警察・検察の容疑者に対する取り調べの全過程を録音・録画すること、いわゆる
取り調べの可視化は、裁判員が参加する事件と検察が必要と判断した事で実施する
ことが2016年6月に改正刑事訴訟法で成立した。
これはもともと 検察が証拠をねつ造したり、容疑者を執拗に追い詰めて偽りの
自白をさせたりして作成した調書を証拠として裁判に提出することを防ぐ、これを
目的に法改正された。
対象の事件は、限定的だが裁判員裁判の事件と検察が必要と判断した事件でスタート
する。
それが全国の裁判官が集まった議論の中で、現在、検察が先行して取り調べ中の
映像を証拠として裁判に提出して裁判中に映像を流している。裁判官や裁判員が
映像を見て容疑者の表情や態度からの印象で判決の内容に影響が出るのでは
ないかと懸念している。
検察の取り調べの不正を防ぐ目的のために録音・録画するはずだったのが、
映像が裁判の証拠になって被告が不利な状況に追い込まれることもあり得ると
いうことらしい。
取り調べ映像使用に慎重意見=捜査段階の自白、信用判断で-全国の裁判官が議論
時事通信-2016/11/26 以下、全文
容疑者の取り調べを録音・録画した映像の取り扱いに関して、裁判員裁判を担当する
全国の裁判官40人が集まり意見交換した結果、捜査段階の自白が信用できるかの
判断に使うことについて、慎重な意見が相次いだことが26日、分かった。
取り調べの録画は、脅迫や利益誘導がなく、自らの意思で自白したことを立証する
目的で始まったが、最近では客観証拠が乏しい事件で、検察側が自白調書の
信用性を立証するために、証拠請求するケースが増えている。現場の裁判官に、
こうした検察側の姿勢に対する強い懸念があることが明らかになった。
関係者によると、今月中旬に最高裁の司法研修所で開催された裁判員裁判に関する
研究会の中で、取り調べ映像について議論。「調書の信用性を判断するために、
容疑者や取調官の表情や発言の様子を見ることがどれほど必要か、よく考える
必要がある」との指摘があったという。
また、別の裁判官からは「公判中心主義に立ち返った裁判を目指しているのに、
法廷で映像を再生すれば、取り調べを再現する上映会になるのではないか」と
疑問視する声などが上がった。一方で、「調書に比べ、取調官の意図に左右される
要素が少ない」と、有用だとする意見も出たという。
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