プーチン大統領に「ある変化」
国防相との“やりとり”から見える
“国内へのアピール”
ショイグ国防相から戦況報告を受けるプーチン大統領の 様子に“ある変化”が見られました。専門家は「戦果を上げていると国民にアピールするため」と指摘します。
ロシア側にはどのような狙いがあるのでしょうか。
アメリカが新たに開発した新型ドローン「フェニックスゴースト」についてわかっていることとあわせてみていきます。
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■“変化”の背景に「国内向けのアピール」
井上貴博キャスター: プーチン大統領の変化について。ショイグ国防相からマリウポリの戦況報告を受ける様子です。 少し近すぎるのではないかと。
しかし、今までは遠すぎるのではないかというのがニュースになっていました。日々暗殺を警戒しているということ、あとは新型コロナウイルスから自分の身を守りたいということもあってか、閣僚との距離を置いていました。
それが今回新たに発表された映像では、1mぐらいの間です。またプーチン大統領が机を握りしめています。少し何か小刻みに揺れるようなところもあります。
ショイグ国防相は紙を見て喋っていますが、プーチン大統領はそれに応じ喋り出す前に、右下に目を落とすというか、わからないですが、カンペを見ているようにも見える。何か文字を見てから喋り出しているようにも見える、そんな映像だったんです。
マリウポリ“事実上制圧”の報告について2人のやりとりを一部抜粋します。
ショイグ国防相「残り2000人以上の兵士が製鉄所に立てこもっています。作戦完了まで3~4日かかります」
プーチン大統領「製鉄所内の攻撃は有意義ではない、中止を指示する。兵士や将校の命と健康を守ることを考えなければならない。ハエが通れなくなるぐらいに製鉄所内を封鎖してください」
他にもこんなことを話していたんです。 プーチン大統領「亡くなった兵士の家族に補償しなさい。追加で遺族のための手当も検討しなさい。マリウポリ解放のための軍事作戦は成功した。おめでとう」 と、勝利宣言に近いようなニュアンスのことを21日午後4時(日本時間)の時点で公開したということです。
今村さんは今まで独裁者の歴史も様々研究していますが、何か感じるところはありますか?
歴史・時代小説家 今村翔吾さん:明らかに何か台本みたいなものがあるような感じには見えますし、それも台本があるってことを周りが思いそうと分からないわけではないのに、あえてこれをしてるのは、やっぱりアピールの部分なんでしょうけど、すごいチープな劇を見せられてる感じは正直印象を受けちゃいましたね。
井上キャスター:そうなると、その台本を書いてるのは誰だという話にもなりますし、小谷教授はこの映像ややりとりから感じたことはどんなことでしょうか?
明海大学 小谷哲男教授: 1つは、2~3週間前ですかね、アメリカ側からプーチン大統領には側近から正しい情報が入っていないことが報じられました。おそらくそれに対抗する形で、きちんと側近とコミュニケーションが取れてるということを見せる必要があったということ。
もう1つは、このマリウポリを解放したと国防相が報告をしていますので、きちんと戦果を上げていると国民にアピールするための映像ではないかと思います。
井上キャスター: そうなりますと国内向けのアピールと考えるのが自然なんでしょうか?
小谷教授: 主に国内向けのアピールのための映像だと思います。
井上キャスター: プーチン大統領の言動に気になるところはありましたか?
小谷教授: 最近プーチン大統領の言動がおかしいということは指摘され、そのような感じが続いていると思いますが、ここはなんとも言えないのが実情です。何か健康上の問題は抱えているかもしれません。
■「ウクライナ東部での戦いはロシアがある程度有利」
井上キャスター: ここから戦況の部分について。ウクライナ軍が反撃したとみられる地域(緑色)は北部に点在しています。一方で青い丸印については24時間以内に集中攻撃を受けたとみられる場所です。やはりロシアとの国境沿いが多いという位置関係はおわかりいただけると思います。
東部で戦争が激化しているという見出しでニュースを伝えることが最近増えました。 戦い方の変化を見ますと、北部(キーウ周辺など)は森林が多い、東部(イジューム周辺など)は平地が多い。この地理的な環境の変化も、ロシア軍の行動にある変化をもたらしているということだそうです。
航空写真で見ますと全体的に緑に見えるかと思うんですけど、緑に見える部分の濃い緑の部分は、森林です。ですから、北部キーウ周辺だと濃い緑が多い、森林が多い地帯ということになります。 東部は濃い緑色が少ないんです。つまり平地が多い。森林がない、見晴らしが良い、これが何を意味するのか。
米・ニューズウィークによれば、北部に比べると東部の戦いの方が開けた地形のため、ロシアがある程度有利になると言えます。 あとは、ウクライナ側としては自分たちの土地勘、場所の位置関係が全部頭に入っているので、森林だと身を隠しやすい。一方で、身を隠す場所がないということは、ロシアが有利に働くのが東部、そこに集中的に攻撃を仕掛けているという側面もあるようです。
■アメリカ政府が詳細を明らかにしない「フェニックスゴースト」
井上キャスター: アメリカが提供した新たな軍事支援です。 新型ドローン「フェニックスゴースト」。120機以上提供などと言われています。
明海大学小谷教授によると、 ・自爆型の攻撃ドローン ・1機で戦車1台を破壊する威力がある しかも最新鋭のものということで、ロシア軍との戦いのために開発されたということなんです。
小谷さん、このあたり付け加えていただけますでしょうか?
小谷教授: 「フェニックスゴースト」については一切詳細をアメリカ政府は明らかにしておりません。 ただ推測できるのは、既にアメリカがウクライナに提供を始めている「スイッチブレード」という似たドローン、これより性能が高いということだろうと思います。
今提供しているものは約10キロ、先のものを攻撃できますが、おそらくそれよりもさらに遠いところにいるターゲットを攻撃できるということでしょうし、おそらくスピードもかなり速くなっていると考えられます。
井上キャスター: 軍事支援というニュースは聞きますが、最新鋭の機器を提供するとなると、ある意味でアメリカ側が自国の軍事データなどもある程度開示させてしまうことになりませんか?それでもやっぱり支援するという、そういうことなんでしょうか?
小谷教授: これは、おそらく空軍の特殊部隊用の兵器だと思いますので、今の段階では詳細は明らかにならないと思いますが、今後使っていけば当然ロシア側にもその性能がある程度ばれてしまうと思います。それでもドンバスのこれから始まるであろう本格的な戦いに備えて、この兵器を提供したと考えられます。