勝又壽良の経済時評
日々、内外のニュースに接していると、いろいろの感想や疑問が湧きます。それらについて、私なりの答えを探すべく、このブログを開きます。私は経済記者を30年、大学教授を16年勤めました。第一線記者と研究者の経験を生かし、内外の経済情報を立体的に分析します。
2018-10-11 05:00:00
韓国、「与党」長期政権狙い北朝鮮と連携強化目指し「経済犠牲」
一部省略
北朝鮮接近の与党
支持基盤の機嫌取
10月4~6日、北朝鮮を訪問した韓国与党「共に民主党」の李海チャン(イ・ヘチャン)代表が、平壌(ピョンヤン)で口にした発言が議論を呼んでいる。
野党に権力を渡さず、北朝鮮との関係強化に努めるといった主旨の発言をしたからだ。
韓国与党は、政権独占の大胆な戦略を立てているようだ。
韓国与党が、長期政権を樹立したいという願望だけならば聞き流す。
最近、立て続けに起こっている問題を並べてみると、すべて一本の線上につながっていることに気付く。
つまり、北朝鮮との統一とまでは行かないまでも、南北連携強化の動きが始っている解釈可能な問題が多いからだ。
このように判断する理由は、韓国大統領府の秘書官の6割が「86世代」で占められたことだ。
86世代とは、1960年代うまれ。80年代に大学生活を送った、学生運動家上がりの集団である。
彼らは、「親中朝・反米日」が共通認識だ。
文政権になって、慰安婦問題は解決どころか振り出しに戻っている。
今回の「旭日旗問題」もこの一環として引き起こされたと見るべきだ。
北朝鮮の意向も受けているのでなかろうか。
「旭日旗問題」は、単純な問題でなく、南北が日本へ突き付けてきた「闘争の始り」かも知れない。
与党「共に民主党」は、朴槿惠政権を打倒した原動力である、「ローソク・デモ」主催の労組と民主団体の意向を最大限受入れる姿勢を見せている。
その例の一つが、「最低賃金大幅引き上げ」である。
経済的破綻は不可避だが、見直しの動きを全く見せずにいる。
見直しが、労組への裏切りになるからだ。「教科書書換え」も南北連携への準備である。
韓国の国是と言うべき「自由と民主主義」から「自由」を削除した。
「民主主義」だけなら、北も「人民民主主義」である。これならば、南北連携の壁がなくなる。
北朝鮮接近の与党
『中央日報』(10月8日付)は、「北朝鮮で行った韓国与党代表の不適切な発言」とだいする社説を掲載した。
(1)
「10・4南北共同宣言11周年を記念して4~6日、北朝鮮を訪問した与党・共に民主党の李海チャン(イ・ヘチャン)代表が平壌(ピョンヤン)で口にした発言が論議をかもしている。
李代表は5日、安東春(アン・ドンチュン)最高人民会議副議長と会った席で『われわれが政権を奪われれば(交流を)できなくなるため、私が生きている限り絶対に奪われないように固く決心している』と述べた。
引き続き、記者に『平和体制になるためには国家保安法などをどのようにするかを協議しなければならない』と話した」
韓国与党代表は、次のような問題発言をした。
①
「われわれが政権を奪われれば(交流を)できなくなるため、私が生きている限り絶対に奪われないように固く決心している」
与党「共に民主党」が、政権を維持し続けるには、「積弊一掃」で歴代保守党大統領を獄窓に送る。
その政策執行者も追放する。そのためには司法を徹底的に利用する。
すでにこの戦術を実行している。同時に、支持団体の利益を擁護して支持をつなぎ止める。
最賃大幅引上げと原発廃止政策がそれだ。その結果、韓国経済が混乱してもやむを得ない。
②
「平和体制になるためには国家保安法などをどのようにするかを協議しなければならない」
国家保安法は、反国家活動を規制するもの。国家の安全と国民の生存・自由を確保することを目的としている。
1948年に李承晩政権によって制定されてから、反共イデオロギーを実現するための装置として、長年韓国における治安立法の中核をなしてきた。
具体的には国内で北朝鮮・共産主義を賛美する行為及びその兆候(軍政当時は南北統一の主張まで)が取締の対象となる。日本の治安維持法をモデルにしたともいわれる。
このように問題のある法律だが、この扱いを北朝鮮で発言すべきではない。
