ぼろぼろな駝鳥
高村光太郎
何が面白くて駝鳥を飼ふのだ。
動物園の四坪半のぬかるみの中では、
脚が大股過ぎるぢゃないか。
顎があんまり長過ぎるぢゃないか。
雪の降る国にこれでは羽がぼろぼろ過ぎるぢゃないか。
腹がへるから堅パンも食ふだらうが、
駝鳥の眼は遠くばかりみてゐるぢゃないか。
身も世もない様に燃えてゐるぢゃないか。
瑠璃色の風が今にも吹いて来るのを待ちかまへてゐるぢゃないか。
あの小さな素朴な頭が無辺大の夢で逆まいてゐるぢゃないか。
これはもう駝鳥ぢゃないぢゃないか。
人間よ、
もう止せ、こんな事は。
悪意はなかったのだろうと理解はするが、人間のやっていることは、時代が変わっても、あんまり変わっていないのか・・・
移動動物園から乗馬クラブに預けられる途中でパニックになって脱走・・。
シマウマは野生が強くて、家畜化されたウマとはまったく違う。たやすく飼いならすことはできない。
せつない結末に、涙が出た。
脱走シマウマ、麻酔で倒れ池でおぼれたのが死因