名家俳句集 宝井其角
其角発句集 冬之部 一
塚本哲三 著 坎穿久臧 考訂 昭和十年刊
神無月ふくら雀にまづ寒き
高砂や禰立宣の湯治の神無月
玉津島にて
御留主居に申しおくなりかみな月
高野にて
卵塔の鳥居やけにも神無月
東には祗園清水とうたへば
揚弓に名のる女や紳無月
神の旅酒匂は橋と成りにけり
家々の留主居よろなり大社
あれ聞けと時雨くる夜の鐘の聲
鷺からす片日がはりやむらしぐれ
しぐるゝや葱臺のかた柳
遊 金閣寺
八畳の楠の板間をもるしぐれ
蓑を着て鷺こそすゝめ夕時雨
むらしぐれ三輪の近道ちたづねけり
釣柹(かき)の夕日にかはる北しぐれ
芭蕉翁 病床
吹井より鴫をまねかむ時雨裁
飼猿の引窓つたふしぐれかな
時雨痩せ松私の物干にと書けり
時雨もつ空の間にあへ酒のかんといふ人に
しぐれ来る酔や残りてむら時雨
大麻寺奥の院にて
小夜しぐれ人を身にする山居かな
松陰の硯に息をしぐれかな
三尺の身を西河のしぐれかな
本多総州公に侍坐しける夜
村雨とひとしく蝙蝠の鳴くに発句せよとあるに
蝙蝠や柱(ず)を捻りたる一しぐれ
守山の子にもりを葺く時雨かな
夢よりか見はてぬ芝居むら時雨
柴はぬれ牛はさながら時雨哉
神鳴のまことになりし時雨かな
今熊をしぐるゝ頃はあれぞかし
國阿の檜
我山は足駄いただく時雨かな
よそに名たつるからさきの松
しぐるゝやありし厠の一つ松
おもしろき人をよび出す時雨哉
島むろで荼を申すこそしぐれ哉
松原のすきよを見する時雨かな
ばせを翁終焉の記に
なきがらを笠にかくすや枯尾花
同年忌に 三句
しぐるゝやこゝも舟路を墓まゐり
七とせと知らすやひとり小夜しぐれ
辰霜(あさもじ)や鳳尾の印のそれよりも
達摩忌や自剃(じそり)にさぐる水鏡
文有 略
凩よ世にひろはれぬみなし栗
こがらしとなりぬ蝸牛のうつせ貝
こからしや沖より寒き山のきれ
凩に氷るけしきや狐の尾
木仏や瀬多の小橋の塵も渦
曲翠と幻住庵のあとを尋ねて
まぼろしもすまぬ嵐の木の葉かな
しばらくもやさし枯木の夕づく日
からびたる三井の仁王や冬木立
冬木立いかめしや山のたゝすまひ
霊山のみちにて
かまきりの尋常に死ぬ枯野かな
画 賛
松一木乞食の夜着のかれ野裁
捨人やあたゝかさうに冬野ゆく
芭蕉翁を見送りて
冬がれを君が首途(かどで)や花ぐもり
三日月のをぐらきほどに玄猪(キノコ)哉
何某の家にて御流頂戴のことぶきに
紅葉の下部もあらむゐのこかな
玄猪とや祖父のうたふ枝折萩
くろものの代々の玄猪にかへり花
帰花それにも敷かむ筵切れ
牛島新五郎上京(歌舞伎役者)
鉢の木の扇わらふなかへり花
坊主小兵衛の道心に
坊主小兵衛坊主と帰り花
口切や袴のひだに線葡蔔
爈開や汝を呼ぶは金の事
朝叟老父七十の賀に
白川の浪かゝとばや桐火桶
埋火の南をきけばきりぎりす
うづみ火に…トやく人は薫す
埋火や土器かけていじり僥
閉居安慰
へら鷺の爐を残さぬや灰ぜせり
寝ごころや炬燵ぶとんのさめぬうち
炬燵のうたゝ寝夢に真桑を枕とす
周防殿は才ある人にて政事行はるゝに一生非なしひなきをめでて
板倉殿と申すとかや此の中より錢を袷ひて
こたつから青砥が錢をひろひけり