北朝鮮こそ、国家保安法の対象であるからだ。韓国与党は、すっかり精神的に南北協調ムードに入っていることに注目すべきである。
(2)
「李代表が北朝鮮で南北交流と韓半島(朝鮮半島)の平和への意志を強調したことを責める人はいない。
しかし、大韓民国政府与党の代表なら北朝鮮で口にすべきことがあり、口にしてはならないことがある。
保革論争の頂点にある国家保安法の改廃問題は過去数十年間、韓国社会をずたずたに分断してきた雷管中雷管だ。
このような敏感な問題を李代表があえて北朝鮮で取り出す必要があったのか疑問だ。
国家保安法の改廃は国内政界が国会で決めることであり、北朝鮮が関与する問題でないからなおさらだ。
公然と野党の激しい反発を呼び、南南葛藤(注:韓国内部で北朝鮮問題で対立する)だけを拡大するのではないか懸念される」
韓国与党が、北朝鮮と精神的に一体感を強めている証拠だ。
(3)
「また、『生きている限り、政権を守る』という発言も同じだ。
韓国与党は、「北朝鮮労働党と手を握って野党を壊滅させ、長期執権するということか」と疑われているが、これこそズバリ核心を突いている。
すでに革新政権を10~20年継続させるマル秘戦術が取り沙汰されている。
この戦術を実現する上で、司法機関(検察と裁判所)を抱き込む動きを見せている。
韓国司法機関は、実質的に政治権力に弱く、言いなりになる。あるいは、自ら立身栄達のために権力へすり寄る人物が現れている。
ここが、朝鮮民族の悲しいまでの性である。強いと見える側にすり寄るからだ。
支持基盤の機嫌取り
朴槿惠前大統領が、100万市民の「ローソク・デモ」によって退陣しなければ、文政権は誕生しなかったであろう。
朴氏の後継者として、当時の国連事務総長の呼び声が高かったからだ。朴スキャンダルは、文氏と「共に民主党」に僥倖であった。
こうして、文政権はローソク・デモを組織した労組と市民団体の意向を100%受入れなければならなくなっている。
これが、韓国経済にとって「不幸」の始りである。
現実感覚の少ない、労組や市民団体の要求する経済政策が、韓国経済全体から見て整合性のとれる可能性は低い。
彼らは、自らの利益達成が最大目的である。
政府の役割は、利害関係の総合調整にある。だが、最初からそれを放棄して、労組や市民団体の要求に全て応じる信じがたい政策を選択だ。
これでは、韓国経済が回復軌道に乗れるはずがない。
予想通りの結末に向かっている。高い失業率と設備投資の落ち込みで、間もなく「不況宣言」が発せられる所まで追い込まれてきた。
それでも、路線変更はなさそうだ。支持基盤の了解が得られないからだ。
この支持基盤は、徹底的な「反企業主義」にこだわっている。
韓国経済全体に良いことでも、大企業の利益になるようなことは一切、認めないという「原理主義集団」である。
『朝鮮日報』(10月8日付)は、「銀産分離、なぜ韓国の進歩陣営は一文字も修正させないのか」と題する社説を掲載した。
(4)
「韓国公正取引委員会の金尚祚(キム・サンジョ)委員長はメディアの取材に対し『進歩(リベラル)陣営は2002年に制定された今の銀行法が定める銀産分離について、これをなぜ一文字も修正できない金科玉条のように考えるのか理解できない』と発言した。
金委員長はさらに
『最近はネットバンクをめぐる議論が活発化しているが、これに関してはサムスングループだけの規制を求める声も上がっている』とした上で、
『サムスンは220兆ウォン(約22兆円)規模のサムスン生命を保有しているため、10兆ウォン(約1兆円)規模のネットバンクを持つべき理由などない』とも指摘した。
金委員長は『かつて資本が足りなかった時代、財閥は銀行を保有しこれを私的な金庫としたい誘惑もあったが、通貨危機やクレジットカード問題、リーマンショックなどを経て(財閥にとっては)金融機関を持つリスクが逆に高まっている』との見方も示した。
金委員長によると、韓国の金融機関は規制にがんじがらめとなっているため、アフリカの一部の国よりも競争力が低いという」
「銀産分離」とは、厳密に言えば金融が産業(事業)を支配しないという独禁法上の大原則である。
韓国では、これが完全分離していない点で問題になってきた。
サムスングループは、グループ内に製造業と金融証券業を抱えており、本来ならば違法である。
