「青い火・赤い火」
昔々、小野寺の殿様がおいでになった頃のことだども。
ある夜、お殿様がお城からなんとなく外をながめていたんだと。
するとそこに突然、青い着物を着た若者があらわれたっけど。
若者は、お殿様の前でかしこまって話しだした。
「オラはおびき沢に住んでいる者だども。夜になるたびに沼の沢の主に
攻められて なんとも生きた心地がしねんす。お殿様は弓の名人と
聞いてお願いに あがったんだすども。なんとかその敵どご
得意の弓矢で 退治してたんせ」
そして何度も何度も 頭を下げて頼むわけだ。殿様は、弓矢の名人と
言われて 黙っていられねかったべさ。次の日さっそくでかけたど。
夕方になって、ようやくその沼に着いた。いよいよ夜になって
暗くなってくると、むこうから ゆらゆらと赤い火が近づいて来たど。
これかと思って見ていると、今度は沼の中から青い火が燃え上がったかと
思うまもなく 火と火の激しい戦いになったものな。
殿さまは、「オラは青い火、敵は赤い火だんす」という
若者の言葉を思い出し、赤い火に目がけて「ハッシ」と矢を射たと。
すると「ギャッ!」というすさまじい声がした。と同時に
赤い火は消えてしまったど。それから息を殺して見ていると
やがて青い火も静かに消え、沼は暗闇に包まれてしまったど。
次の日殿様がお城に戻ると、また青い着物の男が現れて
「これで安心して暮らせるんす。おらに出来る事なら何でも
するから、願い事を言ってたんせ」そこで殿様は言ったわけだ。
「私の領地は水の便が悪い。そこで日照りの時は雨を降らせて欲しい」
「わかったんす。その時には朝月山に向かって、弓の弦を
3回鳴らしてたんせ」 若者はこう言うと姿を消したんだと。
さて、次の年の事。日照りが続いて 田の水も干上がり 村中たいした
困ったと。殿様は若者の言葉を思い出して、神様に祈ると
朝月山に山に向かって、引き絞った弓で 3回弦を強く鳴らしたと。
するとたちまち朝月山の上に もくもくと黒雲が出て来て
どっと大雨が降りだした。田畑は生き返り村人は大喜びしたそうだ。
ところで、この青い着物の若者は、おびき沼の大蛙(おおびっき)で
赤い火は沼の沢の主の大蛇だったんだと。「おおびっき」の住んでる
所だから「おびき沢」という名前がついたというわけだ。
とっぴんぱらりのぷう (湯沢地方に伝わる民話)
敷地の花が咲きました
こんな時ですから。気休めにでも楽しんでくだされば
うれしいです。 コメント閉じてあります。