元徴用工判決では「司法を尊重」と言っていたのに……最側近逮捕で見えた文政権の傲慢さ
2/2(土) 11:00配信
文春オンライン
元徴用工判決では「司法を尊重」と言っていたのに……最側近逮捕で見えた文政権の傲慢さ
「10・30(元徴用工が原告の最高裁判所の判決)では、文在寅大統領も与党(共に民主党)も『司法を尊重する』という立場を明らかにしていた。
それなのに身内が逮捕されたら、与党は判決を不服として、『裁判官を弾劾する』と言い出した。これじゃあ、李明博、朴槿恵の保守政権となにも変わらない。
進歩・革新の仮面をつけた、ただの傲慢な権力者ですよ」(与党寄りだったという40代の会社員)
.
「ドルイドキング」事件で明らかになった身内擁護に必死の与党
ことの始まりは、1月30日。
この日、インターネットで不正に世論操作を行ったとされた一審裁判で、文大統領の最側近といわれる金慶洙現慶尚南道知事に懲役2年が言い渡され、金知事は法廷で拘束された。
この疑惑は、通称「ドルイドキング」事件と呼ばれ、昨年春からくすぶっていたもの。
金慶洙知事は主犯の時事ブロガー、ハンドルネーム「ドルイドキング」こと金ドンウォン氏との関与を否定していたが、共犯と判断された。
「ドルイドキング」事件の詳細は後述するが、物議を醸したのは判決よりも与党「共に民主党」の裁判への反応だ。
与党は実刑判決が出るとすぐに「これは裁判所の要職を掌握しているヤン・スンテ(前最高裁判所長官)の一派が組織的に抵抗している」(中央日報2月1日)と「判決不服」を表明し、
緊急会議を開くと、「司法ろう断勢力および積弊清算対策委員会」を立ち上げた。
なんとも物々しい名称だが、つまり、裁判所が、朴槿恵前大統領時代に元徴用工裁判を遅らせるなどの職権乱用で逮捕されたヤン・スンテ前最高裁判所長官の報復をしているというのだ。
さらには判決を下した裁判官を「弾劾すべき」とまで踏み込み、こうした与党の過剰な反応にメディアは保守・進歩系問わず一斉に猛反発。世論を巻き込んで論争になっている。
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与党議員の口利き疑惑や違法投資……支持率回復は「厳しい」
中道の韓国紙記者は言う。
「10・30判決では司法を尊重する、韓国は三権分立で司法に政治は介入できないとしていた文大統領や与党でしたから、今回も司法を尊重する立場を明らかにするものと思われていたし、そう期待されてもいた。
それが刑が最終的に確定しない一審判決なのにこの体たらく。あまりにも荒唐無稽です。
最近、与党議員に裁判の口利き疑惑や地方の不動産違法投資疑惑が次々と持ち上がるなどボロが出てきて、進歩・革新のイメージが崩れ始めて嫌気が蔓延していましたが、これで決定的になった。
文大統領はまだ自身の立場を表明していませんが、支持率が下がる中、米朝首脳会談や金正恩労働党委員長のソウル訪問などがあっても、挽回は相当厳しい」
与党のクレームから発覚した、不正世論操作「ドルキング」事件
「ドルイドキング」事件が明るみに出たのは昨年3月。6月の地方統一選挙を控えての頃だ。
事件の発端は、ちょうど1年前、平昌冬季オリンピックに遡る。
当時、北朝鮮の平昌冬季オリンピック参加表明に色めき立った文政権は、
南北合同の目玉としてアイスホッケー女子チームを南北合同チームにすることを発表した。
しかし、これに長年オリンピックを目指して練習を積んできた選手やその同世代である若い世代から反発の声が上がった。
韓国の大手ポータルサイトでは、懸命に練習してきた韓国選手から出場する機会を奪った文政権を批判する書き込みが掲載され、その書き込みへ共感を表すクリック数が急増したが、与党側はこれは不正に操作されたことによる急増だとして警察庁に告発。
捜査が始まった。
しかし、まさかやぶへびになろうとは。
捜査の末、昨年3月末に逮捕されたのは、なんと与党党員の金ドンウォン氏だった。
彼は、前述のように韓国では有名な時事ブロガー「ドルイドキング」として知られた人物で、金慶洙知事との関係も発覚した。
金慶洙知事は一貫して金氏との関係を否定していたが、
実際はセキュリティ付きのメッセンジャープログラム「テレグラム」を通じてメッセージを交換していたとされ、
2017年5月の大統領選挙直前まで、文大統領や与党に有利になるようネットの書き込みを操作することを承認し、認めていたといわれている。
また、 裁判では金慶洙知事が金氏にこうしたネット上での不正な世論操作の代償として駐大阪大韓民国領事館の総領事職を提案し、それがうまくいかなかったため、次に仙台の総領事職を提案したとされている。
金慶洙知事はこれらすべてを否定している。金氏は金慶洙知事と同じ日に懲役3年6カ月の実刑判決を受けている。
.
