秋の褒章に県内から8人が選ばれた。社会奉仕活動に従事した人に贈られる緑綬褒章と、仕事に打ち込んで模範となった人に贈られる黄綬褒章がそれぞれ1人、公共の仕事に尽くした人への藍綬褒章が6人。発令は3日付。

黄綬褒章 瓦葺師・山本政典さん

 東大寺唐招提寺興福寺……。名だたる寺で、修理の度に瓦を葺(ふ)いてきた。生駒市鹿畑町の瓦葺(ふき)師山本政典さん(73)はこの道58年。今も現役だ。

 ログイン前の続き中学を卒業後、民家の瓦葺きをしていた大阪・岸和田のおじのもとで修業した。寺社建築の瓦を手がけ、後に国の選定保存技術保持者になる山本清一さん(85)=生駒市=に、20歳の時に弟子入りした。「文化財は将来に残る仕事。憧れていた」。弟のようにかわいがられた。

 「職人の勘」よりも「正確さ」を大切にする。作業の最初に、瓦の形や瓦を載せた時の屋根の断面などの原寸図を描く。図面を残せば、後の修理に引き継ぐことができる。薬師寺では建物の復元に携わり、平城宮跡大極殿を復元する工事では連日約20人の職人を率いた。

 一番の喜びは、工事が終わり、覆いが外されて瓦屋根が現れる瞬間だ。「思った通りにでき上がった姿を見た時は、職人冥利(みょうり)に尽きる」

 研修場で若手職人の指導をしてきた。もう10年を超えた。「親方は若手の手本となるべきだ」と、今でも現場で先頭に立つ。

 目標は、出土した古代の瓦を研究し、当時の葺き方を図面に描くことだ。瓦葺きで得た知見を、後世に残したいと考えている。(筒井次郎)

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