心のままに・・・

実体験をもとに小説仕立てでお話を書いています。
時々ひとりごとも…

あの日見た夢・・・15

2017-10-27 20:12:05 | あの日見た夢


曲者じゃ

遠くからあにさまの声が聞こえる

私は慌てて姫の身をかばうようにして奥へ

階段の下に抜け道がある

とにかくそこへ行かなくては

廊下を右へ

突き当たりに階段がある

角を曲がり

抜け道への小さな扉までたどり着いた

ふっと一瞬気が緩んだ

その時 目の前に黒い影が現れた

手にはきらりと光る鋭い刃が

身を呈して姫をとっさにかばうように前に出る

その時もう一つ黒い影が相手の後ろに現れた

振りかざした光るものがもろくも崩れ落ちる

あにさま

後ろに現れたのは兄であった

早く逃げろ

階段下の扉を開けて姫の手を引っ張りながら走る

走りながら考えていた

私は一体どうしたのだろう

何かが違う気がする

完全に油断していたのだ

あにがいなければ今頃どうなっていただろう

いつもより身体が重い

思うように動かなかったのだ

ここまで来れば大丈夫です

そう言った私を見つめる姫の目からは

涙があふれ出していた

姫は怯えた顔で私の手を握りしめる

大丈夫、大丈夫

そう言って幼子のように泣きじゃくる姫の背中を

さすりながらしばらくの間その場に座り込んでいた