与党は「司法の報復」と主張するが……
与党側は、判決を下した裁判官がヤン・スンテ前長官の秘書室に勤務していたことなどを「司法の報復」の根拠としているが、
担当裁判官はヤン前長官とは仕事上での深い関わりはなく、
昨年7月に朴槿恵前大統領に特殊活動費を受け取ったことが認められるとして懲役8年を言い渡した際は、与党は、「司法の正義」と賛辞を送ってもいた。
「キャンドルデモによって誕生したといわれる文大統領、そして与党だったからこそ期待も大きかったが、結局、デモを利用した権力の亡者に過ぎなかった。
どこに正義があるのか、ほとほと疲れてしまって、支持する政党も見当たりません」(冒頭の会社員)
政治に“正義”を求めるというのもあまりにも浪漫的にはすぎるが……。
昨年10月30日の元徴用工の判決についても国際法が上という原則を守るべき、という声もちらりほらり出てきた韓国。
一方、支持率低迷で彷徨っていた野党第一党の自由韓国党は金慶洙知事の実刑の報にお祭り騒ぎで、文大統領は自身が候補だった当時、ネットでの不正な世論操作に関する報告を受けていたのか明らかにすべしと声を上げている。
それにしても、10・30の元徴用工の判決では「司法を尊重する」と言っていたのが、身内の不都合にはいとも簡単に立場を翻して「司法糾弾」とはいくらなんでもダブルスタンダードが酷すぎる。
このダブルスタンダードが、元徴用工判決を巡る韓国政府の立場にどんな影響を与えるのか、2月は日韓にとって波乱の月になりそうだ。
2/2(土) 11:00配信
文春オンライン
元徴用工判決では「司法を尊重」と言っていたのに……最側近逮捕で見えた文政権の傲慢さ
「10・30(元徴用工が原告の最高裁判所の判決)では、文在寅大統領も与党(共に民主党)も『司法を尊重する』という立場を明らかにしていた。
それなのに身内が逮捕されたら、与党は判決を不服として、『裁判官を弾劾する』と言い出した。これじゃあ、李明博、朴槿恵の保守政権となにも変わらない。
進歩・革新の仮面をつけた、ただの傲慢な権力者ですよ」(与党寄りだったという40代の会社員)
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「ドルイドキング」事件で明らかになった身内擁護に必死の与党
ことの始まりは、1月30日。
この日、インターネットで不正に世論操作を行ったとされた一審裁判で、文大統領の最側近といわれる金慶洙現慶尚南道知事に懲役2年が言い渡され、金知事は法廷で拘束された。
この疑惑は、通称「ドルイドキング」事件と呼ばれ、昨年春からくすぶっていたもの。
金慶洙知事は主犯の時事ブロガー、ハンドルネーム「ドルイドキング」こと金ドンウォン氏との関与を否定していたが、共犯と判断された。
「ドルイドキング」事件の詳細は後述するが、物議を醸したのは判決よりも与党「共に民主党」の裁判への反応だ。
与党は実刑判決が出るとすぐに「これは裁判所の要職を掌握しているヤン・スンテ(前最高裁判所長官)の一派が組織的に抵抗している」(中央日報2月1日)と「判決不服」を表明し、
緊急会議を開くと、「司法ろう断勢力および積弊清算対策委員会」を立ち上げた。
なんとも物々しい名称だが、つまり、裁判所が、朴槿恵前大統領時代に元徴用工裁判を遅らせるなどの職権乱用で逮捕されたヤン・スンテ前最高裁判所長官の報復をしているというのだ。
さらには判決を下した裁判官を「弾劾すべき」とまで踏み込み、こうした与党の過剰な反応にメディアは保守・進歩系問わず一斉に猛反発。世論を巻き込んで論争になっている。
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与党議員の口利き疑惑や違法投資……支持率回復は「厳しい」
中道の韓国紙記者は言う。
「10・30判決では司法を尊重する、韓国は三権分立で司法に政治は介入できないとしていた文大統領や与党でしたから、今回も司法を尊重する立場を明らかにするものと思われていたし、そう期待されてもいた。
