勝又壽良の経済時評
日々、内外のニュースに接していると、いろいろの感想や疑問が湧きます。それらについて、私なりの答えを探すべく、このブログを開きます。私は経済記者を30年、大学教授を16年勤めました。第一線記者と研究者の経験を生かし、内外の経済情報を立体的に分析します。
2020-05-07 05:00:00
家計債務急増、免れない韓国経済の衰退、いずれ「第二のギリシャ」へ
テーマ:ブログ
確信犯が生む経済破綻の序曲
家計債務急増は国を蝕む業病
進歩派が狙う永久政権落し穴
遠くない「第二のギリシャ」
韓国は現在、意気揚々としている。コロナを一応、撃退したことから世界の賞賛を浴び、韓国製品に「Kプレミアム」が付いているというもの。これまでの「Kディスカウント」が、逆転したというはしゃぎぶりだ。
それは、それで結構なことであり、隣国としての日本は、「祝意」を送らなければなるまい。ただ、「反日宣言」を受けていることから、その祝意もトーンダウンである。
韓国にケチをつけるわけでないが、コロナ撃退の診療体制は「3分診療」であった。
韓国医師が、その内幕を語っているのだ。普段から、医療予算が削られており、少ない予算で効率的診断方法を磨き上げてきた結果が、「3分診療」で成果を生んだというのである。
日本でも大病院は20~30年前、半日待たされ「3分診療」という批判が殺到し、現在は改善されている。
韓国はこの状況が、現在も続いているのだろう。これでは、高度医療の発展は難しかろうと、他国のことながら案じるのだ。
韓国は、コロナ対策では「Kプレミアム」でも、経済面でいよいよ「Kディスカウント」の局面へ転落する。
韓国の文政権が、それを明確に認識していないだけなのだ。
それは、韓国家計の債務残高が対GDP比で急上昇している点である。
家計債務の急増問題は、中国経済も当てはまるが、韓国の方がはるかに深刻である。
家計債務の急増が、個人消費に悪影響して最後は経済成長率を低下させるという「業病」なのだ。
確信犯が生む経済破綻の序曲
文政権は、家計所得を増やす目的で最低賃金の大幅引上げに踏み切った。
2018~19年の2年間で約29%もの最低賃金引き上げである。これに耐えられる中小企業や自営業が、それほどあるはずがない。
韓国では、最賃引上に罰則を設けているので、多くの零細・弱小企業は、従業員を解雇して罰則適用を免れた。
こうして、雇用状態が急悪化した。これをカバーすべく、政府は数兆円を支出してアルバイトを増やすという苦肉の策に出ざるを得なかった。
最低賃金の大幅引き上げという無謀な政策は、失業率を高めるだけでなく、財政赤字を膨らませる事態を招いた。
それだけでない。失業へ追いやられた人々は、借金で生活を支えざるを得なかった。
家計債務は、コロナ襲来による強制休業も加わって、今年は膨張の一途を辿っているはずだ。その実態は、後で取り上げる。
債務の急増による家計の逼迫は、最終的に財政赤字拡大へしわ寄せされるはずである。
国民生活を窮乏のままに放置できないからだ。
韓国の政治情勢は、文政権の進歩派が象徴するように、「ニセ革新派思考」が主流である。
最低賃金の大幅引き上げは、生産性上昇率を無視して強行された。経済合理性を欠いているのだ。
その背景には、「反市場主義」や「反企業主義」というごとく、資本主義経済のルールを無視するのが当然という思考が支配している結果だ。
民間経済の活性化は、財閥を利するという偏見に囚われている。
その偏見が、2年間で約29%もの最賃引上を実現させ、雇用状態を破綻させたのだ。
これが、家計債務の急増を生んだ背景である。
韓国の有権者には、これがいずれ韓国財政を追い込み、「第二のギリシャ」になるという危機感がゼロである。
ギリシャの財政破綻は、家計債務が急増した結果ではない。韓国よりもはるかに健全である。
そのギリシャが、財政破綻したのである。その意味で、韓国の政治情勢は深刻な問題を抱えている。
ついでに触れておかなければならないのは、日本の財政赤字問題である。
対GDP比の国家債務は、世界最高の230%超(2018年)である。
だが、「円」はドルに次ぐ安全通貨として、世界経済が混乱に陥るたびに、「円高」に振れている。
これは、日本の対外純資産が世界一という裏付けがあることだ。
日本の国債問題が、不安を呼ぶことなく信頼をつなぎ止めている裏に、次の点を指摘すべきであろう。
1)日本の国債は、多くが国内で保有されていること。
2)国債で調達して資金が、研究開発や生産性向上をもたらす部門に支出されていること。
3)経常収支黒字を維持していること。これが、世界一の対外純資産を維持させている。
これらの3点が、単純な「財政赤字忌避論」を退け、米国において「MMT(現代貨幣理論)」なる国債増加容認論を生む理論的背景になっている。
いわば、日本が最新貨幣理論提起のきっかけを作ったとして注目されている。
世界的な人口高齢化を反映して、「低成長・低物価・低インフレ」という3要件が先進国経済で普遍化してきた。
そこで、改めて先行する日本の財政政策について、見直し論が強まっているのである。
