:::::
Author of 'Swarm Troopers: How small drones will conquer the world,' following cutting-edge military technology in general and robotic systems in particular. New time-travel adventure 'City of Sorcerers' out now in paperback and Kindle.
:::::
ウクライナがドローン部隊を大幅に強化し、さまざまな新型ドローンを導入していることは、これまでも報道されている。
しかし、オーストラリアのメルボルンを本拠とする企業SYPAQが開発した無人機「Corvo(コルボ)」ほど奇抜なものはないと言っていいだろう。
同社は2023年3月2日、ウクライナに同社製ドローンを提供すると発表した(ただしSYPAQは、供与されるドローンの正確な仕様や台数、時期については明らかにしていない)。
〇オーストラリア政府から支援を受けて開発されたドローン
ウクライナへのSYPAQ製ドローン
<
SYPAQ Supporting Ukrainian Armed Forces2 March 2023
>
の提供は、オーストラリア国防省が2022年7月に発表したウクライナへの軍事支援の一環だ。
SYPAQは以前から、低コストで使い捨て可能な小型の緊急物資輸送用ドローン「Corvo Precision Payload Delivery System(コルボPPDS)」をオーストラリア陸軍に売り込んでいた。コルボPPDSは、オーストラリア政府から110万豪ドル(約9900万円)の支援を受けて開発されたドローンだ。
コルボPPDSについて判明しているのは、機体がワックス加工された段ボール製であることと、フラットパック設計の組み立て式であることだ。
コルボPPDSについて判明しているのは、機体がワックス加工された段ボール製であることと、フラットパック設計の組み立て式であることだ。
2019年にオーストラリア軍に所属する兵士グループがコルボPPDSを組み立てたところ、グルーガン(熱可塑性プラスチックを溶かして接着する工具)とナイフ、ペン、テープがあれば容易に組み立てられることがわかった(写真から判断すると、ゴムバンドも必要だ)。
スパナは、プロペラを取り付ける時にだけ必要になる。フラットパック設計になっている家具よりも、組み立ては簡単なように見える。
「コルボPPDSの組み立ては、とても簡単だった」。
「コルボPPDSの組み立ては、とても簡単だった」。
オーストラリア軍のウィル・コイヤー伍長代理は軍事ブログ「Grounded Curiosity」で、組み立てた感想についてそう述べている。
「細かい配慮が必要なパーツもあるが、フラットパックのキットが精密に設計・製造されているおかげで、組み立て方はシンプルだ」
〇ピザ配達用ボックスほどのフラットパック設計
フラットパック設計のため、コルボPPDSは輸送しやすい。
フラットパックの大きさはピザ配達用ボックスほどで、運搬用パレットには24機を搭載できる。
SYPAQは価格を明かしていないが、1機あたり数千ドルだとされている。
運用も簡単で、飛行プログラムの設定は、Androidタブレット端末上のわかりやすいインターフェースで行う。
コルボPPDSは自律飛行し、オペレーターは不要だ。
可能な場合にはGPSナビゲーションを使うが、GPSが不能になっても、コントロール用ソフトウェアが、速度と飛行方向から位置を割り出せるようになっている。
つまり、電波妨害を受けてもミッション遂行が可能ということであり、ウクライナにとっては、これは重要なポイントだ。
今回の紛争では、ロシアが仕掛けてくる電子戦の影響で、大量のドローンがたびたび機能停止に陥っているからだ。
〇情報収集や監視、偵察といったミッション用にも調整
コルボPPDSはもともと小型の輸送用ドローンだが、ウクライナはなぜコルボPPDSが必要なのだろうか。
おそらく輸送用ドローンとしてではなく、別のミッションに使うことを計画しているようだ。
SYPAQは、プレスリリース
SYPAQは、プレスリリース
<
SYPAQ Supporting Ukrainian Armed 2 March 2023
>
でこう述べている。「ウクライナ国内のエンドユーザーからのフィードバックを受けて、システムは、情報収集や監視、偵察といったミッション用にも調整されている」
このリリースから伺えるのは、コルボPPDSをロシア軍の占領地域に送り込み、カメラやセンサーを使って情報収集に利用する計画だ。
このリリースから伺えるのは、コルボPPDSをロシア軍の占領地域に送り込み、カメラやセンサーを使って情報収集に利用する計画だ。
コルボPPDSは、発射用カタパルトランチャーが小型であるうえに(人の手でも飛ばすことは可能)、飛行距離が120kmあるので、60km先の場所を撮影して戻ってくることができる。
HIMARS(高機動ロケット砲システム)をはじめとする長距離ロケットが直接攻撃を加える場所まで飛んでいけるのだ。
さらにコルボPPDSは、爆弾の運搬などの「キネテック(運動性兵器)・ミッション」にも使われるかもしれない。
実際これまでにも、貨物用の小型ドローンがそうした目的で使用されてきた。
工場生産されたコルボPPDSはシンプルで、作りは必要最低限であるにも関わらず、ウクライナ軍が空爆で成果をあげてきた手製ドローンよりも高機能で、非常に先進的なソフトウェアも搭載されている。
ウクライナは現在、4つの回転翼をもつ小型クワッドコプターを多数配備しているが、オペレーターは、飛行距離が短すぎると不満を漏らしている。
ウクライナは現在、4つの回転翼をもつ小型クワッドコプターを多数配備しているが、オペレーターは、飛行距離が短すぎると不満を漏らしている。
数kmしか飛ばないものより、長く飛行できる固定翼の無人機のほうがいいというのだ。
こうした状況では、コルボPPDSこそ、偵察と攻撃の両面において現在必要とされているシステムに見える。
こうした状況では、コルボPPDSこそ、偵察と攻撃の両面において現在必要とされているシステムに見える。
実際、ロシアが使用しているイラン製の自爆型ドローン「Shahed(シャヘド)」とコンセプト的にはさほど違いがない。
段ボール製なので数回のミッションを遂行する程度の耐久性しかないが、機体を合板などのより頑丈で低価格の素材に変更することも容易だろう。
ドローン業界の一部は、洗練された高性能ドローンに焦点を当てている(米空軍の大型無人機「Reaper(リーパー)」の最新型は2000万ドル(約27億円)を超える価格だ)。
その一方で、SYPAQなどの企業は低コストの使い捨てドローンの大量供給に尽力している。
〇ドローンを編隊飛行させるソフトウェアも開発
興味深いのは、SYPAQが、ドローンを編隊飛行させるソフトウェアも開発していることだ。何千機ものドローンを集団で飛ばすことで、リーパー1機よりも、あるいは、F-16戦闘機よりも、大きな打撃を与えられる可能性もある。
段ボール製ドローンが相手と聞いて、ロシア軍は鼻で笑っているかもしれない。しかし、そんな余裕は長く続かない可能性がある。
段ボール製ドローンが相手と聞いて、ロシア軍は鼻で笑っているかもしれない。しかし、そんな余裕は長く続かない可能性がある。
(forbes.com 原文)