製造業と金融(保険業)・証券業が同一企業グループに所属すれば、韓国経済への支配権が強まる懸念が持たれるからだ。
こういう現実は、早急に改革すべきである。それを理由に、ネットバンクを規制しているのも理屈に合わない話である。江戸の仇を長崎で討つようなことだ。
(5)
「左派陣営の『本能的』とも言える反資本主義感情の影響を受け、今なお一歩も進めることができない新産業分野はいくつもある。
人工知能(AI)、ドローン、ビッグデータ、フィンテックなどの第4次産業分野はもちろん、韓国で最も多くの人材が集まる医療分野でさえ勢力争いや下方平準化の壁にぶち当たり、数十年にわたり規制緩和が実現しない。
これに対してシンガポールや米国などでは医療やヘルスケア産業が発達し、欧州や中東、ロシアなど世界各国から患者が集まり今や経済の成長エンジンとしても機能している」
政治的左派が、資本主義経済=市場機構を受入れないのは過去のこと。
反資本主義経済とは本来、市場機構軽視して直接統制経済を志向するものだ。
それを、現代に復活させることは不可能である。
中国経済の混乱が、それを見事に証明している。
韓国左派が、学生時代に学んだ理論を検証もしないで実行して失敗しつつある。
現在の「最賃大幅引上げ」だ。この失敗に懲りずに、新たな案を阻止しようとしている。労組と市民団体の支持を失うのが怖いのだ。
(7)
「1980年代に広まった運動圏(左翼系学生運動)の思考方式に今なお縛られた与党や過激な貴族労組など既得権を持つ勢力が変わらない限り、第4次産業はもちろん今何とか持ちこたえている半導体や自動車など、従来型の主力産業もこのまま衰退していくのは目に見えている」
1980年代に広まった運動圏(左翼系学生運動)の思考方式は、まさに「86世代」のそれである。
韓国経済は、反市場経済システムを信奉する彼らが率いている。
上手く機能するとは思えないのだ。彼らの夢は、北朝鮮と連携すること。
それには、労組と市民団体の意向を最大限受入れるだろう。かくて、韓国経済は破綻に向かう。
(2018年10月11日付)
日々、内外のニュースに接していると、いろいろの感想や疑問が湧きます。それらについて、私なりの答えを探すべく、このブログを開きます。私は経済記者を30年、大学教授を16年勤めました。第一線記者と研究者の経験を生かし、内外の経済情報を立体的に分析します。
2018-10-11 05:00:00
韓国、「与党」長期政権狙い北朝鮮と連携強化目指し「経済犠牲」
一部省略
北朝鮮接近の与党
支持基盤の機嫌取
10月4~6日、北朝鮮を訪問した韓国与党「共に民主党」の李海チャン(イ・ヘチャン)代表が、平壌(ピョンヤン)で口にした発言が議論を呼んでいる。
野党に権力を渡さず、北朝鮮との関係強化に努めるといった主旨の発言をしたからだ。
韓国与党は、政権独占の大胆な戦略を立てているようだ。
韓国与党が、長期政権を樹立したいという願望だけならば聞き流す。
最近、立て続けに起こっている問題を並べてみると、すべて一本の線上につながっていることに気付く。
つまり、北朝鮮との統一とまでは行かないまでも、南北連携強化の動きが始っている解釈可能な問題が多いからだ。
このように判断する理由は、韓国大統領府の秘書官の6割が「86世代」で占められたことだ。
86世代とは、1960年代うまれ。80年代に大学生活を送った、学生運動家上がりの集団である。
彼らは、「親中朝・反米日」が共通認識だ。
文政権になって、慰安婦問題は解決どころか振り出しに戻っている。
今回の「旭日旗問題」もこの一環として引き起こされたと見るべきだ。
北朝鮮の意向も受けているのでなかろうか。
「旭日旗問題」は、単純な問題でなく、南北が日本へ突き付けてきた「闘争の始り」かも知れない。
与党「共に民主党」は、朴槿惠政権を打倒した原動力である、「ローソク・デモ」主催の労組と民主団体の意向を最大限受入れる姿勢を見せている。
その例の一つが、「最低賃金大幅引き上げ」である。
経済的破綻は不可避だが、見直しの動きを全く見せずにいる。
見直しが、労組への裏切りになるからだ。「教科書書換え」も南北連携への準備である。
韓国の国是と言うべき「自由と民主主義」から「自由」を削除した。