それが刑が最終的に確定しない一審判決なのにこの体たらく。あまりにも荒唐無稽です。
最近、与党議員に裁判の口利き疑惑や地方の不動産違法投資疑惑が次々と持ち上がるなどボロが出てきて、進歩・革新のイメージが崩れ始めて嫌気が蔓延していましたが、これで決定的になった。
文大統領はまだ自身の立場を表明していませんが、支持率が下がる中、米朝首脳会談や金正恩労働党委員長のソウル訪問などがあっても、挽回は相当厳しい」
与党のクレームから発覚した、不正世論操作「ドルキング」事件
「ドルイドキング」事件が明るみに出たのは昨年3月。6月の地方統一選挙を控えての頃だ。
事件の発端は、ちょうど1年前、平昌冬季オリンピックに遡る。
当時、北朝鮮の平昌冬季オリンピック参加表明に色めき立った文政権は、
南北合同の目玉としてアイスホッケー女子チームを南北合同チームにすることを発表した。
しかし、これに長年オリンピックを目指して練習を積んできた選手やその同世代である若い世代から反発の声が上がった。
韓国の大手ポータルサイトでは、懸命に練習してきた韓国選手から出場する機会を奪った文政権を批判する書き込みが掲載され、その書き込みへ共感を表すクリック数が急増したが、与党側はこれは不正に操作されたことによる急増だとして警察庁に告発。
捜査が始まった。
しかし、まさかやぶへびになろうとは。
捜査の末、昨年3月末に逮捕されたのは、なんと与党党員の金ドンウォン氏だった。
彼は、前述のように韓国では有名な時事ブロガー「ドルイドキング」として知られた人物で、金慶洙知事との関係も発覚した。
金慶洙知事は一貫して金氏との関係を否定していたが、
実際はセキュリティ付きのメッセンジャープログラム「テレグラム」を通じてメッセージを交換していたとされ、
2017年5月の大統領選挙直前まで、文大統領や与党に有利になるようネットの書き込みを操作することを承認し、認めていたといわれている。
また、 裁判では金慶洙知事が金氏にこうしたネット上での不正な世論操作の代償として駐大阪大韓民国領事館の総領事職を提案し、それがうまくいかなかったため、次に仙台の総領事職を提案したとされている。
金慶洙知事はこれらすべてを否定している。金氏は金慶洙知事と同じ日に懲役3年6カ月の実刑判決を受けている。
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与党は「司法の報復」と主張するが……
与党側は、判決を下した裁判官がヤン・スンテ前長官の秘書室に勤務していたことなどを「司法の報復」の根拠としているが、
担当裁判官はヤン前長官とは仕事上での深い関わりはなく、
昨年7月に朴槿恵前大統領に特殊活動費を受け取ったことが認められるとして懲役8年を言い渡した際は、与党は、「司法の正義」と賛辞を送ってもいた。
「キャンドルデモによって誕生したといわれる文大統領、そして与党だったからこそ期待も大きかったが、結局、デモを利用した権力の亡者に過ぎなかった。
どこに正義があるのか、ほとほと疲れてしまって、支持する政党も見当たりません」(冒頭の会社員)
政治に“正義”を求めるというのもあまりにも浪漫的にはすぎるが……。
昨年10月30日の元徴用工の判決についても国際法が上という原則を守るべき、という声もちらりほらり出てきた韓国。
一方、支持率低迷で彷徨っていた野党第一党の自由韓国党は金慶洙知事の実刑の報にお祭り騒ぎで、文大統領は自身が候補だった当時、ネットでの不正な世論操作に関する報告を受けていたのか明らかにすべしと声を上げている。
それにしても、10・30の元徴用工の判決では「司法を尊重する」と言っていたのが、身内の不都合にはいとも簡単に立場を翻して「司法糾弾」とはいくらなんでもダブルスタンダードが酷すぎる。
このダブルスタンダードが、元徴用工判決を巡る韓国政府の立場にどんな影響を与えるのか、2月は日韓にとって波乱の月になりそうだ。
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