【解説】スパイ出身のプーチン氏に仕掛ける
"情報戦"とは? ウクライナ侵攻
ウクライナに軍事侵攻するロシア軍は、ルハンシク州の都市を制圧。重大局面にある南東部マリウポリでは、弾薬や食糧などの補給が滞っているとの情報があります。アメリカは新たな情報戦を始めたとみられますが、その他の解決方法はないのでしょうか?
■クレミンナ「制圧」の意味合いは?
有働由美子キャスター 「(ウクライナの)最新の戦況を整理します。
(南東部)マリウポリの製鉄所では市民ら1000人以上が避難しています。ロシア側は、ウクライナ側の部隊に対して、日本時間20日午後8時から、3度目となる投降時間を設定しました」 「そして、マリウポリから北に約220キロ、東部ルハンシク州にあるクレミンナという都市がロシア軍に制圧されたといいます。
現代軍事戦略に詳しい、防衛省の研究機関『防衛研究所』の高橋杉雄室長にうかがいます。クレミンナ制圧は、どんな意味がありますか?」
高橋室長 「ルハンシク州とドネツク州の2つをロシアは狙っていますが、
(クレミンナ制圧で)ルハンシク州をほとんど制圧したと言えます」
「現地からの情報によると、(ウクライナ軍は)立てこもって市街戦を行っているというよりも、整然と後退したような印象を受けます。一度後退して戦線を張り直して、守備をまた固めたということではないかと思います」
■陥落間近? マリウポリへの支援は
有働キャスター 「一方のマリウポリですが、 アメリカの政策研究機関のこれまでの戦況分析によると、 3月26日には「近い将来、奪取」、4月2日には「数日以内に占領」、4月13日には「今後 1週間で陥落」と予測していました」 「中にいる方々にとっては相当な限界状態だと思いますが、外からの支援は難しいのでしょうか?」
小栗泉・日本テレビ解説委員 「なかなか支援がうまくいっていないようです」 「アメリカ政治に詳しい明海大学の小谷哲男教授は『10日くらい前までは、夜間にヘリが低空飛行して、弾薬や水、食糧などを補給していたが、ここに来て滞っているのではないか。アメリカはマリウポリの陥落は間近だとみている』と言います」
「また東部での新たな攻撃に備えて、アメリカは新たに8億ドル相当、日本円にして約1024億円の追加の軍事支援をする見通しです。前回の支援の際、大統領の承認から48時間後には、戦地に物資が届き始めているそうです」
「小谷教授は『前代未聞の速さだ。重火器や弾薬を一刻も早く提供しなければという、アメリカの危機感、焦りが感じられる』と指摘しています」
■ウクライナに必要な3つの「武器」
有働キャスター 「高橋室長は、ウクライナ軍が欲しいものとして榴弾(りゅうだん)砲や戦闘機、対空ミサイルなどを挙げています。なぜ今、これらが必要なのでしょうか?」
高橋室長 「(ドネツク州北部の)平原地帯で大規模な地上戦が行われますが、地上戦を有利に運ぶためには(大きな妨害なしに作戦遂行できる)『航空優勢』が必要です。ロシア軍もウクライナ軍も『航空優勢』を欲しがるので、優位に立つために戦闘機が必要になります」
「ロシア側に万一『航空優勢』を取られた時に、自分たちを守るためには対空ミサイルが必要になります。この組み合わせが、地上戦を有利にするために必要です」
「次に、航空戦でなかなか決着がつかないケースがあります。その場合には航空戦が互角の状態で、地上戦が行われることになります。榴弾砲は相手が戦車であれ歩兵であれ、きちんと射撃できれば全て撃破できる火力です」
「そういった火力、砲を1門でも多く持って、地上においてロシアに対して有利に立ちたいと(いう考えです)。ロシアの方が数が多ければロシアが有利です。戦力バランスを考えて、とにかく早く、強力な兵器である榴弾砲が必要であるということだと思います」
■「情報戦」で…戦況への影響は
有働キャスター 「アメリカとしては、こうした支援を続けていくしかないのでしょうか?」
小栗委員 「バイデン政権は、新たな情報戦を始めたようです。どういうものか、小谷教授がCIA関係者に聞きました」
「それによると、『情報工作活動としてクレムリンの中にもアメリカと繋がっている内通者がいるという、手の内を明かすような情報をあえて、元スパイのプーチン大統領の耳に入れる。それで疑心暗鬼に陥らせ、停戦に追い込むという一種の情報戦だといいます」
有働キャスター 「こういった情報戦は有効なのでしょうか?」
高橋室長 「有効かどうか現段階では評価できないものがあります。成功した情報戦というものは歴史の闇に葬られるものなので、仮に判明しても10年、20年たってからになります」
「プーチン大統領自身が情報戦のプロ、もともと情報機関の出身です。そういったことも考えて仕掛けていかないと、なかなかうまくいきませんが、ダメ元、試すこと自体はなんのコストもないので、まずは試してみることは可能性としてはあると思います
■対ロシア「戦力の分散」狙うには
有働キャスター 「この情報戦以外にも、武力以外で解決していく方法はないのでしょうか? プーチン大統領が嫌がることなど…」
高橋室長 「1つはロシアの戦力を分散させるようなことが考えられます。例えば今、フィンランドやスウェーデンがNATOに加盟する動きを見せていますが、それに対してロシアは軍事的な威嚇を行っています」
「軍事的な威嚇を行うということは、それだけウクライナ方面の戦力を割かないといけなくなります。『水平的なエスカレーション』と言いますが、他の場所にロシア軍の兵力を割かなければいけない状況をつくり出す方法が考えられると思います」
辻愛沙子・クリエイティブディレクター(「news zero」パートナー) 「ウクライナもNATO加盟を繰り返し訴えていたので、今加盟を希望している国々にもロシアの攻撃の矛先が向いてしまうこともあり得るのではと思います。兵力を分散させること自体が弱体化に繋がるのか、単に被害が増えるだけなのかと心配になります」
高橋室長 「ロシアが今、フィンランドやスウェーデンにしているように、軍事的な威嚇、脅しはすると思います。ただウクライナで大戦争を戦っているので、他の国と戦争をする余裕はないはずです。あくまで威嚇だと見切った上で対応することが必要なのかなと思います」
(2022年4月20日放送「news zero」より )
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