(注1)クラスター発生業種における改善策の提言できるか
(注2)「医療現場や危機下の接客サービス業等」等の業種に対して、医療、ホテル飲食業界団体経由製造現場の緊急時の底力を具体化して提言できるか
(注3)新型コロナウイルスの感染後の再発防止策を具体化して、他業界団体経由個別企業に対して提言できるか
(注4)感染症対策の優等生台湾やベトナムとの比較評価をしめせるか
(注5)ドイツとの付加価値生産性を人口比を考慮して比較評価をしめせるか
(注6)現在と10年後の三権分立普通選挙議会制自由民主主義議員内閣制弧状列島少子高齢多死社会日本の自動車企業売上高の世界市場のシェアを示せるか
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2020/10/24 11:15
PRESIDENT Online 掲載
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藤本 隆宏(ふじもと・たかひろ)
東京大学大学院経済学研究科教授
1955年生まれ。東京大学経済学部卒業。三菱総合研究所を経て、ハーバード大学ビジネススクール博士課程修了(D.B.A)。現在、東京大学大学院経済学研究科教授、東京大学ものづくり経営研究センター長。専攻は、技術管理論・生産管理論。著書に『現場から見上げる企業戦略論』(角川新書)などがある。
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安井 孝之(やすい・たかゆき)
Gemba Lab代表、経済ジャーナリスト
1957年生まれ。早稲田大学理工学部卒業、東京工業大学大学院修了。日経ビジネス記者を経て88年朝日新聞社に入社。東京経済部次長を経て、2005年編集委員。17年Gemba Lab株式会社を設立。東洋大学非常勤講師。著書に『これからの優良企業』(PHP研究所)などがある。
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藤本 隆宏(ふじもと・たかひろ)
東京大学大学院経済学研究科教授
1955年生まれ。東京大学経済学部卒業。三菱総合研究所を経て、ハーバード大学ビジネススクール博士課程修了(D.B.A)。現在、東京大学大学院経済学研究科教授、東京大学ものづくり経営研究センター長。専攻は、技術管理論・生産管理論。著書に『現場から見上げる企業戦略論』(角川新書)などがある。
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安井 孝之(やすい・たかゆき)
Gemba Lab代表、経済ジャーナリスト
1957年生まれ。早稲田大学理工学部卒業、東京工業大学大学院修了。日経ビジネス記者を経て88年朝日新聞社に入社。東京経済部次長を経て、2005年編集委員。17年Gemba Lab株式会社を設立。東洋大学非常勤講師。著書に『これからの優良企業』(PHP研究所)などがある。
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(東京大学大学院経済学研究科教授 藤本 隆宏、Gemba Lab代表、経済ジャーナリスト 安井 孝之 聞き手・構成=安井孝之)
新型コロナウイルスの感染拡大が経済活動を直撃している。リモートワークが広がりオフィス街で働く人はめっきり減った。一方、ものづくり現場は夏以降、コロナ前の水準に戻り、輸出も回復し始めた。「3密」が避けられないものづくり現場で今何が起きているのか。東京大学大学院の藤本隆宏教授に聞いた——。
(注1)「日本のものづくり現場は、遠隔操作のみでは安全かつ安定的な操業が難しく、要所要所で密集的な集団作業が避けられない職場環境ですが、結果的には、コロナ禍という極度の逆境の中でも大きなクラスターを起こさずに多くの工場が動き続けています。これはとても大変なことです。工場へのウイルスの侵入を食い止め、感染防止に万全を期していることの証明です。この事実はもっと注目されるべきです。この間、緊急事態宣言期も含めてフル操業が続いていた国内工場は少なからずあります。」
(注2)「尋常な努力でできることではなく、現場の高いものづくり能力と感染防止能力、営業の受注努力、工場幹部の胆力、サプライヤーの実力と協力などが融合して初めて可能なことです。メディアが緊迫する医療現場や危機下の接客サービス業等に取材を集中するのは分かりますが、こうした製造現場の緊急時の底力にも、もう少し目を向けてもらいたいと思います。」
(注3)また4月ごろには、数千人規模の国内自動車工場で、別々の職場で1人ずつ、計3人の感染者が出たので、全工場を1週間閉鎖して消毒と再発防止対策を行いました。感染発生は残念でしたが、当時の状況を総合的に考えれば、近隣住民を考慮した一時閉鎖は賢明な判断であったと言えるでしょう。
(注4)感染症対策の優等生とも言えるドイツでさえも、一部の工場で大規模なクラスターが発生していましたが、日本ではあまりみられない。このことからも、そう推測できます。日本の優良国内工場の感染防御能力の水準については、今後、しっかり検証する必要はありますが、最近われわれが実施した質問票調査の一部を見ると、仮に、その工場が実施してきた感染防止対策が十数項目あるとするなら、そのなかの半分ぐらいは、今年に入って新たに始めた対策だが、残りの半分は、すでに新型コロナ感染症拡大の前から、長年取り組んできた衛生対策や清掃・清潔対策であり、それを強化しただけだとの答えが返ってきます。
(注5)日本の製造業が国内総生産(GDP)に占める割合は今も20%を超え、政府の白書によれば、2010代後半における製造業の付加価値生産額はざっと110兆円ぐらいでした。つまり、500兆円ちょっとのGDPの20%強です。主要先進7カ国(G7)の中で製造業のシェアが20%を超えているのは日本とドイツだけです。
確かに、製造業の就業人口は平成の30年間に約1500万人から約1000万人に減りましたが、付加価値生産額はこの30年間もほぼ100兆円超を保っているわけです。つまり、日本の製造業は平成期に、就業人口を3分の2に減らしているのに付加価値生産額はだいたい維持しているのですから、割り算をすれば、付加価値生産性は約1.5倍に増えたことになります。
日本の付加価値生産性について、もう少し計算してみましょう。非製造業を含む産業全体でみますと、就業人口は約6700万人でGDPは533兆円(2019年度、実質)ですから、一人当たりの付加価値生産額は800万円ぐらいです。
一方、製造業をみると、政府統計では約1000万人で約110兆円ですから、付加価値生産額は約1100万円になります。日本の製造業の付加価値生産性は全産業平均のそれよりも4割近く高いことが簡単な計算でわかります。これが、平成期の苦境を乗り切ってきた日本の製造業の今の平均的な実力です。
(注6)一方、高性能・低燃費自動車のように複雑な擦り合わせ型の設計思想をもつ製品群は、設計品質や製造品質により差別化が可能であり、日本企業や国内工場は、比較優位を維持しました。実際、日本の自動車産業は、国内生産が1000万台前後、うち輸出が500万台前後という国内体制を、一時的な異常時を除けば1980年代からほぼ40年、維持してきました。またこの間に海外生産は2000万台近くになり、日本の自動車企業が世界市場の30%近くのシェアを維持し、競争力を維持してきました。