ひと月経った 子猫たち

猫のマリちゃんは子猫を助ける為にこの家を出たのだろうか。

あのマリは何処で生まれ何故人間が嫌いになったのか判らない。とうとう誰も触ることなく子供を産み放しにして突然いなくなった。目もあけていない子猫を残してである。

誰か近くに猫嫌いが居てさらったと言うのは婆の意見だがそうは思いたくない。同じ様に突然居なくなったミイ助やミナトが可哀相だ。

20年以上も一緒に過ごした夏子・ミナコ・雪子は歩けなくなって、別れる日が近くなると物置の一番奥の段ボ－ルの中で静かに息を引き取った。自分の死に場所を探す様が3日前頃から判っていたから用意してやったのだった。

意外と猫は利口な生き物だ。多分、小さい身体で6匹の子供を生んで身体が弱っていて乳も出なくなっていたのかも知れない。そんなことでこの子猫達はやはり人間に預けねば決意して、自ら去って行ったのだろう。そして何処か知れない秘密の場所で息を引き取ったのだろう。そう思うことにした。



◎
この子猫は精悍な顔つきで仕草も素早い。眼の色がダ－クブルーなのも良いが残った4匹は全部♀と診断されている。


◎
この子は毛がふさふさしている。愛くるしくて最初にトイレを覚えたらしい。孫娘はポ－ポ－と呼ぶことにしたらしい。爺が毛がふさふさしているからフサコと言ったら孫息子ともめ出した。「夏に生まれたから夏子・白いから雪子・ミイと泣いたからミイ助」「名前は簡単に付けてはいかん！」「自分の名前は考えて付けて呉れたのだろう・・意味があって付けたのだろう」と一歩も引かない。今日聞いた所によると蘭子になったらしい。今、住処になっている背の高い段ボ－ルが愛知の嫁が 母の日にプレゼントに送ってくれた胡蝶蘭の箱だからそうだ。爺も納得した。


◎
ホウ酸と目薬を買ってきて目を洗ってやった。眼は猫の命だと婆は云って付き切りで世話をしている。トイレも作ってやった・・・躾けも肝心と面倒を見ている。お陰で2匹は里子に出して、1匹は予約を貰った。今日は見合い写真を撮ってくれと頼まれてサ－クルの仲間にお願いするとのことだ。残りは3匹・・・我家にはどれが残るのやら。



◎
先週末、熊本の孫二人がやってきた。連休前までは公園の下の農水路でフナを釣るのが楽しみだったが今はこの子猫等に会いに来るのが目的らしい。ところが、2匹いないのに気がついて泣き出した。取り戻してくれと泣き出したのだ。
爺が小さい頃、子犬が産まれて楽しく育てていたが、学校から帰って来たら1匹居なくて、休みの日に実家の前の川の上流の山田村まで当ても無く探しに行ったことを思い出して苦笑した。マリは楽しみと問題を残してしまったようだ。



◎
この子猫たちが自分の眼で母親を探した時そこに居たのは婆ちゃんだった。優しい声をかけてお尻りを拭いたり、ミルクを飲ませてくれた。だから婆ちゃんのエプロンの匂いと感触が大好きらしい。煩く泣いていてもエプロンを段ボ－ルに入れてやると安心して眠ってしまう。


◎


◎遊びつかれて　お昼寝の時間