異形の仲間たち見聞録

私が見てきた精神疾患者たち

小説 『ボケ茄子の花 その二十二』

2016年10月21日 00時07分42秒 | 小説『呆け茄子の花』

通院を重ねて、主治医と、やり取りする中で尚樹のなにを見いだしたのか、

「この病院でプログラムの進行役をやって貰えないか?」という

まさに「藪から棒」の主治医の発言に尚樹は面喰らった。

尚樹の根っからの性分である「頼まれたら断れない」ことから承諾した。

毎週土曜日、患者が昼食を食べ終わった後の13時半から90分間の

「言いたい放題、言ったことに意見しない」という

発言者の安全が担保されるプログラムであった。

尚樹はそのプログラムの「差配役」であり、参加者と同じ「発言者」でもあった。

病院からの報酬は、「図書カード1000円分」という

なんだか訳の分からぬ報酬であった。

自宅から私鉄を使って往復440円。

その当時、尚樹は「障害者手帳」を持っていなかった為、

駅に向かうのは、「市バス代往復460円」到底採算の合うものでは無かったが、

その時の尚樹にとって、重要な「お勤め」になり、

その先の「更なるお勤めの前段階」となる事を尚樹の知るところでは無かった。

 

その二十三に続く

 

 

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