ロシアのウクライナ侵攻を受けて国外に移住しているロシア出身の著名人たちが立ち上がった。活動名は「本当のロシア」。中心メンバーのひとり、世界的に知られるロシア人作家で歴史家のボリス・アクーニン氏が報道特集の取材に応じた。
アクーニン氏が語った“本当のロシア”とは。
■「プーチンはウクライナ人を殺し、
同時にロシアという国も殺している」
ロシアのウクライナ侵攻後に立ち上がったウェブサイトがある。
タイトルは「本当のロシア」。ウクライナ人を支援する募金活動
などを行っている。呼びかけているのは、学者、作家、芸術家、
ジャーナリストなど国外に移住しているロシア出身の著名人たちだ。
「本当のロシア」設立者・作家 ボリス・アクーニン氏:
私たちのやるべきことは、ウクライナ人を危機から救い、
支援することです。
ボリス・アクーニン氏は世界的に知られるロシア人作家で
歴史家でもある。また大学時代から日本文学を研究し、
三島由紀夫作品などの翻訳も手掛けてきた。
その功績から2007年に野間文芸翻訳賞を受賞。
アクーニンというペンネームは、
日本語の「悪人」からとったものだ。
現在、イギリスで暮らすアクーニン氏に話を聞くことができた。
膳場貴子キャスター: ロシア人としてこの事態をどう受け止めている?
アクーニン氏: 2月24日以降、ずっと悪夢を見ているような気がします。プーチンはウクライナ人を殺し、それは同時にロシアという国も殺しています。ロシアはもう致命傷を負っていて、破滅の運命にあると思います。
2012年、議員選挙での不正を発端に、ソ連崩壊後のロシアでは最大規模の反政府運動が巻き起こった。アクーニン氏もデモに参加するなど、反プーチンの姿勢を示してきた。
その2年後、ロシアがクリミア半島を併合。その年、アクーニン氏は祖国を離れた。
アクーニン氏: 隣国の領土の一部を奪って喜んでいる国で私は暮らしたくないと思いました。
■「本当のロシア」活動の真意とは…
「プーチンを倒せるのはロシア国民だけ」
そして今回、再びウクライナに侵攻したロシア。ロシアの人々は、政府のプロパガンダに支配されているため国外にいる自分たちが行動しなければならない、それが「本当のロシア」という活動だとアクーニン氏は語る。
アクーニン氏: 本当のロシアはプーチンではないということを伝えなければいけません。本当のロシアは戦争反対、独裁反対の国なんだと。それが役割だと思っています。
国外にいるロシア人から“本当のロシアの支部を作りたい”という声もたくさん届いています。何かしたいというのは我々の共通の思いなのです。
ロシアの侵攻後、国外に脱出するロシア人が急増している。移住者を支援する団体の調査では、すでに30万人以上のロシア人がジョージア、アルメニア、トルコなどへ向かったという。平均年齢は32歳。ロシアでは若者の大量流出が起きている。
アクーニン氏: 30万人が国外に脱出したことを喜んでいます。この人たちが我々の仲間に加わりました。ロシアを自由な国に導く手助けをしてくれるでしょう。 その一方で、ロシア国内にいる人たちが行動を起こさなければ事態は変わらない。彼らとの連携が今の課題だという。
アクーニン氏: プーチンを倒せるのはロシア国民だけです。私たちが目指しているのは、ロシア国民に理解してもらうために彼らと対話することです。彼らを私たちの仲間に引き入れたいのです。しかし残念ながら、これがとても難しい。そのためには、新たな仕組みや手段を見つけなければいけません。今、それを検討しています。
膳場キャスター: 国外のロシア人を中心に政治体制を変える、革命を起こそうとしているが、また血が流れることにならないか?
アクーニン氏: 残念ながらそれは避けられないと思います。血を流さずに今の政府は出ていかないというのは明らかですから、その結果、ロシアという国が新たに数か国に分裂すると思います。非常に困難なプロセスになるでしょう。もしかしたら内戦になるかもしれない。でもどうしようもありません。この国は重い病気に冒されています、致命傷を負っています。それは事実ですから。
■「プーチンのロシアと本当のロシアは違う」
日本人に伝えたい想い
膳場キャスター: プーチン大統領に言いたいことは?
アクーニン氏: 消えてくれ。
膳場キャスター: 日本人に向けて、ロシア人として
どんなメッセージを伝えたいですか?
日本語でお願いできますか?
アクーニン氏: 日本人の方々に言いたいと思うのは、皆さん、プーチンのロシアと本当のロシアは全く違うことだと覚えておいてください。
本当のロシアは、ドストエフスキー、トルストイ、チェーホフの国です。プーチンの国ではありません。明日はプーチンがなくなります。“本当のロシア”は残りますよ。是非よろしくお願いします、本当のロシアを。
(報道特集 4月16日放送)
※情報提供は番組ホームページまで (17日09:00)