<北京大学医学部などの研究チームは武漢市の市場で取り扱われていたヘビが宿主である可能性が高いと医学誌『ジャーナル・オブ・メディカル・ヴァイロロジー』で発表>。
<日本医学学会によるジャーナル・オブ・メディカル・ヴァイロロジーの論文の評価や追加試験評価が急がれる>
2020年01月23日 11時19分
中国・武漢市を中心に、国内外で新型肺炎の患者が急増するなか、北京大学医学部などの研究チームは22日、病原体となったコロナウイルスの遺伝子解析を行った結果、武漢市の市場で取り扱われていたヘビが宿主である可能性が高いと医学誌『ジャーナル・オブ・メディカル・ヴァイロロジー』で発表した。
このウイルスは当初、2002年に中国広東省で発生し、30カ国以上の国や地域に拡大したSARSウイルス(重症急性呼吸器症候群)に似ていると指摘されていた。
SARSは風邪などと同じコロナウイルスに属するが症状は重く、咳やくしゃみなどの飛沫を介して人から人へ伝播し、8000人以上が感染。当初、感染源としてハクビシンが疑われていたが、今ではキクガシラコウモリが宿主であることが判明している。
今回の新型ウイルスの遺伝子解析を行った北京大学医学部健康科学センターなどの合同チームも当初は、ウイルスの表面上にある「クラウン(王冠)」と呼ばれる突起のDNA配列を見て、コウモリが持っているウイルスがヒトに感染する前に突然変異した可能性を疑っていた。
その後、さらに詳細な解析を進めて、コロナウイルスの自然宿主である野生の鳥やネズミ、マーモット、センザンコウなどの動物と比較した結果、新型ウイルスのタンパク質遺伝子と最も似ているのが、タイワンアマガサとタイワンコブラという毒ヘビであることをつきとめた。
2種類は、中国南部や台湾、ベトナム北部など東南アジア各国で生息し、噛まれると筋肉の動きを止めて、呼吸困難に陥り、死に至る猛毒のヘビだ。
論文によると、多くの患者が発生した武漢市の華南海鮮市場では、水産物以外に野生動物やヘビも取り扱っていたとして、市場で販売していたヘビやコウモリのDNAを調べる必要があると指摘している。
方、中国政府の国家衛生健康委員会は22日、記者会見を開き、「ウイルスが変異して、特性を変えて、感染力や毒性を増し、さらに感染拡大するおそれがある」と認めた。
地元メディアの報道によると、患者の数は中国国内だけで540人以上に達しており、死者も17人に増えた。日本を含めて、タイや米国、マカオでも感染が報告されている。