「民主主義」だけなら、北も「人民民主主義」である。これならば、南北連携の壁がなくなる。
北朝鮮接近の与党
『中央日報』(10月8日付)は、「北朝鮮で行った韓国与党代表の不適切な発言」とだいする社説を掲載した。
(1)
「10・4南北共同宣言11周年を記念して4~6日、北朝鮮を訪問した与党・共に民主党の李海チャン(イ・ヘチャン)代表が平壌(ピョンヤン)で口にした発言が論議をかもしている。
李代表は5日、安東春(アン・ドンチュン)最高人民会議副議長と会った席で『われわれが政権を奪われれば(交流を)できなくなるため、私が生きている限り絶対に奪われないように固く決心している』と述べた。
引き続き、記者に『平和体制になるためには国家保安法などをどのようにするかを協議しなければならない』と話した」
韓国与党代表は、次のような問題発言をした。
①
「われわれが政権を奪われれば(交流を)できなくなるため、私が生きている限り絶対に奪われないように固く決心している」
与党「共に民主党」が、政権を維持し続けるには、「積弊一掃」で歴代保守党大統領を獄窓に送る。
その政策執行者も追放する。そのためには司法を徹底的に利用する。
すでにこの戦術を実行している。同時に、支持団体の利益を擁護して支持をつなぎ止める。
最賃大幅引上げと原発廃止政策がそれだ。その結果、韓国経済が混乱してもやむを得ない。
②
「平和体制になるためには国家保安法などをどのようにするかを協議しなければならない」
国家保安法は、反国家活動を規制するもの。国家の安全と国民の生存・自由を確保することを目的としている。
1948年に李承晩政権によって制定されてから、反共イデオロギーを実現するための装置として、長年韓国における治安立法の中核をなしてきた。
具体的には国内で北朝鮮・共産主義を賛美する行為及びその兆候(軍政当時は南北統一の主張まで)が取締の対象となる。日本の治安維持法をモデルにしたともいわれる。
このように問題のある法律だが、この扱いを北朝鮮で発言すべきではない。
北朝鮮こそ、国家保安法の対象であるからだ。韓国与党は、すっかり精神的に南北協調ムードに入っていることに注目すべきである。
(2)
「李代表が北朝鮮で南北交流と韓半島(朝鮮半島)の平和への意志を強調したことを責める人はいない。
しかし、大韓民国政府与党の代表なら北朝鮮で口にすべきことがあり、口にしてはならないことがある。
保革論争の頂点にある国家保安法の改廃問題は過去数十年間、韓国社会をずたずたに分断してきた雷管中雷管だ。
このような敏感な問題を李代表があえて北朝鮮で取り出す必要があったのか疑問だ。
国家保安法の改廃は国内政界が国会で決めることであり、北朝鮮が関与する問題でないからなおさらだ。
公然と野党の激しい反発を呼び、南南葛藤(注:韓国内部で北朝鮮問題で対立する)だけを拡大するのではないか懸念される」
韓国与党が、北朝鮮と精神的に一体感を強めている証拠だ。
(3)
「また、『生きている限り、政権を守る』という発言も同じだ。
韓国与党は、「北朝鮮労働党と手を握って野党を壊滅させ、長期執権するということか」と疑われているが、これこそズバリ核心を突いている。
すでに革新政権を10~20年継続させるマル秘戦術が取り沙汰されている。
この戦術を実現する上で、司法機関(検察と裁判所)を抱き込む動きを見せている。
韓国司法機関は、実質的に政治権力に弱く、言いなりになる。あるいは、自ら立身栄達のために権力へすり寄る人物が現れている。
ここが、朝鮮民族の悲しいまでの性である。強いと見える側にすり寄るからだ。
支持基盤の機嫌取り
朴槿惠前大統領が、100万市民の「ローソク・デモ」によって退陣しなければ、文政権は誕生しなかったであろう。
朴氏の後継者として、当時の国連事務総長の呼び声が高かったからだ。朴スキャンダルは、文氏と「共に民主党」に僥倖であった。
こうして、文政権はローソク・デモを組織した労組と市民団体の意向を100%受入れなければならなくなっている。
これが、韓国経済にとって「不幸」の始りである。
現実感覚の少ない、労組や市民団体の要求する経済政策が、韓国経済全体から見て整合性のとれる可能性は低い。
彼らは、自らの利益達成が最大目的である。
