友人の高校生・広瀬康一だった。天才と呼ばれるが変人の露伴と、常識人の康一は、その不審な死に疑問を抱く。自分たちと同じような能力を持つ者、すなわち『スタンド使い』の仕業ではないかと考えたのだ。
興味を持った露伴が自分のスタンド能力を使い、女性の死を目撃していたと思われる猫の記憶を調べてみると、女性の死の直前に学生服の男がこの家を訪れていた。猫の記憶によると、学生服姿で、腕の内側に赤い傷跡があるらしい。
調べるうちに、康一の学校の複数の男子生徒が腕の内側に赤い傷を負っていることがわかる。これでは人物の特定ができないと困惑する康一に、調査を手伝っていた友人・東方仗助は、「さっき遭った蓮見琢磨という奴が怪しい」と言い出すが・・・?
というようなお話。
・・・すいません、あらすじ久しぶりな上に本の性質上すごくやりづらい・・・!
なんか全然あらすじになっていません。ごめんなさいごめんなさい。
本当に興味のある方はどっか別な場所でもあらすじを参照して下さい。(なんという不親切)
ええと、この本は、荒木飛呂彦の漫画『ジョジョの奇妙な冒険』の第四部、『ダイヤモンドは砕けない』の世界で起きた本編とは直接は関係ない話です。漫画をそのまま小説にしたわけではなく、同じ世界で起きた別の話なので、ノベライズとも違うと思います。平たく言えば二次創作・・・?でも公式だからそれも違うかな。
この小説での主人公は「蓮見琢磨」で、漫画の主人公である仗助や康一くんではありません。実はこの、蓮見琢磨側の生い立ちやら心情やらがかなり初期から描写されているんですが、これを書いちゃうとネタバレになりそうなので、これから読む人のお楽しみに伏せておくことにします。というかあらすじにしにくいんだよ(ぶっちゃけた)。
そもそもジョジョ未読の人にはスタンド能力からして何それ?って世界でしょうし、その説明を始めると一日じゃ終わらないというかどんどん主題からずれていきそうなので、ジョジョ未読でこの本を読みたい方は、とりあえずWikipediaでジョジョ4部のあらすじ及びスタンドという概念くらいをざっとおさえてから臨まれたほうがよいと思います。
一応未読の人に配慮したらしく説明的な描写もありますが、まったく知らずに読むと厳しいかと思います。
わたしはジョジョも乙一も読んでいるのですが、乙一の新作が久しぶりすぎるせいか、なんか結構違和感を持ってしまいました。
ジョジョ読者にはわかるネタを随所にねじこんでいる感じがどうも・・・ちょっとやりすぎです。笑えるのもたくさんありましたが、今まで食べたパンの枚数を覚えてる人間がいたんじゃDIO様もがっかりですよ(笑)。
あと、作中キャラクター、岸部露伴は10代半ばで漫画家デビューして、長期にわたって週刊少年ジャンプで『ピンクダークの少年』を大人気連載中という設定なんですが、それに対して「貴重な10代をそんなことに費やすなんて馬鹿だ。もっと外で遊んどくべきだ」というような描写があります。これは同じく10代でデビューした乙一自身の自虐ネタっぽくて笑いました。遊びたかったんだな(笑)。
あと「同人誌とノベライズって一体何が違うんだろう」とかいうのも。ちょ、こういう企画でそのツッコミ自体ギリじゃね?自虐もほどほどにしたほうがいいですよ。
ジョジョ名台詞ネタといい乙一自身の自虐ネタといい、わかる人にはわかりますが、両方分かる人は少ないのでは。特に乙一の本を初めて読む人にはどう受け取られるのかと思うと、無茶しやがって・・・と思わずにはいられません。
あと、乙一ってこんなに平仮名多用する人だったっけ・・・?なんか全体的にやたら平仮名が多く、読みづらかったです。
作品の内容としては、まずまず面白かったとは思いますが、スタンドバトルシーンなどはやはり文字だけで描写するのと荒木絵でドグシャアとやられるのとでは違うなあ・・・と。賛否両論になると思います。個人的には億泰がかっこよかったです。仗助より戦うシーン長かったような気すらします(笑)。
本の装丁と主人公(?)の琢磨のスタンド能力に関するリンクはよかったと思います。そういうことかあ、と。
実はこの、スタンド絡みの事件を追うパートと、とある女性が結婚まで考えていた男にビルから突き落とされ、ビルの隙間でサバイバルするパートに分かれているんですが、後者はいかにも乙一らしい暗い話です。色々「いくら何でもそれはないよ」と突っ込みたくもなりますが、まあジョジョだし、杜王町だし、アリっちゃアリか、みたいな(笑)。
それにしてもラストはいかにも乙一でした。黒いほうの。