松風や爈に富士を僥く西屋形
侘びにたへて一爐の散茶気味ふかし
さびしさはひとり我住むほいろかな
片手打落しねろ火鉢を幸の物我とて
忠度と灰にかがれし火鉢かな
名も忠度といふべしこれに対して
炭とりに鏡のぬけし手樽哉
炭焼のひとりぞあらむ荼のきは
炭竈や鈴木亀井が軒のまつ
炭竈やおほろの清水鼻を見る
すみがまや煙をぬけば猿の聲
かた炭もその木の葉より発りけり
炭屑にいやしからざる木の葉かな
新 宅
竹の場の小庭なるべし炭俵
とてもならかのI車とのゐずみ
茶の幽居炭の黒人を佗名なり
蚫(あわび)のうつせ貝を盃にして
都烏と名づけたるによせて
炭うりは炭こそはかれ都鳥
眞炭割る火箸を斧の幽なり
表えびす十九日から見えぬなり
大黒のうせたる家にて
酔さめて大黒出でむ夕えびす
まな板に小判なけけり夷講
嵯峨山や都は酒のえびす講
打鎰に鰒(ふぐ)も恵比壽の笑かな
法霊寺老僧春色と聞こえたり
源氏もや季吟(きたむら)の家の蛭子講
福天に床机にするや仕切帳
子は衣装親はつねなり恵比須講
幻住庵にて
鼠にもやがてなじまむ冬籠
蕗のたう其根うゑおけ冬がまへ
つくづくと壁の兎や冬ごもり
霜月朔日の例を
諸人や嵐芝居を冬ごもり
顔見せや曉いさむ下邳(げひ)の橋
何よけむ藻魚はた白冬ざかな
閑(すづか)さや二冬なれて京の夜
帆かけ船あれや堅田の冬けしき
此木戸や鎖(じょう)のさゝれて冬の月
山鳥の寝かぬる聲に月寒し
人を見む冬のはしゐもタ納涼
冬川や筏のすわる草の原
住吉にて
蘆の葉を手より流すや冬の海
憎まれてながらふる人冬の蝿
立 厩
冬持の足下をかけむなるとぜめ
冬来ては案山子にとまる烏かな
關守の紙子もむ矢か手束弓
1
縫ひかIる紙子にいはむ嵯峨の冬
むかしせし嶽の重荷や紙子夜着
紙子若てわたる瀬もあり大井川
紙子きてくIり頭巾もみそぢ哉
目ばかりを気借頭巾の浮世かな
朝あらし馬の目で行く頭巾哉
おき出でて事しけき身や足袋頭巾
榜人のための切とて火打かな
大町新宅
水仙や飽ついでの小島豪
水仙になほ分けゆくや星月夜
伺求老人の手向
山荼花や鶏もれたるお盛もの
二五六
對 友
内蔵の古酒をねだるや室の梅
園より大工めしけり室のうめ
朝鮮の妻やひくらむ葉人參
玄賓を世に見るさまか干菜資
御殿場に馬休めけり大根ひき
お師どのは先づこなれへと大根引
日本の風呂ふきといへ比叡山
茎の刈る蕪をかしやみふめなき
かぶ汁や霜のふりはも今朝はまた
祀蔵がろ鏑のかるさや筑摩汁
文 略
茶の湯にはよだ取らぬなりひさご汁
閑居の糠味噌浮世に配る納豆かな
砧つきて又の寝覚めや納豆汁
遠水三十五日
おほふ哉覚まさぬ袖を納豆汁
つみ綿に兎の耳を引き立てよ
金蔵のおのれと唸る霜の聲
鬚の霜木賊の一夜枯れにけり
紫香楽の火洞にあらば霜の聲
貞佐新宅
この宿を御師もたずねて杉の霜
酒くさき蒲團剥ぎけり霜のこゑ
妙舟童女を葬りて
霜の鶴土にふとんも被されず
宗隆尼みまかり給ふ年
?逢ひにかゝる命や瀬田の霜
野々宮の藪陰に槌の音しけるに
鍬鍛冶に隠者たづねむ畑の霜
はつ霜に何とおよるぞ舟の中
石菖の露も枯れ葉や水の霜
播州の僧をいたむ
栗めしの焦けて匂ふや霜の聲
