【解説】「サル痘」欧米で確認
ヒトへの感染経路は?
専門家「パニックになる必要はない」
■「ここ数週間、サル痘患者・疑い例が報告」 ロイター通信報道
欧米での「サル痘」の感染状況です。
アメリカ・CDC(疾病対策センター)は18日、
「マサチューセッツ州で、サル痘ウイルスが確認された」
と発表しました。この人にはカナダに渡航歴がありました。
カナダメディアによると、モントリオール周辺で
17人がサル痘に感染した疑いがあるとして、
地元保健当局が警戒を呼びかけています。
ロイター通信によると、ヨーロッパでもここ数週間、
イギリス、ポルトガル、スペインなどでサル痘の患者と疑い例が報告されています。
引き続き、WHO(世界保健機関)は、状況を注意深く監視するとしています。
元々、この「サル痘」は、中央・西アフリカの熱帯雨林で散発的にみられる感染症です。
ロイター通信によると、今回、ヨーロッパで最初に確認された感染者は
5月7日にナイジェリアからイギリスに帰国した人物だということです。
■「サル痘」どんな症状?
サル痘に感染した場合の症状は、発熱・頭痛・発疹・リンパ節の腫れなどがあり、
致死率は1%から10%程度とされています。our world in dataによると、
新型コロナウイルスによる日本国内の致死率は2020年6月のピーク時で5.41%、
2022年5月は0.36%でした。比較すると、
サル痘による致死率は、コロナよりも高いということです。
また、亡くなったのは、小さな子どもがほとんどだったということです。
現在、治療法はなく、対症療法が行われ、薬の開発も進んでいるということです。
■医薬品開発で集められたサルから「サル痘」発見
日本での感染例は報告されず
「サル痘ウイルス」による感染症は、1958年、最初にこのウイルスが発見されたのが
医薬品開発のために集められたサルだったことから、サル痘と呼ばれるようになりました。
ただ、アフリカでサル痘が流行した時、いろいろな自然動物の血液を解析したところ、
アフリカのリスなどが、このウイルスを持っていることがわかりました。
こうしたことから、自然界では、リスやネズミなどのげっ歯類がこのウイルスを持ちます。
これらの動物にかまれたり、血液・体液・発疹などに触れたりすると、
ヒトにも感染します。 ただし、ヒトからヒトへの感染はまれということです。
ヒトからヒトへ感染する場合、飛まつ・体液・発疹などに触れることで
感染する可能性があるということです。
1970年、コンゴ(旧ザイール)で、最初にヒトへの感染が確認されました。
その後、アフリカ大陸の主に熱帯雨林で散発的に流行が確認されました。
WHOによると、アフリカでは1997年までの27年間で、
929人の患者が報告されたということです。
アメリカでは2003年、アフリカ大陸以外で初めて感染が確認されました。
感染源となったのは、ガーナからアメリカ・テキサス州にペットとして
輸入されたネズミなどのげっ歯類でした。
このげっ歯類からプレーリードッグに感染し、
ペットとして購入したヒトに感染し、流行が発生した。
この時は71人感染し、死者はいませんでした。
なお、日本では、まだ感染例は報告されていません。
■なぜ?「サル痘」感染拡大?
英・ロンドン大学の専門家が指摘
なぜ、ここ数週間で、サル痘が急に欧米で確認され始めたのでしょうか。
イギリス・ロンドン大学の専門家は、その理由の1つとして、
「天然痘の予防接種が行われなくなったことが、
関係している可能性がある」と指摘しています。
「天然痘」は感染力が非常に強く、致死率が30~40%にも達する伝染病として、
古くから恐れられた病気です。 ただ、その後、世界的な予防接種の取り組みによって、
1980年には根絶が宣言され、その後も患者は確認されておらず、
予防接種も行われなくなりました。
実は、「この天然痘のワクチンが、今回のサル痘にも効果がある」とみられています。
英・ロンドン大学の専門家は、「多くの国で40年以上前から、
天然痘の予防接種が行われなくなったことが、
今回のサル痘の流行に関係している可能性があるのではないか」と指摘しています。
イギリス保健省は、医療従事者など感染のリスクの高い人に対して、
天然痘のワクチン接種を行う方針を示しています。
■サル痘“日本に入ってくる可能性” 医師の指摘とは?
「サル痘」が日本に入ってくる可能性について、感染症に詳しい加藤哲朗医師は、
「感染した動物が国内に持ち込まれ、感染者が入国して
ヒトからヒトへ感染することも考えられる」と指摘します。
また、国立感染症研究所も、「アフリカから輸入された動物を介して、
日本国内で感染者が発生する可能性は否定できない」としています。
◇ サル痘は、「新型コロナのように感染者が急増することはない」とみられていて、
ロンドン大学の専門家は「パニックになる必要はない」と話しています。
これから、海外旅行などで人の移動が増えることも予想されますので、
海外に行く際などは情報収集を怠らないなど、一人一人が意識を高めることも大切です。
(2022年5月20日午後4時半ごろ放送 news every.「知りたいッ!」より)