日々、内外のニュースに接していると、いろいろの感想や疑問が湧きます。それらについて、私なりの答えを探すべく、このブログを開きます。私は経済記者を30年、大学教授を16年勤めました。第一線記者と研究者の経験を生かし、内外の経済情報を立体的に分析します。
2020-05-07 05:00:00
家計債務急増、免れない韓国経済の衰退、いずれ「第二のギリシャ」へ
テーマ:ブログ
確信犯が生む経済破綻の序曲
家計債務急増は国を蝕む業病
進歩派が狙う永久政権落し穴
遠くない「第二のギリシャ」
韓国は現在、意気揚々としている。コロナを一応、撃退したことから世界の賞賛を浴び、韓国製品に「Kプレミアム」が付いているというもの。これまでの「Kディスカウント」が、逆転したというはしゃぎぶりだ。
それは、それで結構なことであり、隣国としての日本は、「祝意」を送らなければなるまい。ただ、「反日宣言」を受けていることから、その祝意もトーンダウンである。
韓国にケチをつけるわけでないが、コロナ撃退の診療体制は「3分診療」であった。
韓国医師が、その内幕を語っているのだ。普段から、医療予算が削られており、少ない予算で効率的診断方法を磨き上げてきた結果が、「3分診療」で成果を生んだというのである。
日本でも大病院は20~30年前、半日待たされ「3分診療」という批判が殺到し、現在は改善されている。
韓国はこの状況が、現在も続いているのだろう。これでは、高度医療の発展は難しかろうと、他国のことながら案じるのだ。
韓国は、コロナ対策では「Kプレミアム」でも、経済面でいよいよ「Kディスカウント」の局面へ転落する。
韓国の文政権が、それを明確に認識していないだけなのだ。
それは、韓国家計の債務残高が対GDP比で急上昇している点である。
家計債務の急増問題は、中国経済も当てはまるが、韓国の方がはるかに深刻である。
家計債務の急増が、個人消費に悪影響して最後は経済成長率を低下させるという「業病」なのだ。
確信犯が生む経済破綻の序曲
文政権は、家計所得を増やす目的で最低賃金の大幅引上げに踏み切った。
2018~19年の2年間で約29%もの最低賃金引き上げである。これに耐えられる中小企業や自営業が、それほどあるはずがない。
韓国では、最賃引上に罰則を設けているので、多くの零細・弱小企業は、従業員を解雇して罰則適用を免れた。
こうして、雇用状態が急悪化した。これをカバーすべく、政府は数兆円を支出してアルバイトを増やすという苦肉の策に出ざるを得なかった。
最低賃金の大幅引き上げという無謀な政策は、失業率を高めるだけでなく、財政赤字を膨らませる事態を招いた。
それだけでない。失業へ追いやられた人々は、借金で生活を支えざるを得なかった。
家計債務は、コロナ襲来による強制休業も加わって、今年は膨張の一途を辿っているはずだ。その実態は、後で取り上げる。
債務の急増による家計の逼迫は、最終的に財政赤字拡大へしわ寄せされるはずである。
国民生活を窮乏のままに放置できないからだ。
韓国の政治情勢は、文政権の進歩派が象徴するように、「ニセ革新派思考」が主流である。
最低賃金の大幅引き上げは、生産性上昇率を無視して強行された。経済合理性を欠いているのだ。
その背景には、「反市場主義」や「反企業主義」というごとく、資本主義経済のルールを無視するのが当然という思考が支配している結果だ。
民間経済の活性化は、財閥を利するという偏見に囚われている。
その偏見が、2年間で約29%もの最賃引上を実現させ、雇用状態を破綻させたのだ。
これが、家計債務の急増を生んだ背景である。
韓国の有権者には、これがいずれ韓国財政を追い込み、「第二のギリシャ」になるという危機感がゼロである。
ギリシャの財政破綻は、家計債務が急増した結果ではない。韓国よりもはるかに健全である。
そのギリシャが、財政破綻したのである。その意味で、韓国の政治情勢は深刻な問題を抱えている。
ついでに触れておかなければならないのは、日本の財政赤字問題である。
対GDP比の国家債務は、世界最高の230%超(2018年)である。
だが、「円」はドルに次ぐ安全通貨として、世界経済が混乱に陥るたびに、「円高」に振れている。
これは、日本の対外純資産が世界一という裏付けがあることだ。
日本の国債問題が、不安を呼ぶことなく信頼をつなぎ止めている裏に、次の点を指摘すべきであろう。
1)日本の国債は、多くが国内で保有されていること。
2)国債で調達して資金が、研究開発や生産性向上をもたらす部門に支出されていること。
3)経常収支黒字を維持していること。これが、世界一の対外純資産を維持させている。
これらの3点が、単純な「財政赤字忌避論」を退け、米国において「MMT(現代貨幣理論)」なる国債増加容認論を生む理論的背景になっている。
いわば、日本が最新貨幣理論提起のきっかけを作ったとして注目されている。
世界的な人口高齢化を反映して、「低成長・低物価・低インフレ」という3要件が先進国経済で普遍化してきた。
そこで、改めて先行する日本の財政政策について、見直し論が強まっているのである。
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