あな寒しかくれ家いそけ霜の蟹
山犬を馬が嗅ぎ出す霜夜かな
螻(けら)の手に匂ひのこるや霜の菊
ふれみぞれ柊の花の七日市
みぞれにも身はかまへたり池の鷺
宿僧鳥
あられなし閼伽の折敷に冬菜哉
取次へあられをはじく長柄かな
武蔵野や富士の霰のこけどころ
海へ降るあられや雲に波の音
みがかれて木賊に消えゆる霞蔵
市川三升を祝す
みつますやおよそ氷らぬ水の筋
瀧幅や氷の中にゐざり松
閑倚橋
うすらひや鐙長なる僑ばしら
煮凍(にこごり)や簀子の竹のうすみどり
長屋割付られし人の有明の月に
酒売皆不許入内とてなきあかしたり
水窓の網手もきるゝ氷柱かな
柳寒く弓はむかしの憲清なる
夢なほ寒し隣家に姶をかしぐ音
たかとりの城のさぶさや吉野山
使者ひとり書院へ通るさぶさ哉
父が腎師なれば戯に
魨汁(とんじる)にまた本草のはなしかな
河豚あらふ水のにごりや下河原
人妻は大根ばかりをふくと汁
生煮をふぐといふなりふくと汁
世の中に舅をよぶや河豚汁
ふけゐの浦打めぐりて
魨ひとつ捕へかねたる綱引かな
ふぐ汁や祝言のこす能もどり
妻ならぬ鰒(あわび)なうらみそ小夜衣
鐵砲のそれと響くやふくと汁
手を切ていよいよにくし魨の面
詩人ゆるせ松江の鰒(あわび)といはむに
鯖にこりず松魚にこりず雪の鰒(あわび)
鮟鱇(あんこう)をふりさけ見れば厨かな
足袋うりやたびかさなれば學鰹(まながつを)
蠣(牡蛎)むきや我には見えぬ水かがみ
鯉ひとつあじろの夜のきほひ裁
梅津某秋田へ発駕を送り侍りて
こゝに呑む座敷しつらへ網代守
網代やに心太屋の古簾
夜興曳(よこうびき)盗人犬や龍田山
犬引で豆腐狩り得たり里夜興
衿巻きの松にかゝるや三穂の海
市隅の佗人に
宮藁屋はてしなければ矢倉賣
松永貞徳翁五十年忌
帯ときも花たちばなの昔かな
霜月廿七烏候于黄門光圀卿(水戸光圀)之
御茶亭題ス周山之佳景ニ硝子の御茶屋
水の工み酔顔清し氷荼屋
清水寺音羽
桜精舎梢や千々の雪ざかり
耕作の御茶屋
根深ひく麥の早苗やあやめ草
黒木の御茶屋
我や賤牛に雪吹く黒木茶屋
藤 棚
藤茸やあられにやどろ不破庇
西行堂
炭や岩間こかしの清水とくとくと
唐 橋
長橋やせたにあひ見むふぶき松
八はしの花のかほよきを恥て
坊主かけ月にも冴えよ御川水
河原書院
八千代とぞ河原御館の御千鳥
西 湖
詩をあさろなるらむ雪の樽小舟
右十章
越後屋の算盤過ぎて小夜ちどり
啼く千鳥いく夜明石の夢おどろく
むら千鳥その夜は寒し虎が許
心をや筌(うけ)にゆらるゝ浦ちどり
浦鵆さこそ明石も大神鳴
しほ擔や投げてたゆたふ磯千鳥
よき日和に月の景色やむら鵆
妹が手は鼠の足か小夜鵆
人丸講 月継
沖の帆も十はたみそや浜千鳥
氷にも蓋とじよ鴛(エン おしどり)の中
十石は鴛につくなり竜安寺
瀧口や思ひすてゝも池の鴛
夜学感
鴛氷る夜や蜉蝣燈盞に羽を閉ぢて
揚屋の外邊に鴨の毛を引くを見て
鴨の毛や鴛の衾の道ふさげ
盬汲みの猪首も波のかもめ哉
菰(まこも)一重わぶ乞食のぬくめ鳥
めづらしき鷹わたらぬか對馬舟
京なる人に案内して
ゑぼし着た船頭はなし都どり
町神楽店の日蔭をかつらとし
