二、三ヶ月なんとか出勤しながらも、
「日常」を暮らしていた尚樹が変事を聞かされた。
大きな病院であるので様々な「事業」を展開している中、
尚樹は病院の敷地外にある病院の患者さんが
日常訪れる「授産施設」にも日中勤務していた。
そこには尚樹と「障害者枠」で年齢ではちょうど10歳上で
一ヶ月遅れではあるが同時期に入職した『Tさん』が
勤務していたが、上司から
「今月いっぱいで『ここ』を辞めたいと言ってきているんです。」
と、告げられた。
Tさんは、PSW(精神保健福祉士)という国家資格を有していたことから、
あの部長が直轄する事務所で働いていたが、どうやら業務過多になったらしく、
「この授産施設の勤務を辞めたい」と申し出があった様である。
尚樹は上司と二人で「大変なんですね」と顔を合わせてしばらく話していた。
一ヶ月ほど月日は流れ、部長の直轄する事務所へ用事で出向いたところ、
いつもTさんのいるデスクに居なかったのを見て、
同室のひとに「Tさん居ないんですか?」と問うたところ、
「あ~、なんだかヒドイ風邪らしくて、週の頭から休んでいるんですよ。」とのことだった。
それから数日後にまた同室へ訪ねたところ、
「Tさんは風邪・・・」とのことで不在だった。
尚樹は「インフルエンザかな?」と思い気にもとめていなかった。
そんなことから、数日後に尚樹はひとずてに「Tさんが退職した。」
という尚樹にとっては喪失感が大きいニュースを耳にする。
その四十二につづく