第5話のネーム(下描き)。こっちの方がアクションが派手。
ハリソンの右手の黒いのは、綴り紐の跡。
何せネーム用ノートは手作りなんでさ―。
「トイレの文化史」(筑摩書房)という本をご存知ですか?
作者はかなり前に最寄の図書館で見つけて読んでみました。
著者はロジェ・アンリ・ゲランさん。訳者は大矢タカヤスさんとさっきネットで調べたらありました。
実はこの本、現在は件の図書館の奥深くにある書庫にしまわれていて、
わざわざ書類を書いて、図書館の職員さんに出庫してもらわなくてはならなくなっています。
さすがの作者もちょっと恥ずかしいので、自宅のネットで一か八か調べてみましたら、
(もしなかったら覚悟を決めて、図書館へと借りに行くつもりでいました。)
・・・意外や意外、この本については検索の画面に沢山出て来ました!
18世紀パリの街の糞尿処理が、どんな風に行われていたのかを大まかに知ったのは、この本ででした。
その後、「グランド・ツアー 英国貴族の放蕩修学旅行」(本城靖久さん著/中公文庫)という本も読みました。
「パリの街路は臭気ぷんぷん」という小見出しがあって、
18世紀のパリの街が汚かった事が書いてあります。
同時代の江戸の方が糞尿のリサイクルシステムが整っていて、はるかにキレイだったとの事でした。
「グランド・ツアー」には、ローマの町も汚かったとあるので、この物語の主従も、
もしかしたらローマでも何かキタナイ系の事件に遭遇するかもしれません。
その時は第5話のように難を逃れられるのでしょうか?
まぁ、ローマへ向かう途中でも、何かその手の話があるのかもしれないのですが。
他に当時のパリがどんなに汚かったかについて書いてある本といえば、
ルイ・セバスティアン・メルシエ(1740-1814)著の「タブロー・ド・パリ」、
日本では岩波文庫で原 宏さん訳の「十八世紀パリ生活誌」(上・下)があります。
もっと手っ取り早く、視覚的・臭覚的にパリの汚さを感じ取りたい方は、
映画「パフューム ある人殺しの物語」をご覧になるといいと思います。
この間レンタルCDショップで貸し出ししていましたが、作者は映画館で見て一度でげんなりして、
もう見る勇気がありませぬ。
いずれにしても、このブログの「品格」を今まで保って来られた水準から下げないように、
この漫画を描くために調べた、参考文献のタイトルや著者については明かしても、
内容についてはあまり深く触れますまい。
作者としては内容が内容だっていうのに、奇跡的なくらいに上品にやってのけている方だと自負しています。
下品な話を優雅に格調高くできる人物で、自分以上の能力を持った人物は今の所出会った事がない
― ってくらいに実は思っていますね。
作者が読んだ最新資料は、今年の7月に読んだ、アルフレッド・フランクラン著
高橋清徳さん訳の「排出する都市パリ 泥・ごみ・汚臭と疫病の時代」(悠書館)
です。
そういやぁ、L.スターンの「トリストラム・シャンディ」にも
パリの汚さについて書かれてある文章がありましたっけ。
第7巻17章なのですが、
Ha ! ― and no one gives the wall ! ― but in the SCHOOL
of URBANITY herself, if the walls are besh‐t
― how can you do otherwise ?
おいよォー!― 誰も壁際を譲りゃあしねぇ!
― でもなぁ~壁中がこうも汚ねぇんぢゃあ、
優雅の養成校ったって彼女にゃね~
― 他にあーたどぅおーできるんだってーの?
・・・だそうです。
多分第5話に出て来たような、各家庭にある壺の中には、糞尿が入り混じっている物もあって、
それを窓から壁に引っかかるような捨て方をしたのが、乾いているのもあれば、まだぐちゃぐちゃなのもありで、
― って事なのでしょう。
ついでに、昔の日本では(おそらく昭和時代後半まで)鳥居印を伴って禁止されていたある事を、
18世紀のパリでは壁や門に向かって、堂々としていたオッサンやオニータン達もいらっしゃったので。
壁から少し離れた地面に投下される壺の中味を避けるために、
女性や身分の高い人へと壁際を譲るのが当時のマナーだったようですが、
壁も汚いんでは意味ないじゃんよ!
「トリシャンの話」をしていたら見なさいよ、品位についてかなり危険水域に近づいて来ましたので、
今日はここでお開きにさせていだだきます。← …って「笑点」みたい。
明日は「第6話予告編」です。