ひたち帯のならはしなど思ひよせ侍りて
たれとたが縁組すんで里神楽
夜神楽や鼻息しろき面のうち
はつ雪や犬のつら出す杉の垣
初雪に此小便は何やつぞ
智恩院町にやどりて
はつゆきに眞葛が原の妾かな
初雪に人ものぼるか伏見ぶね
はつ雪や赤子に見すろ朝朗
初雪や雀の扶持の小土器
はつゆきは盆にも心べきながめ哉
初雪やうちにゐさうな人は誰
めづらしい物が降ります垣根かな
人も来ぬ夜の獨酌
はつゆきや十にな心子の酒のかん
或御方より雪見に迎へさせ給ふ馬上にて
初雪に牧やえられて無事なやつ
楠の銅壹四間に一間とかや萬客の唇をうろほせば
はつ雪や湯のみ所の大銅壷
市中閑
はつ雪や門に橋ある夕まぐれ
雪買に雪を沽(賣)らばや鶴の雪
清水修行にとまりで
むかしたれ雪の舞豪の日の気色
雪の日や船頭どのの顔の色
馬士(うまかた)に貧しきはなし雪の宿
寒山の讃
寝る恩に門の雪はく乞食かな
我雪とおもへば軽し笠のうへ
門といふ字を得て
馬に炭さこそはたゝ雪の門
賀茂川にひとむれとよみたるを
釈迦とよぶ頭も雪の黒木かな
芭蕉空庵を訪いて
衰老は簾も明けず庵の雪
官城御普請成就して
諸家褒美を給わりける
陪臣は朱賣臣なりゆきの袖
軍兵を炭圓でよつや雪つぶて
まつの雪蔦につらゝの下りけり
前といふ字にて雪の句
叡覧の人になりつゝ今日の雪
出口にて
きぬぎぬに犬をはらふや袖の雪
すてゝあるといふ小歌か句の題にして
おもはめや捨ててあらかは雪の宿
腸を鹽にさけぶや雪の猿
饂飩(うどん)屋へゆく念佛なり夜の雪
文 略
黒塚のまことこもれり雪をんな
埋木のふしみ勝手や雪の友
雪の日は聲ばかり賣る黒木かな
不二の烟のかひやなからむとの御製をよくよく了簡せばふし
無念に思ひ浅間を討ちぬべきものとかく作を
麁相に極めおいて浅聞がうらみ成べしといひて
諷(うたひ)にてあさまになりぬ富士の雪
青漆を雪の裾野や丸合羽
富士うつす麦田は雪の早苗かな
奈良茶の詩さこそ慮仝も雪の日は
抜き出してゆき打拂ふ柄ぶくろ
雪おもしろ軒の掛け茶にみそさゝい
秘蔵の鶉の落ちたるををしめる人に
黒染に御弔や雪うづら
朝ごみや月雪うすき酒の昧
雪にとへばかれも蘇鐵の女なり
雪 窓
損料の史記も師走の螢かな
書出しを何と師走の巻柱
秋にあへ師走の菊も麥ばれけ
大小の唫 元禄十年
こ 同 六 K J
大庭(二)をしろ(四六)くはく(八九)霜師走哉
荷よばりの小坊玉にこそ師走ごゑ
化けながら狐まづしき師走かな
不分當春作病夫
酒ゆゑと病をさとる師走哉
新堰にて喰うふやうに師走かな
ありがたき親の悋気もしはす哉
山陵の壹分をまはす師走かな
千鳥たつ加茂川こえて鉢たゝき
ことごとく寝覚めはやらじ鉢敲
伊勢島をにせぬぞまこと鉢敲
あかつきの筑波にたつや寒念佛
寒念佛橋をこゆれば跡からも
酒飯の飲酒はいかにかんねぶつ
南都にあそべふ時
寒聲や南大門の水の月
並蔵はひびきの灘や寒造り
極 寒
さだめよの遺精もつらし寒の水
漫成五倫
君臣有義 家の子等けふを忘ろな年忘
父子有親 魨計や憎き嫁にはなほくれじ
夫帰有別 鉢敲めをと出ぬもあはれなり
長幼有序 はかま着は娘の子にも袴かな
朋友有信 君と我爐に手を反すしがなかれ
