2017.12.15 23:19
投光・放水…緊迫の取り締まり 大和堆の北違法漁船、海保が映像公開
日本の排他的経済水域(EEZ)にある日本海の好漁場「大和堆(やまとたい)」周辺での北朝鮮漁船による違法操業問題で、海上保安庁は15日、放水で漁船を排除する様子を撮影した動画や写真を公開した。
画像公開は8月に続き2回目。
海保は9月以降、大型鋼船を中心に延べ273隻に放水、木造船を含む同1100隻を排除した。
日本への漂着船の多くは遭難した木造船とみている。
大和堆は男鹿半島(秋田県)から西に約400キロの浅海で、スルメイカが取れる。海保は7月から巡視船を派遣している。
暗闇の中、サーチライト照らし急襲
日本海の排他的経済水域(EEZ)にある「大和堆(やまとたい)」周辺で、海上保安庁は昼夜を問わず、北朝鮮の違法操業船を取り締まってきた。
北朝鮮は「冬季漁獲戦闘」と称するなど国策として漁業を奨励、大和堆への出漁もその一環とみられる。
海保が15日に公開した動画や写真からは、長さ30~40メートル級の鋼船に巡視船を近づけ、放水を続けるなど緊迫した様子が明らかになった。
海保は7月に大和堆で北朝鮮船の取り締まりを開始。
8月中旬にはいなくなったが、9月以降、再び周辺海域に現れた。
排除した延べ1100隻のうち、長さ約10~15メートルの木造船は約600隻で、残りは荒れる海に対応するため投入されたとみられる鋼船だった。
木造船は9月以降、警告すると、すぐに網を上げてEEZ外側に退去するようになった。
海保の担当者は「夏場の放水が効いたのだろう」とみる。
北朝鮮船の探索には大型巡視船に搭載したヘリコプターのほか、飛行機を活用。「高性能レーダーで索敵し、たたきに行った」
9月以降に放水の対象になったのが鋼船だった。鋼船は煙突に北朝鮮国旗を塗装、当初は母船の役割を果たすとみられていたが、木造船への食糧の補給、取ったイカの受け入れなどは確認されなかった。
鋼船が警告に従わなければ、巡視船を30メートルまで近づけて放水。
衝突などを避けるため、操船には細心の注意を払った。
夏場に実施した木造船への放水は山なりだったが、鋼船に対しては放水銃を真横に向けて船体に水を直接当て、威圧。EEZ外に退去するまで追いかけ続けた。
鋼船は昼間に漁場を探し、夜に違法操業を開始する。
巡視船は暗闇の中で弱々しい集魚灯を光らせる鋼船に接近し、サーチライトを照らして急襲。
放水を受けた鋼船は慌てた様子でアンカーを引き上げて逃走したという。時速は10キロ程度。
木造船と同様、老朽化が進んでおり、担当者は「鋼船は20~30年落ちだろう」との見方を示した。
11月下旬にはEEZ外側も含めて北朝鮮船が確認されなくなり、日本漁船が操業を再開した。
ただ、国際社会の経済制裁が強まる中、慢性的な食糧不足の解消などに向けて、今後も大和堆周辺に出向いて来る可能性が高い。
海保は来シーズンも取り締まりを継続し、日本船が操業できるよう排除を徹底する方針だ。
さらわれるイカ 漁業者「死活問題」
大和堆を漁場とする日本の漁業者からは、傍若無人に振る舞う北朝鮮漁船に対する憤りの声が相次いでいる。
「東シナ海は中国、北はロシアの漁船に好きなようにやられる中、大和堆は日本の漁業者にとって『最後の豊かな漁場』。それがこんなことになるなんて…」。
石川県漁協小木支所の神谷洋志郎総務部長(60)は悔しげに話す。
神谷さんによると、例年6月初旬から大和堆の南部でイカ漁がスタート。
成長しながら北上し、9、10月ごろに南下するイカの動きに合わせ、漁船は漁場を変えていく。
しかし、日本の漁船が集魚灯をともすと、北朝鮮の漁船はそこを目指して集結し、海洋資源保護のため禁止されている網を使ってイカをさらっていく。
「集まってきた漁船の真ん中で網が船に絡まり、動けなくなったらどうなるか。いきなり船に乗り込まれるかもしれない。考えるだけでもぞっとする」と神谷さん。
結局、北の漁船を避け、今年は例年より北で漁を行わざるを得なかった。
漁業情報サービスセンターによると、今年1~11月に主な漁港に水揚げされた日本海沖合でのスルメイカ(冷凍)は1万7千トン弱で記録的不漁だった昨年同時期をさらに下回っている。
「北朝鮮の漁船は北上の途中で小さなイカを取り過ぎている」と話すのは山形県漁協の担当者。
漁は年明けの2月末ごろまで続くが、イカがいなければ早めに切り上げざるを得ない。
担当者は「このままでは船員たちは別の仕事を探さなければいけない。死活問題だ」と訴えた。
漂流・漂着過去最多 1月以降89件、12月は30件
海上保安庁は15日、北朝鮮からとみられる木造船の12月の日本沿岸への漂流・漂着件数が同日正午現在で30件となり、
統計を取り始めた平成25年以降で最多だった先月の28件を上回り、月間で過去最多を更新したと発表した。今年1月以降では89件で、こちらも過去最多となっている。
漂流・漂着は今年1~10月は毎月5件以下で推移していたが、11月に急増。これまでの漂流・漂着の年間最多は25年の80件だった。
北朝鮮人と推定される船員については、25人が遺体で見つかる一方、42人の生存が確認されている。
15日は新たに山形県鶴岡市五十川の海岸で、身元不明の男性の遺体が見つかった。
全裸で一部白骨化し、所持品は見つかっていない。
青森県深浦町艫作(へなし)の海岸でも一部白骨化した身元不明の男性の遺体が見つかった。いずれも付近で木造船が漂着していた。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます