電波研究所季報
村上秀俊* (昭和59年11月20日受理
January 1986 pp.135-139
1. はじめに
BSの姿勢制御系は,地球センサ・太陽センサ・モノ パルス RFセンサからの姿勢誤差データを入力とし, 衛星内に搭載された小型計算機で外乱トルクを推定し, それに応じた制御トルクを各軸のリアクションホイール 又は,スラスタを用いて発生させるととにより所望の姿 勢を保持するゼロ・モーメンタム三軸姿勢安定方式を採 用している(1)
(1)荒井功恵,末永雅士;“BSの姿勢制御システムに ついて”,信学会宇宙航行エレクトロニクス研究会, SANE 80-4.
3種のセンサは,それぞれの基準方向に 対するピッチとロール軸回りの姿勢検出が可能で,セン サの組合せにより,静止軌道上の三軸(ピvチ・ロール ・ヨー)の情報が得られる.
適常の場合,各軸の制御は リアクションホイールの回転を調整するととによって外 乱トルクを吸収し,衛星自体の姿勢を連続的に保持して いる.
このため衛星の姿勢変動は,センサの熱特性など による一部の誤差要因を除いて小さく,安定した制御が 行われてきた(2)
(2)村上ほか;“テレメトリデータによる BSの姿勢決 定値と主局受信データとの比較検討ヘ第24回宇宙科 学技術連合講演会, 2 E 1.
しかし, 1979年11月3日に突然ピッチホイールの回転 が止まり,翌4日にはロールホイーJレの回転が停止した.
こ のため,以後は両軸の制御をスラスタに切り替え て行った.
スラスタ制御は, リミットサイクルと呼ばれ る方法により,ある与えられた誤差範囲領域から姿勢が 逸脱しそうになったときに,対応するスラスタのガスジ ェットを噴射し許容誤差内に保持している.
したがっ て,ホイールのように連続的な制御ができず,離散的に なるため衛星の姿勢誤差が大きくなる.
本稿では,主にスラスタ制御時の姿勢制御の精度につ いてホイール制御との比較を行いながら述べるととにす る.
2姿勢制御装置の概説
以下略
4. まとめ
以上, BSの姿勢制御について,スラスタモードを中心に述べてきた.
結果的に,ピッチ軸に加わる太陽編射 圧による外乱トルクが最も影響が大きく,その主なもの は衛星本体部の非対称性によるものであることがわかっ た.
しかしながら, スラスタモードでも, 0.16° のリミ ット値の設定で要求精度であるポインティング誤差 ±0.2° を満足していることを確認した.
このことから,スラスタモードでも要求精度内で姿勢 保持を実現するととができ,有効な制御方式であるとと が証明された.
参考文献
(1)荒井功恵,末永雅士;“BSの姿勢制御システムに ついてぺ信学会宇宙航行エレクトロニクス研究会, SANE 80-4.
(2)村上ほか;“テレメトリデータによる BSの姿勢決 定値と主局受信データとの比較検討ヘ第24回宇宙科 学技術連合講演会, 2 E 1.
(3) S. Shimoseko, H. Murakami, R. Mochizuki, S. Yokoyama, M. Kajikawa, and K. Arai;“The Attitude Control Performance of the BSE and its Influence on the Received Television Signal Strengths on the Ground" IEEE Trans. Broadcast, BC・28,4, Dec. 1982.