(注1)アメリカ上院小委員会調査による千人計画協力日本人学者名と6名の会員候補者名と一致は闇の中=外交機密条項=か
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2020.10.30
「日本学術会議が中国と交わした“覚書”の闇。日本が工作に弱い理由」
プロフィール:黄文雄(こう・ぶんゆう)
1938年、台湾生まれ。1964年来日。早稲田大学商学部卒業、明治大学大学院修士課程修了。『中国の没落』(台湾・前衛出版社)が大反響を呼び、評論家活動へ。著書に17万部のベストセラーとなった『日本人はなぜ中国人、韓国人とこれほどまで違うのか』(徳間書店)など多数
〇日本学術会議こそ中国の「三戦」を研究せよ。中国と交わした「覚書」の闇
日本学術会議が中国の「千人計画」との協力を否定し、また、加藤勝信官房長官が「同会議として多国間、2国間の枠組みを通じた学術交流を行っているが、中国の『千人計画』を支援する学術交流事業を行っているとは承知していない」と述べたことをもってして、「日本学術会議が千人計画に協力したというのはデマだ」という話が出てきています。
たしかに、日本学術会議が組織として公に千人計画に協力した事実はありません。そのような協定も結ばれていません。
先日のメルマガ(「中国を擁護か。『千人計画はデマ』というデマを流す日本学術会議」)で引用した甘利明氏のブログですが、「日本学術会議は防衛省予算を使った研究開発には参加を禁じていますが、中国の『外国人研究者ヘッドハンティングプラン』である『千人計画』には積極的に協力しています」という文言を、甘利氏は「『千人計画』には間接的に協力しているように映ります」と修正しました。
前述したように、日本学術会議が千人計画に公式に協力したことを示す文書などはありません。そのために、表現を変えたものと思われます。
とはいえ、先日のメルマガでも書きましたが、欧米で逮捕された学者たちは、千人計画に協力して報酬を得ていたことを隠していたことで、逮捕されていたわけで、たとえ千人計画に携わっている学者がいても、そのことを公表すること自体がほとんどありえないことでしょう。また、本人はそうとは知らずに、中国に取り込まれ、中国の軍事技術に貢献しているケースもあります。
そもそも、中国は2018年9月から「千人計画」という言葉の使用を実質的に禁じています。そのため、百度、搜狗といった中国の検索エンジンや微博といったブログで使用できなくなっています。
● 海外高層次人才引進計画
千人計画は「海外高層次人才引進計画」が正式名称ですが、アメリカでこの計画に参加したアメリカ人や中国人の学者が逮捕されたことで、中国ではこの計画の存在を隠す動きが強まりました。だからといって、千人計画がなくなったわけではありません。
2019年11月19日には、アメリカ上院小委員会で、いくつかの連邦研究機関の代表者が、それぞれの機関で「中国の千人計画に関与している学者がいることが確認された」と述べています。
● 中国千人計画突然神秘消失了 疑似原因曝光
また、この上院小委員会が発表した報告書では、中国が、アメリカで研究している研究者を募集することにより、アメリカの研究資金を利用してその軍事力と経済力を強化している、と警告しています。アメリカの研究が軍事力強化に使われていることが、はっきりと明記されているのです。
● 「中国の千人計画は脅威」 米国議会の報告書が警告
中国科技協との協力覚書には「軍事研究せず」の文言なし
その一方で、中国科学技術協会との協力覚書には、学術活動の情報交換、研究者間の交流や共同ワークショップなどを推進することが謳われています。したがって、これが日本の全科学者の総意ということになります。
しかし、この覚書には「軍事研究はしない」ということは、どこにも書かれていません。中国の軍事に資する研究はしないことを明記していないのです。
一党独裁の軍事大国を相手に、なぜそのことを書かないのでしょうか。日本に対しては軍事研究をしないと何度も述べているのですから、そのことを盛り込むべきでしょう。
● 日本学術会議と中国科学技術協会間の協力覚書