極月十四目日 西吟大坂へのぼるに
いそがしや足袋賣にあふ宇津の山
節季ゟや口を閉ぢたるわたし舟
元日を起すやうなり節季候
節季ゟは左の耳になると哉
煤はいて寝た夜は女房めづらしや
すゝはらひ暫しと侘びて世捨て蔵
童にはしころ頭巾やすゝはらひ
忠信が芳野じまひや煤彿
閉窓に羽箒をめでて
煤ごもりつもれば人の陳皮かな
鼻を掃く孔雀の玉や煤ごもり
辰之劾に申す
すゝはきや諸人がまねる鎗踊
寒苦鳥明日餅つかうとぞ嗚けり
餅花や灯りたてゝ壁のかげ
餅と屁と宿はきゝわく事ぞなき
震威流火しづまりて
妹が子や薑(椒 はじかみ)とけてもちの番
女子疱瘡しける家にきげんとりて
餅の粉や花雪うつる神の咲(笑み)
弱法師(よろばふし)わが門ゆるせ餅の花
としの市誰をよぶら羽折どの
梟(ふくろう)よ松なき市の夕あらし
鰤(ぶり)荷ふ中間どのにかくれけり
行露公萬句御興行巻軸
満代の〆をあげけり神楽帳
揚屋に酔房して
戀の年差紙籠をさらへけり
戀の年差紙籠をさらへけり
詩商人年を貪る酒債かな
いざくまむ年の酒屋の上(うへ)だまり
行く年も板戸めでたし餅の跡
ゆくとしに唾はくらむ鏡とぎ
座右銘
行く年や壁に恥ぢたる覚えがき
ゆくとしや貉(むじな)評定夜明まで
やりくれて又や狭筵としのくれ
行幸の牛あらひけり年のくれ
小傾城行てなぶらむ年の暮
鳩部屋のタ日しづけし年のくれ
子をもたばいくつなるべき年の暮
千観の馬もせはしや年のくれ
年中の放下みえけり年の暮
ばせを翁はてのとしは堅田のゆかり伊賀のしるべ
おもひの外になりぬるをわびてうつの山より人々に申遣はす
おきずてに笈の小文や年のくれ
流るゝや千手陀羅尼の年の垢
流るゝ年の哀世に白髪さへ物うき
年の瀬やひらめのむ鵜の物おもひ
臘兎五つの子を産めり樊中にやしなはれて
若草にかけらむ事を祝ひて
年をとろ兎に祝へ熬(煎)らぬまめ
駿洲久能の別當さんざめかして御通あるを
ゆゝしさや御年男の旅すがた
豆をうつ聲のうちなる笑かな
三升所持 鐘馗の自画賛
今こゝに團十郎や鬼は外
乾元の節分
長き夜の遠くてちかし得方丸
とし越やただ業平の御袖ひき
乗物の中に眠沉て
年忘れ?伯倫は負ぶはれて
乳母ふえてしかも美女なし年忘れ
千山宅年忘れに
割りすそや八乙女神楽男より
御玄関より破魔矢を数へ奉りて
誰いふとなしに大殿としわすれ
大晦日ねいつたうちが年わすれ
聖 代
鶴おりて口こそおほきに大晦日
雑の部
尋牛 闇の夜は吉原ばかり月夜かな
呼牛 呼子鳥あはれ聞てもきかぬ哉
隠牛 夏の夜は寝ぬに疝気の起こり鳧
貧牛 二朱判や取るがうへにも年男
廻牛 小便も筧(かけい)にあまる五月かな
番牛 ほとゝぎす晩傘を買わせけり
半牛 何となく冬夜隣を聞れけり
無牛 きりぎりす枕も床も草履哉
送牛 さめよとの千手陀彌尼や霜の聲
老牛 けふも又温飩のはひる時雨哉
於冠里公 各題五色梅 黒
黒梅や花のしらべのかけちがへ
村雨のとぎれ/\や曽根の松
天智天皇
うちをさむ入鹿が首四海波
文化十一年甲戊
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