漫画/ハリソンさんはカノ紳士 Mr.Harrison is THE GENTLEMAN ― フランス通過編 ―(前半)

18世紀欧州が舞台の歴史ロマン。アヴィニヨンの薬屋小町クレールとハリソン&マルセル主従との運命の出会い。

ここだけの秘密(12/19) 辻褄合わせの超絶技巧

2008年12月07日 18時51分32秒 | 第11話/ここだけの秘密

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昨日の話の続きですが、「トリストラム・シャンディ」の1760年代当時の評判は、ハリソンさんが言っているような感じでした。

 「ライオネスのトリストラムの話」なんですが、ランズバーグ夫人はコーンウォール王家の末裔なので、
ご先祖様のお家騒動のお話なのかもしれません。
― と言っても、伝説の時代の話なので、本当にそんな事があったのか、
今となっては(18世紀中頃当時でも)誰も分りませんが。

 ライオネスのトリストラムは、母親の胎内にいる時に父親を殺害され、
母親も出産直後に死亡したという事情から「悲しみの子」という意味の名前が付けられたようです。
(父親が女性の妖精に誘拐され、母親が捜索中に産気付き、出産直後に死亡したという説もアリ。)
イケメンで何でもかんでもできるヤツで、親代わりの伯父さんである当時のコーンウォール王にも、
かのアーサー王にも信頼されていたようなのですが、一方ではパッとしない人々の妬みの的にもなりやすく、
そういった人達に伯父さんのお妃様との不倫を暴かれて追放刑となります。
ブルターニュ王の娘と逆玉結婚して、少しは運が持ち直したかに見えたのですが、
最後は妻にも過去の不倫がバレて、妻の嫉妬から出た嘘がもとで命を落としてしまうのでした。

 どうも中世起源のこの話から、「トリストラム」という名前は出て来て、
この話が大流行した中世では、「パーシー」だの「オーリー」だの、
ライオネスのトリストラム以上に武勇の誉れ高い騎士道物語の主人公は他にいくらでもいるのに、
この名前を息子に付ける親達の数が突出して多かったようなのでした。

 キリスト教国では、聖人名か、昔からある名前を洗礼時に付けるようです。
ローマ式定書では、異教の英雄や偶像神の名前は用いないようにと司祭に指示しているとの事です。
…どうも「トリストラム」という名は、さらに時代を遡って大元が古代の聖人名だったという物ではないようです。

 聖人名ではなくても、キリスト教にちなんだ名なら付けても全く問題ナシのようで、
イエス・キリスト様の受難にちなんだDolores(悲しみ)という名前もあるようです。
年末の日本で、最近は第9のように頻繁に演奏されるようになって来た、
グレート・ヘンデルどん作曲の「メサイア」でもイエス様の事は、
「悲しみの人 ( ただし英語は a man of sorrows ) で…」と歌われていますしね。
「トリストラム」という名もそのお仲間なんだって事ならば、クリスチャンとして逆に名誉ですらあるんしょうが…。

 ウォルター・シャンディさん、「トリシャン」の話の中では具体的に、
なぜ「トリストラム」の名を最悪の名と嫌うのかが書かれていません。
ウォルターさんが少なくとも「トリストラム・ド・ライオネスの生涯と意見」を知っていたというのならば、
この名前の絶滅を目論んだとしても、作者には何とか理解やら納得やらができるのですが。


「アマンドゥスとアマンダ」の話を「トリストラム・シャンディ」で読んでみたけど、
離れ離れになった2人が、めぐりめぐって最後にリヨンの城門で出会った時、
アマンドゥス : 「運命って信じる?」
アマンダ : 「信じる!」

― とかとも、言ったのかしらね?

瑛太さんと蒼井優ちゃんのCMみたい!

昨日の話の続きで、「ハリソンとシャンディは双子説」はどうだろか?
こっちは「アダプテーション」みてぇだ!

「古畑任三郎」の最終話「ラスト・ダンス」のもみじ・かえで双子姉妹みたいなのかもよ。
もしくは双子の兄だか弟だかが、「犬上家の一族」の助清みたいな感じに顔がなってしまってて、
文才があって世間の人気者になりたいのに人前に出られなくて、
「なんで俺がこんなで、お前がこうなんだ!」とか言って、
ハリソンさんをマネージャーにして苛めながらこき使っているとか…。

しかし、ホラー的な展開だとすると…「もしかしたらコレなのでは?」
― というのをわしは今思い付いたぞ。

え゛っ…何?



来週はハリソンさんが「自分の生涯の不幸」について、大雑把に語ります。
〈次回の更新は12月131・14日の予定〉