好調サムスンに潜む死角 株価急伸で利益確定売り懸念
日経
2.8兆円配当計画で投資家引き留めに躍起
2017/10/31 14:26
- 情報元
日本経済新聞 電子版
【ソウル=山田健一】
韓国サムスン電子は31日、2018~20年の年間配当を9兆6000億ウォン(約9600億円)とし、17年計画比2倍に引き上げると発表した。
半導体がけん引する好調な業績を背景に同社の株価は1年間で7割近く急伸。
その反動で利益確定の売りを探る投資家を引き留めたい思惑が透ける。
株主還元と事業投資の配分も難しく、18年は株価の維持に苦心する公算が大きい。
サムスンは同日午前、17年7~9月連結決算とともに18~20年の株主還元策を取締役会で決議。
3年間に計28兆8000億ウォンを配当に充てると決定した。
同社の年間配当は16年が4兆ウォン、17年計画は4.8兆ウォン。
大幅増配について、李相勲(イ・サンフン)最高財務責任者(CFO)は「株主価値の向上に最善を尽くすため」と説明する。
韓国最大の財閥を事実上率いる李在鎔(イ・ジェヨン)副会長が16年10月に経営に法的責任を負う取締役に就いて以降、サムスンは株主還元を積極的に進めている。
17年は、配当と別に9兆ウォン超の自社株買いを実行中。
自社株買いは18年以降も取り組むとみられ、今後3年間の株主還元は28兆8000億ウォンを大きく上回る見通しだ。
配当原資を生む本業は好調だ。
17年7~9月期連結決算の確報値は、営業利益が14兆5300億ウォンと前年同期に比べ2.8倍近くに急増。
四半期ベースで過去最高益を更新した。
主力の半導体メモリーの価格上昇が増益要因。
データセンター向けの引き合いが強く、供給が需要に追いつかない。
韓国・有進投資証券の李承禹(イ・スンウ)常務は「10~12月期もメモリー単価は上昇する」と話し、「半導体事業の成長は少なくても18年までは続く」と予想する。
株主還元策と好決算の2つの好材料が出た31日の韓国市場では、サムスン株が前日終値比1.9%高い275万5000ウォンまで一時上昇した。
株式時価総額は400兆ウォンに迫り、日本株で最高のトヨタ自動車の約1.7倍の水準で推移する。
株高を支えるのは外国人投資家だ。
昨年10月に50.7%だった同社株に占める外国人投資家比率はこの1年で53.4%に拡大した。
10月に取引された15日のうち、外国人投資家の買い越しが10日と売り越しの2倍に達するなど、
足元はサムスン株を物色する動きが優勢だが、高値警戒感から今後の材料次第で反転するリスクも高まっている。
「本当はもっと多額の数字を打ち出したかったはず」。
大手証券のアナリストは、17年通期に15年実績(25兆ウォン強)を上回る過去最高の設備投資計画(46兆ウォン強)を固めたことで、「17年の配当額は当初計画より削られた」と分析する。
サムスンは公式に認めないが、相次ぐ株主還元は、朴槿恵(パク・クネ)前大統領とその友人を巡る贈賄の罪に問われた李氏の醜聞で悪化したイメージを和らげる狙いがある。
同氏は一審で懲役5年の判決を受け控訴中。
18年は、外国人投資家の動向と会社のイメージ、そして事業投資と資金配分の3つのテーマに目を配りながら株主還元に神経を張り巡らせることになりそうだ。
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