日本学術会議は自らのHPで「日本学術会議は、我が国の人文・社会科学、生命科学、理学・工学の全分野の約87万人の科学者を内外に代表する機関であり、210人の会員と約2,000人の連携会員によって職務が担われています」と公式に書いています。
「約87万人の学者を代表する」というのですから、その意見は、日本の全科学者の意見だということになります。また、全学者に対する影響力も多大なものだと自負しているはずです。であるならば、なぜ中国との共同研究が軍事力強化に使われる危険性があることなどについて、勧告しないのでしょうか。
また、先日のメルマガで、「かつて日本学術会議は、2016年に防衛省の安全保障技術研究推進制度に応募した北海道大学に対して、日本学術会議の幹部が北大総長室に押しかけて圧力をかけ、研究を辞退させたことも明らかになっています」と書きましたが、このニュース元であった、北海道大学名誉教授の奈良林直氏は、「日本学術会議の幹部が北大総長室に押しかけた」という事実がなかったと、発言を訂正しました。
そのため、本メルマガもその部分を訂正しますが、しかし、日本学術会議は2017年3月に「軍事的安全保障研究に関する声明」を発表し、安全保障技術研究推進制度を問題視し、名指しこそしなかったものの、これに応じた北海道大学を批判し、そして北海道大学は応募を取り下げるにいたったわけです。
繰り返しになりますが「87万人の科学者を代表する」と自負する機関が、北海道大学の決定を反対するような声明を出せば、それは意図的に「圧力」をかけていること以外の何物でもありません。ましてや、日本学術会議の会員になることを首相に拒否されれば、「学問の自由が奪われる」と大騒ぎするほど学者にとっては権威ある(と思っている)機関です。「忖度」どころではなく、自他ともに一種の「命令」だと感じてもおかしくありません。
日本学術会議は、最初は全国の研究者による直接選挙だったものが、それだと組織票が出るということで各分野の学協会推薦方式になったのですが、それだと学会の仲間うちで会員を引き継ぐことが問題になり、現在は210人の現会員と2,000人の連携会員が次の会員を推薦し、選考委員会を経て推薦する候補者を絞り込むスタイルに変わったそうです。
それだけ日本学術会議の会員になりたい学者が多いということです。逆にいえば、利権化、既得権化しやすいわけです。今回、そのあたりをマスコミや市民運動家が批判しないのは不思議なことです。
ところで、軍事研究をしない日本の学者は知らないでしょうが、中国の人民解放軍は「三戦」という工作活動を展開しています。この「三戦」は、2003年に中国共産党中央委員会、中央軍事委員会において採択され、中央人民解放軍の政治工作条例にも明記されています。
私は、日本の学者も、もっとこのような中国の軍事研究を行うべきです。軍事研究を行わないから、いいように騙される。日本学術会議の誰も「三戦」など知らないはずです。とにかく軍事研究をしないのですから。とすると日本の学者ほど、「三戦」を仕掛けやすい相手はいません。
もちろん、日本の政治もスパイ防止法、憲法改正などによって、日本の国防力を高めなくてはならない。私は以前から、反戦運動は敵国に仕掛けるものだと主張してきました。まさに平和ボケの護憲主義や軍事研究否定などは、中国の「三戦」に嵌った結果そのものです。
私は、優れた科学技術が日本に留まるように、技術開発や基礎研究に対してもっと多くの補助金を出すべきだと思っています。技術の海外流出を防ぐためにも、科学者や技術者をもっと優遇すべきだと思います。その一方で、他国へ国益を流出させた場合には厳罰に処す。そういったことが必要だと思います。
先日のメルマガでも述べましたが、これまで日本学術会議が学問的自由を直接的、間接的に弾圧してきた行為は多々あります。日本の安全保障を危うくしてきたその罪は小さくありません。しかも、日本学術会議は、日本共産党との密接な関係も噂されています。
インターネットもGPSも軍事技術から発展したものです。軍事技術と民生技術の垣根はほとんどありません。そしてその境界線がなくなってきているところを中国は狙っているのです。
日本の技術が流出しないように、そして日本の科学者たちをもっと優遇するように、イデオロギーにまみれた日本学術会議などは解体し、新たな組織を立ち上げるべきだと思います。
https://www.mag2.com/p/news/472356/3