日本と世界

世界の中の日本

「経済制裁論」が単純ではない理由

2019-01-28 17:12:32 | 日記
新宿会計士

※目次 [非表示]

1 「経済制裁論」が単純ではない理由

2 現場レベルで影響が出始めた?

3 日韓は「敵対関係に進まない」?甘い!

4 日韓関係悪化で得をするのは北朝鮮だが…

5 日本は「費用対効果」で「決断」を!

「経済制裁論」が単純ではない理由

昨年12月20日に発生したとされる韓国海軍駆逐艦による火器管制レーダー照射事件を巡っては、韓国政府はいまだにレーダー照射の事実を認めていないどころか、確たる証拠も出さずに「日本の自衛隊機が低空威嚇飛行を行った」とわめいています。

こうした状況について、私は週末の『対韓経済制裁が難しい理由と、日本に求められている「覚悟」』のなかで、

文在寅(ぶん・ざいいん)韓国大統領自身がむしろ積極的に日韓関係を破壊しようとしているのではないか、とする仮説を提示しました。

もしこの仮説が実情を正確に反映していると見るならば、これは非常に深刻な問題です。

なぜなら、レーダー照射事件にしても、昨年10月以降相次いでいる「徴用工判決」にしても、

韓国側の目的が「日韓関係を混乱させ、あわよくば破綻に追い込むこと」にあるならば、日本もそれに対処しなければならないからです。

「日本が韓国にレーダー照射の事実を認めさせて謝罪を引き出すために経済制裁をすれば良い」、という単純な話ではありません。

日本が「国としての意思」を「日韓関係維持」に持って行きたいのか、それとも「最悪の場合、日韓断交やむなし」と覚悟を決められるのか。

その意思によって、日本が韓国にどう対処するかが決まってくるのです。

現場レベルで影響が出始めた?

ところで、レーダー照射事件を巡っては、日本側は先週月曜日に公表した『最終見解』をもって、公式には韓国との協議を打ち切ったことになっています。

しかし、韓国側はその後、「日本の自衛隊機が韓国海軍艦艇に複数回、低空威嚇飛行を行った」などと「逆ギレ」していますし

(『ウソでも良いからとにかく主張する 韓国の飽和攻撃を侮るな』)、韓国国内ではほぼ完全に「レーダー照射」は「威嚇飛行」問題にすり替えられてしまったようです。

こうした混乱が、日韓防衛協力に影響を与えないはずはありません。

昨日も紹介したとおり、日本政府関係者は今春予定されていた海自護衛艦「いずも」の韓国への派遣を見送る方向で検討しているとの報道もあります(次の産経ニュースの記事参照)。

護衛艦「いずも」韓国派遣中止へ レーダー照射問題受け協力縮小(2019.1.26 05:00付 産経ニュースより)

これに加えて、韓国メディア『聯合ニュース』(日本語版)は昨日夕方、韓国海軍司令官の日本訪問が取りやめとなったと報じています。

韓国海軍司令官の日本訪問取りやめ レーダー問題で(2019.01.27 17:32付 聯合ニュース日本語版より)

聯合ニュースによれば、

海上自衛隊と韓国海軍は毎年、司令官級の指揮官が交互に相手国を訪れる交流を行っていたそうですが、

韓国海軍は来月初めに予定していた第1艦隊司令官の京都府・舞鶴海自基地訪問を見送ったそうです。

これについて韓国の「政府筋」は


「現在の状況で司令官が訪日するのは適切ではない/しばらく冷却期間を置く必要がある」(※下線部は引用者による加工)

などと述べたそうです。

余談ですが、この「冷却期間」という言葉は、先ほどの産経ニュースの記事にあった「日本政府関係者」の発言にも含まれていましたが、いっそのこと「冷却期間」といわず「凍結」と称した方が分かりやすい気がするのは私だけではないでしょう。

日韓は「敵対関係に進まない」?甘い!

