韓国からの「資金流出」がいよいよ深刻化…ウォン安も進行でこれから起きる「大変な事態」
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作夏からの激変
真壁 昭夫(法政大学大学院教授)
昨年7月、韓国総合株価指数(KOSPI)は終値で最高値を更新した。
それを支えたのが、米連邦準備制度理事会(FRB)が超緩和な金融政策を続けとの楽観的な見方だ。
主要投資家は、半導体や車載バッテリーなど高成長が期待できる韓国株を買った。
しかし、8月に入ると状況は変化し始めた。 高値を警戒した海外投資家は韓国株を売り始めた。
秋口以降はKOSPIの下落が勢いづいた。 世界的な物価の上昇懸念、感染再拡大による動線寸断の影響は大きかった。
1月の連邦公開市場委員会(FOMC)以降は、海外投資家が韓国株の売却を増やしたようだ。
外国為替市場では、ウォンの対ドル為替レートも下落している。
韓国から投資資金が流出している。
韓国から流出する資金は増えるだろう。
その要因として、米国の金融政策の転換は大きい。
感染再拡大の収束も見通しづらい。
世界経済の先行き不透明感は高まっている。
主要投資家は、安定したキャッシュフローが得られる資産への選好を強める。
成長実現に時間がかかる“グロース株”が多い韓国株とウォンへの売りは増えるだろう。
韓国株を売る海外投資家
韓国取引所(KRX)によると、2021年、海外投資家は韓国株を売り越した。
その要因の一つに、感染再拡大による世界のサプライチェーン寸断がある。
生産の停滞やエネルギー資源などの価格高騰、海運市況の混乱によって資材や部品などの価格が上昇した。 それは、主に加工貿易によって成長してきた韓国の企業にマイナスだ。 影響を受けた業種の一つが自動車だ。 夏場のデルタ株による感染再拡大によって、世界的に車載半導体が不足した。 現代自動車は半導体不足を克服するために、車載半導体を開発している。 しかし、同社の生産台数は減少した。 韓国企業は必要なモノを自力で生み出す基礎的な製造技術を十分に習得できていないようだ。 貿易環境が不安定化すると、どうしても韓国経済の先行き懸念は高まる。
その見方から夏場以降に利益を確定し、今後の展開を見定めようとする海外投資家が増えた。
韓国株を売った投資家は、受けとったウォンを米ドルなどの主要通貨に換える。
KOSPIが下落する状況下でウォンが売られたのはそのためだ。
その後も韓国経済の下振れ要因は増えた。
最大の輸出先である中国の景気は減速した。
韓国の感染再拡大も深刻だ。
欧州委員会が造船世界最大手の現代重工業による大宇造船海洋の買収を認めなかったことも大きい。
造船は、半導体や自動車と並ぶ主力産業だ。
昨年12月に続き、1月も貿易収支は赤字だった。
韓国経済の先行き懸念は高まり、年明け以降も海外投資家は韓国株やウォンを売った。
資金流出は増加の恐れ
今後、韓国から流出する資金は増加するだろう。
その要因の一つとして、FRBが金融政策を転換するインパクトは大きい。
3月以降の米金融市場では、利上げとバランスシート縮小による流動性吸収が同時に進むだろう。
米国を中心に金利は上昇する。 緩和的な金融環境は引き締まるだろう。
これまでにまして韓国株への売り圧力は強まる恐れがある。
米金利の上昇によって、ウォンの下落リスクも高まる。
また、世界のサプライチェーン寸断は長期化する。
脱炭素やウクライナ問題などによって、天然ガスや原油などの価格は上昇するだろう。
中国経済の減速傾向の鮮明化も避けられそうにない。
その結果として、韓国は輸入物価の上昇と輸出の減少に直面する可能性が高い。
国内では卸売物価が上昇するだろう。
企業はコストを最終製品やサービスの価格に転嫁せざるを得なくなる。
その結果として、消費者物価も上昇する。
内需は減少するだろう。
韓国銀行(中央銀行)はウォン安と物価上昇を食い止めなければならない。
韓国銀行は、これまで以上のペースで追加利上げを余儀なくされるだろう。
ただし、追加利上げがウォン安を食い止めるとは限らない。
むしろ、金利上昇が家計部門に打撃を与え、不良債権の増加が懸念される。
内外需の両面で韓国経済はより強い逆風に直面するだろう。
その結果として、資金流出が加速する負の連鎖が起きる展開も否定できない。
韓国が本格的な為替介入の実施に追い込まれる可能性は高まっている。
真壁 昭夫(法政大学大学院教授)
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