この世で一番、苦手で嫌いなこと・・・それは筆で字を書くということ。
色々な式に招待されて受付で芳名帳を見ると、私は一瞬、ギョッとしてしまう。
最近では、サインペンが用意されているから、まだマシだけれど筆しか置いてなかったら、冷や汗もので帰ろうかと思ってしまう。
私は筆で字を書くのがすさまじく下手なのだ。
その昔、幼馴染の結婚式での受付では、彼女の、お母さんが私の書いた字を見て
「あら!まぁ~!!」っと絶句したくらいである。
受付の人がこちらの名前を確認するのに、じっと手元を見ていると思うと、手はますます、こわばってくる。
そしてその結果は、ただでさえ、下手なうえに、緊張が加わり、ぶるぶると震えた情けない筆文字が、みっともなく並ぶこととなる。
まだ自分ひとりが書くのなら良いが、何人かの字が並ぶと、もう最悪。
どうしてこんなにも上手に書けるのかと憎たらしくなってくる達筆の人々の中
私の字だけ、幼稚園児の字なのだ。
この頃は受付で字の下手そうな人を狙って後ろに並び、自分の悪筆を目立たせないように努力はしているのが、たまに予想が外れると、墓穴を掘るハメになってしまう。
でも、でも、これでも小学校の時、習字の成績は5だった。
先生が「字がうまいとか、下手とか考えないで、子供は大きく字を書けばいいんだ」と言ったので私は手を振り回して紙から、大きくはみだすような字を書いていた。ところが受け持ちの先生が変わった途端に、バカでかい字は駄目と言われ
いっきに点数は2に転落。
その報いか、今になっても、このザマ。会が終わって受付の前を通る時、芳名帳に残っている自分の墨団子のような字が残っているかと思うと、名簿帖そのものを、かっぱらって帰りたくなる自分がいる。
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