ところで、レーダー照射事件を契機に日韓防衛協力が滞り始めていることを巡って、行き着く果てが懸念されるところです。

こうしたなか、韓国メディア『中央日報』(日本語版)に本日掲載された記事によると、韓国国内の「安保専門家」が「日韓は敵対関係には進まない」とする見解を述べたのだそうです。

韓国安保専門家「日本の哨戒機事件でも韓国と敵対関係には進まない」(2019年01月28日11時15分付 中央日報日本語版より)

ただ、この手の記事を読めば読むほど、残念ながら、「日韓の亀裂は深まっている」と感じざるを得ません。

というのも、中央日報によると、「峨山政策研究院」の「安保統一センター長」は、レーダー照射事件を巡る日韓対立の要因を「日本側の支持層結集の意図」と述べたからです。

早い話が、「安倍政権は韓国によるレーダー照射事件を政権支持率浮揚に利用しようとしている」、という決めつけ(あるいは言い掛かり)ですね。

そのうえで、この「安保センター長」は


「日本は国内政治的な必要からこの問題を拡大しているが、韓国と敵対的な関係に進もうという考えはないはず」

などと述べているのですが、なかなか凄い分析です(※誉め言葉ではありません)。

そもそも論として、分析を誤れば処方箋も誤ります。

日本がレーダー照射を問題視した理由は、第一に「危ないから」であって、「政治利用」のためではありません。

それなのに、この問題を「自衛隊機の低空飛行」と「国内の政治利用」に矮小化すれば、韓国自身の立場を危うくしかねません。

なぜなら、韓国側が日本に対する敵対行為を続けるならば、日本も韓国を「仮想敵国」と見なさなければならなくなるからです。

日韓関係悪化で得をするのは北朝鮮だが…

日韓軍事協力には、北朝鮮などの軍事的脅威にともに対処するという強い意味がありました。

地政学的に見て、韓国を抑えていれば、

北朝鮮の脅威、中国の脅威、さらにはロシアの脅威にも備えることができる、という側面があることは間違いありませんし、仮に韓国が日本の敵対国となれば、

日本は防衛コストも上昇しますし、社会の様々な面で悪影響が生じます。

もっとも、こうした事情は韓国の側もまったく同じです。日韓関係が悪化すれば、その分、北朝鮮や中国からの圧迫は強くなるからです。

つまり、日韓関係が悪化し、防衛協力が進まなくなることで、いちばん喜ぶのは北朝鮮であり、次に中国が喜ぶ、ということでしょう。


「したがって、日韓関係を破綻させてはならない。」

これが、「日韓関係至上主義者」の発想です。

日本は「費用対効果」で「決断」を!


ただ、ここでもう1つ、強く意識しなければならないことがあります。

それは、「日韓防衛協力」によって日本の脅威が根本から取り除かれるわけではない、という事実です。

日韓は敵対するよりも協力した方が良いことは間違いありませんが、防衛面で韓国と協力することで、

北朝鮮の瀬取りの監視ができるわけでもなければ、北朝鮮に拉致された日本国民を取り返すことができるわけでもない、という点については、無視できません。

このように考えていくと、

日韓防衛協力とは、結局のところ、韓国が日本に対して主張してくる「無理難題」という「費用」を負担しつつ、

中国や北朝鮮を牽制するという「便益」を享受するという意味で、「費用対効果」で考えるべきなのです。

私に言わせれば、確かに日韓軍事協力にはそれなりの意味もあったかもしれませんが、友軍相手に火器管制レーダーを当てて来たうえに、低空威嚇飛行を行ったなどとウソをついて逆ギレするような国を相手にして

「協力関係」が成り立つとも思えません。

「日韓関係悪化で北朝鮮が得をする」?

それはそのとおりでしょう。

ですが、一時的に北朝鮮を喜ばせることになったとしても、やはり、日本が一番に考えなければならないのは「長期的な日本の国益」であって、「日韓友好」ではないのです。

もちろん、「日韓断交」などと軽々しく口にしてはならないことは事実ですが、少なくとも韓国は「友好国」ではなく、

「仮想敵国」に位置付けるべきです。その判断と決断こそが、現在の日本に求められているのではないでしょうか?


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