政府の役割は、利害関係の総合調整にある。だが、最初からそれを放棄して、労組や市民団体の要求に全て応じる信じがたい政策を選択だ。
これでは、韓国経済が回復軌道に乗れるはずがない。
予想通りの結末に向かっている。高い失業率と設備投資の落ち込みで、間もなく「不況宣言」が発せられる所まで追い込まれてきた。
それでも、路線変更はなさそうだ。支持基盤の了解が得られないからだ。
この支持基盤は、徹底的な「反企業主義」にこだわっている。
韓国経済全体に良いことでも、大企業の利益になるようなことは一切、認めないという「原理主義集団」である。
『朝鮮日報』(10月8日付)は、「銀産分離、なぜ韓国の進歩陣営は一文字も修正させないのか」と題する社説を掲載した。
(4)
「韓国公正取引委員会の金尚祚(キム・サンジョ)委員長はメディアの取材に対し『進歩(リベラル)陣営は2002年に制定された今の銀行法が定める銀産分離について、これをなぜ一文字も修正できない金科玉条のように考えるのか理解できない』と発言した。
金委員長はさらに
『最近はネットバンクをめぐる議論が活発化しているが、これに関してはサムスングループだけの規制を求める声も上がっている』とした上で、
『サムスンは220兆ウォン(約22兆円)規模のサムスン生命を保有しているため、10兆ウォン(約1兆円)規模のネットバンクを持つべき理由などない』とも指摘した。
金委員長は『かつて資本が足りなかった時代、財閥は銀行を保有しこれを私的な金庫としたい誘惑もあったが、通貨危機やクレジットカード問題、リーマンショックなどを経て(財閥にとっては)金融機関を持つリスクが逆に高まっている』との見方も示した。
金委員長によると、韓国の金融機関は規制にがんじがらめとなっているため、アフリカの一部の国よりも競争力が低いという」
「銀産分離」とは、厳密に言えば金融が産業(事業)を支配しないという独禁法上の大原則である。
韓国では、これが完全分離していない点で問題になってきた。
サムスングループは、グループ内に製造業と金融証券業を抱えており、本来ならば違法である。
製造業と金融(保険業)・証券業が同一企業グループに所属すれば、韓国経済への支配権が強まる懸念が持たれるからだ。
こういう現実は、早急に改革すべきである。それを理由に、ネットバンクを規制しているのも理屈に合わない話である。江戸の仇を長崎で討つようなことだ。
(5)
「左派陣営の『本能的』とも言える反資本主義感情の影響を受け、今なお一歩も進めることができない新産業分野はいくつもある。
人工知能(AI)、ドローン、ビッグデータ、フィンテックなどの第4次産業分野はもちろん、韓国で最も多くの人材が集まる医療分野でさえ勢力争いや下方平準化の壁にぶち当たり、数十年にわたり規制緩和が実現しない。
これに対してシンガポールや米国などでは医療やヘルスケア産業が発達し、欧州や中東、ロシアなど世界各国から患者が集まり今や経済の成長エンジンとしても機能している」
政治的左派が、資本主義経済=市場機構を受入れないのは過去のこと。
反資本主義経済とは本来、市場機構軽視して直接統制経済を志向するものだ。
それを、現代に復活させることは不可能である。
中国経済の混乱が、それを見事に証明している。
韓国左派が、学生時代に学んだ理論を検証もしないで実行して失敗しつつある。
現在の「最賃大幅引上げ」だ。この失敗に懲りずに、新たな案を阻止しようとしている。労組と市民団体の支持を失うのが怖いのだ。
(7)
「1980年代に広まった運動圏(左翼系学生運動)の思考方式に今なお縛られた与党や過激な貴族労組など既得権を持つ勢力が変わらない限り、第4次産業はもちろん今何とか持ちこたえている半導体や自動車など、従来型の主力産業もこのまま衰退していくのは目に見えている」
1980年代に広まった運動圏(左翼系学生運動)の思考方式は、まさに「86世代」のそれである。
韓国経済は、反市場経済システムを信奉する彼らが率いている。
上手く機能するとは思えないのだ。彼らの夢は、北朝鮮と連携すること。
それには、労組と市民団体の意向を最大限受入れるだろう。かくて、韓国経済は破綻に向かう。
(2018年10月11日付)
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