蔡英文総統再選後の課題は
<●官僚気質の蔡英文の対中姿勢の曖昧さやゆらぎ、
●経済低迷、
●脱原発や
●LGBT婚といったリベラル政策が(若者には受けても)、保守層の多い中高年台湾有権者から反発>
::::::
2020/01/13(月)
総統選の投票率74.9%、12年ぶりの高水準
11日に行われた台湾総統選の投票率は74.9%となり、3期(12年)ぶりの高水準だった。前回の2016年(66.3%)からは8.6ポイント上がり、08年(76.3%)以来の高水準。投票率が前回比で上がるのは5期ぶり。
中央選挙委員会によると、
総統選の有権者数は1,931万1,105人。
投票者数は1,446万4,571人、投票率=74.8%で、このうち
有効票は1,430万940票=だった。
無効票は16万3,631票あった。
自由時報などによると、当日は全域で天気が良かった上、若年層を中心に会員制交流サイト(SNS)で投票を呼び掛ける声が多かったことも投票数を押し上げた。
台中市では投票率が過去最高の約76.4%に達した。
台湾東海大学政治学科の潘兆民教授は、
「逃亡犯条例」改正案に端を発した香港での混乱と中台間の関係悪化が中国への危機感につながり、若年層の投票を促したと指摘した。
昨日、投開票が行われた台湾の総統選挙。
投票率は74.9%にのぼった。
開票の結果、中国に対抗姿勢を示す現職の与党・民進党の
投票率は74.9%にのぼった。
開票の結果、中国に対抗姿勢を示す現職の与党・民進党の
蔡英文総統が817万票余り、得票率・約57%で再選を果たした。
中国との関係改善を訴えた野党・国民党の
中国との関係改善を訴えた野党・国民党の
韓国瑜は552万2000票余り、得票率・約38%だった。
蔡英文総統の得票は1996年に台湾で初めて直接投票による総統選挙が行われて以来、最も多くなった。
同時に行われた議会にあたる
蔡英文総統の得票は1996年に台湾で初めて直接投票による総統選挙が行われて以来、最も多くなった。
同時に行われた議会にあたる
立法院の選挙も113議席の内、民進党が61議席。
国民党が38議席などとなり、民進党が過半数を維持して第1党となった。
昨夜、記者会見した蔡英文総統は中国に対して「武力による脅しを放棄すべきだ」と述べ、将来の台湾統一を目指し武力の行使も辞さないとする中国に対抗する姿勢を示した。
日本に対して蔡英文総統はツイッターに「全ての台湾人と一緒に民主主義を教示できることが私にとって最大の誇りです。日本との絆を深めていきたい」と日本語で投稿した。
今回の総統選挙の結果について、米国と中国は対照的な反応を示した。
中国政府の談話は、蔡英文総統が過去最多の得票で勝利したことには触れず「我々は平和的な台湾統一と、一国二制度の基本方針とともに「1つの中国」の原則を堅持する」とした上で「いかなる形の台湾独立のたくらみと行為に断固反対する」と強調。
蔡政権への警戒感をにじませている。
米国のポンペイオ国務長官は「容赦のない圧力にもかかわらず、台湾海峡の安定に対する蔡英文総統の取り組みを称賛する」と再選を歓迎する声明を発表。
選挙戦に大きな影響を与えた香港からも反応が。
民主化運動の女神とも呼ばれた周庭はツイッターに「民主主義と自由を重視している立候補者が当選されてよかった。台湾がこれからも引き続き民主的な場所でありますように」と投稿した。
台北、蔡総統、周庭のツイッターの映像。
台湾・蔡英文総統、米国政府の台湾での代表期間・米国在台協会・モリアティ会長のコメント。
国民党が38議席などとなり、民進党が過半数を維持して第1党となった。
昨夜、記者会見した蔡英文総統は中国に対して「武力による脅しを放棄すべきだ」と述べ、将来の台湾統一を目指し武力の行使も辞さないとする中国に対抗する姿勢を示した。
日本に対して蔡英文総統はツイッターに「全ての台湾人と一緒に民主主義を教示できることが私にとって最大の誇りです。日本との絆を深めていきたい」と日本語で投稿した。
今回の総統選挙の結果について、米国と中国は対照的な反応を示した。
中国政府の談話は、蔡英文総統が過去最多の得票で勝利したことには触れず「我々は平和的な台湾統一と、一国二制度の基本方針とともに「1つの中国」の原則を堅持する」とした上で「いかなる形の台湾独立のたくらみと行為に断固反対する」と強調。
蔡政権への警戒感をにじませている。
米国のポンペイオ国務長官は「容赦のない圧力にもかかわらず、台湾海峡の安定に対する蔡英文総統の取り組みを称賛する」と再選を歓迎する声明を発表。
選挙戦に大きな影響を与えた香港からも反応が。
民主化運動の女神とも呼ばれた周庭はツイッターに「民主主義と自由を重視している立候補者が当選されてよかった。台湾がこれからも引き続き民主的な場所でありますように」と投稿した。
台北、蔡総統、周庭のツイッターの映像。
台湾・蔡英文総統、米国政府の台湾での代表期間・米国在台協会・モリアティ会長のコメント。
●福島 香織のプロフィール
大阪大学文学部卒業後産経新聞に入社。上海・復旦大学で語学留学を経て2001年に香港、2002~08年に北京で産経新聞特派員として取材活動に従事。2009年に産経新聞を退社後フリーに。おもに中国の政治経済社会をテーマに取材。主な著書に『中国絶望工場の若者たち』(PHP研究所、2013)、『中国「反日デモ」の深層』(扶桑社新書、2012)、『潜入ルポ 中国の女』(文藝春秋、2011)、『習近平王朝の危険な野望 ―毛沢東・鄧小平を凌駕しようとする独裁者』(さくら舎、2018)などがある。メルマガ「中国趣聞(チャイナ・ゴシップス)」はこちら。
蔡英文政権の人気の無さは、
官僚気質の蔡英文の対中姿勢の曖昧さやゆらぎ、
経済低迷、
脱原発や
LGBT婚といったリベラル政策が(若者には受けても)、保守層の多い中高年台湾有権者から反発を受けていたことなどが要因だった。
また民進党自体が、運動家気質で未熟な政治家の寄せ集めという面もあり、党内の結束も甘かった。
高雄市などでは、ろくな政策運営ができないまま、ただ市民の国民党への反感から民進党が選ばれ続けている現状に胡坐をかき続け、その結果、キャラの際立った国民党・韓国瑜候補の「ワンフレーズ」選挙と、中国のネット世論誘導の前にあっさり敗れた。
この風向きを大きく変えることになった最初のきっかけは、2019年新年早々に習近平が打ち出した「習五条」と呼ばれる対台湾政策だろう。「一国二制度」による中台統一を「必須」「必然」と言い切り、
「中国人は中国人を攻撃しない」(台湾人を名乗れば攻撃する、というニュアンス)、「武力行使の選択肢を放棄しない」「中華民族の偉大なる復興に台湾同胞の存在は欠くことができない」(先に統一して、今世紀中葉の中華民族の偉大なる復興を共にめざす、というニュアンス)とかなり恫喝めいたものだった。
習近平はこの時点で、自分が権力の座にいるうちに台湾統一を実現する自信があったと思う。そして台湾統一を実現することによって、揺らぐ共産党の正統性(レジティマシー)を固め、米国とのヘゲモニー争いの劣勢を挽回しようと考えたのではないか。習近平がそういう強気をみせられるほど、その時の蔡英文政権は窮地に立たされていたのだ。