“どういうこと?”
その言葉ばかりが脳裏に浮かぶ
美咲は達也と私のことを どこまで掴んでいるのだろう?
この二ヶ月ほどは全く連絡を取っていなかったのだが
何か話が出たのだろうか?
何れにしても私から動くことは出来ない
いろんなことが頭のなかでぐるぐると廻る
なにも知らない三人は、まだ美咲や三宅さんの話で盛り上がっている
「そう言えばさ、小西が旦那のことを口にすること自体珍しいよな
アイツら完全に仮面夫婦ってやつだろ?」
「アイツ今だに稲垣とよろしくやってんだろうから
旦那が気づいて逆上したとか?」
「いや、もしかしたら旦那の方も腹いせに浮気やっちゃったりしてな」
「まぁな、何れにしても俺らには関係のない話だ なぁ?真理子ちゃん」
突然佐藤さんにそう言われて誰もがわかるほど私は驚いてしまった
「おい?どうした?今日の真理子は、らしくないね? 大丈夫かい?」
イチロ兄が心配そうにこちらを見つめている
「午後から急に調子を崩したんだろう? お昼に何か嫌なことでもあったのかい?」
鋭い指摘に益々私はびくついて、ついにはその場に座っていられなくなり
「いいえ、特になにもなかったけれど 久しぶりのラウンドにとにかく疲れただけだと思うの
少し外の風にあたってくるわ、調子に乗って飲みすぎたのかもしれない」
そうごまかしながら、席をたった
庭先においてあったチェアに座り空を見上げる
「亮介、助けて・・・ダメねこんな私、
あなたは空の上からきっとこんな私を見て呆れているでしょうね
もう達也とは本当に終わりにしなくちゃいけないわよね」
誰もいない空に向かってひとり呟いた
いつの間にか可愛らしい女の子がそばまで来ていた
不思議そうに私の顔を覗き混んだかと思うと、泣き真似をしたのだった
“え?・・・”と驚いたが、どうやら私は涙をこぼしていたらしく
その子の仕草で自分の涙に気がついたのだった
歩き始めたばかりであろう・・・歩くのがとにかく楽しそうな小さな少女
この子はイチロ兄の三番目の子で
上の子達とは少し年が離れて出来た女の子
総太郎おにいちゃまのところに三人目が出来たといっていた頃
同じように志穂さんのお腹にも新しい命が芽生えていた
それにしてもどうしてこんな時間にこの子が?と思っていたところへ
“しおり~”といいながら志穂さんがやって来た
「まぁ、真理子さんがいたのね?この子ったらお客様の気配に眠ってくれなくてね
気を紛らわそうと外へ出てみたのよ、なぜかこちらを気にするので来てみたら・・・」
「あら・・・煩くて眠れなかったのね?ごめんなさいね パパ達盛り上がっちゃってるからね」
いいえ、いいんですよ我が家へ集まるのは久しぶりなんだから
それはそうと・・・真理子さん飲み過ぎ?少し顔色が悪いようね」
栞ちゃんとやって来たのをきっかけに、私は少しの間 志穂さんと話をした。
ご苦労されているだろうと、気遣ってみたが志穂さんは笑って
「それがね、最初は大変だったんですけど
この子が生まれたくらいから急にお義母さまの態度が変わったのよ
上の二人が男の子でそれはそれは喜んでくださったのだけど
その分あれこれと注文が多くて大変だったわ
でも女の子ができたとたん人が変わったようになってね
自分が生むことができなかった女の子を生んでくれたと
この子の誕生にとても喜んでくださって
煩いことはまったく言わなくなったのよ、不思議でしょう?」
普通は、男の子を生むと誉められるって言うけれど
むしろ逆だったわ
そう言えば・・・
あの飲み会の時は、まだ志穂さんのお腹のなかにいることさえ分からなかった
時のたつのは早いもので、達也と出会ってずい分経ったのだ
やはりそろそろ潮時なのだと、この時改めて思いなおし
今夜は思いきって達也に連絡しようと心に決めた