文在寅の大誤算、韓国で「静かに資金流出」が起き始めた…!
8/24(月) 7:01配信
現代ビジネス
真壁 昭夫(法政大学大学院教授)
8月20日、韓国ソウルの株式市場で、代表的な株価インデックスである“韓国総合株価指数(KOSPI)”が前日比3.66%下落した。
【写真】「韓国が嫌いな日本人」を世界はどう見ているのか
同日、わが国のTOPIXや中国の上海総合指数をはじめアジア各国の株式市場は下落したのだが、アジア市場の中で韓国の株価下落率は最も大きかった。
その要因として、韓国国内でコロナウイルス感染の拡大が懸念されたことに加えて、米国の金融当局が期待したほど金融緩和に積極ではないとの見方が広がったことがある。
具体的には、19日に米国の中央銀行であるFRB(連邦準備理事会)が中長期などの国債の流通利回りの水準を一定に保つ政策(イールドカーブ・コントロール)に慎重な見解を示した。
それにより米金利が上昇して米ドルに投資資金が吸い寄せられ、低金利を重視する韓国から資金が流出した。
韓国の株価、ウォンの為替レート下落はその裏返しといえる。
また、韓国の対中姿勢の影響もある。
米中対立はし烈化している。主要先進国は米国の見解を重視する一方、中国への懸念を表明している。
しかし、文在寅(ムン・ジェイン)大統領は対中関係を強化したいようだ。
米国に安全保障を依存する韓国が経済面で中国を重視し続けた結果、同国の経済運営が難航するのではないかと先行きを警戒する世界の主要投資家は増えている。
ドル資金の供給に支えられた韓国経済
〔PHOTO〕iStock
これまで、韓国は慢性的なドル不足の状況にあった。
北朝鮮に対峙する韓国に、海外の企業や金融機関が長期の視点で資金を投じることは難しい。
そのため、世界の経済と金融市場の不安定感が高まると韓国からは急速に資金が流出しやすい。
3月中旬にかけて、新型コロナウイルスの感染拡大によって世界の金融市場は大きく混乱した。
当時、韓国からは急速に資金が流出し、株価とウォンの為替レートが大きく下落した。
3月19日には、韓国政府高官が世界的な信用収縮が発生するとの懸念を表明した。
それは、自国のドル調達が難航し、経済運営に必要な資金が枯渇するとの危機感の裏返しと考えられる。
その状況を支えたのがFRBによるドル資金供給だった。
それは、世界の金融市場の混乱を食止め、韓国経済と金融市場の持ち直しを支えた。
世界の主要投資家は、基軸通貨米ドルの信認(ドル覇権)が韓国経済の安定に欠かせないことを改めて確認した。
理論的に、投資資金は金利の低いところから高いところに向かう。
3月中旬以降、世界の主要投資家はFRBが金融緩和策を強化し、米金利に低下圧力がかかると考えた。
その結果、投資資金は米ドルから他の通貨に流入した。
その中で、世界経済のデジタル化の進行によって韓国の半導体輸出が増えるとの期待が高まり、サムスン電子などの株式に資金が流入してKOSPIが上昇した。
しかし、FRBが公表した7月の連邦公開市場委員会(FOMC)の議事要旨では一部で期待のあった中長期などの金利を低位に維持する政策に関して、効果はかなり限られると導入に消極的な見解が示された。
米国の金融政策が期待したほどのものではないとの見方から米金利は上昇し、投資資金が米ドルに吸い寄せられた。
その結果、韓国株への売り圧力が高まった。
そのほか、高値圏での利食いや感染の増加も株価下落の一因だ。
国際世論の不信を招く文大統領の対中姿勢
米金利の上昇に加えて、文大統領の対中姿勢を懸念する主要投資家は増えている。
足許の米中の対立を見ていると、両国は自由資本主義(米国)と国家資本主義(中国)に賛同する国を増やしたい。
わが国、欧州各国、台湾、インド、オーストラリアなどは対米関係の強化を明確化した。
それは、安全保障体制を強固にし、社会と経済の安定を目指すためだ。
そうした姿勢と異なり、韓国の文大統領は中国との関係を重視している。
21日には楊潔篪(よう・けつち)中国共産党中央政治局委員が釜山を訪問した。
同氏がソウルを訪問しない理由の一つは、新型コロナウイルスの感染を避けるためといわれる。
それに加えて、中国には習近平国家主席の訪韓を重視する文大統領から積極的な協力などを引き出す狙いもあるだろう。
米国がファーウェイの半導体調達を遮断したため、半導体製造などに関して中国が韓国に協力を求める可能性はある。
その状況下、国際社会の中で韓国がどのような自国の立ち位置を目指しているかがよくわからなくなっている。
安全保障に加え、韓国は経済と金融の安定でも米国に依存している。
それにもかかわらず、経済面で中国に近づく政策は矛盾している。
今後の展開次第では、米中対立が先鋭化し韓国経済に下押し圧力がかかる展開は否定できない。
また、中国の債務問題の深刻化や、IT先端分野での競争力向上も韓国の脅威だ。
そうしたリスクを考えると、本来、韓国は米国との関係を重視しなければならない。
しかし、文氏は依然として米中に対して狡猾にふるまうことで、成果を示すことにこだわっているように見える。
その発想で、韓国が長期の視点で経済の安定を目指すことは難しいだろう。
そうした警戒感の高まりが、20日の韓国の株価下落の一因になった可能性は軽視できない。
真壁 昭夫(法政大学大学院教授)
8/24(月) 7:01配信
