達也に出会ったのは一時帰国していた兄の家族を送りに行った空港だった
空港にはトラウマがあるので、本当は送りになど行きたくなかったのだが
甥っ子たちにせがまれて仕方なく一緒に行くことになってしまった。
みんなが乗った飛行機を見送った後
不覚にも私の身体は震えが止まらなくなり一人で動けないでいた
そこへ親切に声をかけてくれたのが達也だった
「大丈夫ですか? 顔が真っ青ですよ・・・医務室へ行きましょう」
「いいえ・・・大丈夫です、大したことはありませんから・・・」
そう言いながらも私の身体の震えは止まらず、今にも吐きそうだった。
「とにかくここへ座ってください、水でも買ってきますから」
そう言って立ち去った達也をただただ見つめるしか出来なかった。
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15年前のつらい出来事
私の中にぽっかり空いた大きな穴は、未だ埋めることは出来ず
心配そうな兄の言葉に、心配かけまいと私は気丈に答えた
「もう大丈夫よ」 と・・・
言葉では言っても 心は全く大丈夫ではなく、いつまでたっても立ち止まったままだった
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そんな私を今までより少しだけ和ませてくれたのが達也だった