現代ビジネス
真壁 昭夫(法政大学大学院教授)
8月20日、韓国ソウルの株式市場で、代表的な株価インデックスである“韓国総合株価指数(KOSPI)”が前日比3.66%下落した。
【写真】「韓国が嫌いな日本人」を世界はどう見ているのか
同日、わが国のTOPIXや中国の上海総合指数をはじめアジア各国の株式市場は下落したのだが、アジア市場の中で韓国の株価下落率は最も大きかった。
その要因として、韓国国内でコロナウイルス感染の拡大が懸念されたことに加えて、米国の金融当局が期待したほど金融緩和に積極ではないとの見方が広がったことがある。
具体的には、19日に米国の中央銀行であるFRB(連邦準備理事会)が中長期などの国債の流通利回りの水準を一定に保つ政策(イールドカーブ・コントロール)に慎重な見解を示した。
それにより米金利が上昇して米ドルに投資資金が吸い寄せられ、低金利を重視する韓国から資金が流出した。
韓国の株価、ウォンの為替レート下落はその裏返しといえる。
また、韓国の対中姿勢の影響もある。
米中対立はし烈化している。主要先進国は米国の見解を重視する一方、中国への懸念を表明している。
しかし、文在寅(ムン・ジェイン)大統領は対中関係を強化したいようだ。
米国に安全保障を依存する韓国が経済面で中国を重視し続けた結果、同国の経済運営が難航するのではないかと先行きを警戒する世界の主要投資家は増えている。
ドル資金の供給に支えられた韓国経済
〔PHOTO〕iStock
これまで、韓国は慢性的なドル不足の状況にあった。
北朝鮮に対峙する韓国に、海外の企業や金融機関が長期の視点で資金を投じることは難しい。
そのため、世界の経済と金融市場の不安定感が高まると韓国からは急速に資金が流出しやすい。
3月中旬にかけて、新型コロナウイルスの感染拡大によって世界の金融市場は大きく混乱した。
当時、韓国からは急速に資金が流出し、株価とウォンの為替レートが大きく下落した。
3月19日には、韓国政府高官が世界的な信用収縮が発生するとの懸念を表明した。
それは、自国のドル調達が難航し、経済運営に必要な資金が枯渇するとの危機感の裏返しと考えられる。
その状況を支えたのがFRBによるドル資金供給だった。
それは、世界の金融市場の混乱を食止め、韓国経済と金融市場の持ち直しを支えた。
世界の主要投資家は、基軸通貨米ドルの信認(ドル覇権)が韓国経済の安定に欠かせないことを改めて確認した。
理論的に、投資資金は金利の低いところから高いところに向かう。
3月中旬以降、世界の主要投資家はFRBが金融緩和策を強化し、米金利に低下圧力がかかると考えた。
その結果、投資資金は米ドルから他の通貨に流入した。
その中で、世界経済のデジタル化の進行によって韓国の半導体輸出が増えるとの期待が高まり、サムスン電子などの株式に資金が流入してKOSPIが上昇した。
しかし、FRBが公表した7月の連邦公開市場委員会(FOMC)の議事要旨では一部で期待のあった中長期などの金利を低位に維持する政策に関して、効果はかなり限られると導入に消極的な見解が示された。
米国の金融政策が期待したほどのものではないとの見方から米金利は上昇し、投資資金が米ドルに吸い寄せられた。
その結果、韓国株への売り圧力が高まった。
そのほか、高値圏での利食いや感染の増加も株価下落の一因だ。
国際世論の不信を招く文大統領の対中姿勢
米金利の上昇に加えて、文大統領の対中姿勢を懸念する主要投資家は増えている。
足許の米中の対立を見ていると、両国は自由資本主義(米国)と国家資本主義(中国)に賛同する国を増やしたい。
わが国、欧州各国、台湾、インド、オーストラリアなどは対米関係の強化を明確化した。
それは、安全保障体制を強固にし、社会と経済の安定を目指すためだ。
そうした姿勢と異なり、韓国の文大統領は中国との関係を重視している。
21日には楊潔篪(よう・けつち)中国共産党中央政治局委員が釜山を訪問した。
同氏がソウルを訪問しない理由の一つは、新型コロナウイルスの感染を避けるためといわれる。
それに加えて、中国には習近平国家主席の訪韓を重視する文大統領から積極的な協力などを引き出す狙いもあるだろう。
米国がファーウェイの半導体調達を遮断したため、半導体製造などに関して中国が韓国に協力を求める可能性はある。
その状況下、国際社会の中で韓国がどのような自国の立ち位置を目指しているかがよくわからなくなっている。
安全保障に加え、韓国は経済と金融の安定でも米国に依存している。
それにもかかわらず、経済面で中国に近づく政策は矛盾している。
今後の展開次第では、米中対立が先鋭化し韓国経済に下押し圧力がかかる展開は否定できない。
また、中国の債務問題の深刻化や、IT先端分野での競争力向上も韓国の脅威だ。
そうしたリスクを考えると、本来、韓国は米国との関係を重視しなければならない。
しかし、文氏は依然として米中に対して狡猾にふるまうことで、成果を示すことにこだわっているように見える。
その発想で、韓国が長期の視点で経済の安定を目指すことは難しいだろう。
そうした警戒感の高まりが、20日の韓国の株価下落の一因になった可能性は軽視できない。
真壁 昭夫(法政大学大学院教授)
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