新型コロナの後遺症はなぜ起きるのか?
岡山大学の研究チームが発表
「感染するとウイルスが体内に残り続ける可能性」
新型コロナに感染後、治った後も体調不良が続くいわゆる「コロナ後遺症」。
岡山大学の研究チームは新型コロナウイルス患者の臨床データを分析し、
一旦感染すると、ウイルスが体内に残り続ける“持続感染”が起き、
“後遺症の原因になっている可能性がある”とする研究結果を発表しました。
岡山大学の研究チームが発表「感染するとウイルスが体内に残り続ける可能性」
新型コロナウイルスの後遺症。
コロナから回復した後も発熱やけん怠感、
呼吸機能の低下などの症状が続く人がいます。
しかしその原因について、はっきりしたことは分かっていません。
■「コロナ後遺症の原因」に迫る
7月、岡山大学の研究チームがこのコロナ後遺症の原因に迫るかもしれない
研究結果を発表しました。
(岡山大学異分野基礎科学研究所 墨智成准教授)
「持続感染が原因として後遺症に苦しんでいる人も少からずいるのではないかと」
物理・化学が専門の墨智成准教授。変異前のウイルスで、
ワクチン接種をしていない患者の様々な臨床データを数学的に分析した結果、
回復後、検査で陰性になった後も、ウイルスが体内に残り続ける
”持続感染が起きていている可能性がある”と発表しました。
(岡山大学異分野基礎科学研究所 墨智成准教授)
「ウイルスがゼロになる状態が非常に不安定な状態になっていて、
持続感染した状態が新しい安定状態として数学的に出くる」
■「感染後のウイルスが体内で共存する」結果が出てしまった!
墨准教授らが作成した数理モデルでは、横軸に感染してからの日数、
縦軸に体内のウイルス量を示します。赤い線は重症化した患者のウイルス量、
黒は平均的な症状の患者、青は免疫力が高く完治する場合です。
平均的な患者でもウイルスはゼロに向かっていません。
(岡山大学異分野基礎科学研究所 墨智成准教授)
「時間かけて見てみるとウイルスがいったん下がっていくのだけれども、
もう一回上がってしまって体の中でウイルスが共存すると。
免疫細胞とやりとりしながらちょうど釣り合ったような状態で
安定になってしまうという結果が出てきてしまった」
(記者)「最終的には?」
(岡山大学異分野基礎科学研究所 墨智成准教授)
「ゼロにならないんです。密かに少量のウイルスが残ったまま、
そこからどうしても駆除できない」
■なぜウイルスを体内から駆除できないのか?
なぜ体内からウイルスを除去できないのか。
そこには“全身に感染する”という新型コロナの特性が関わっていると言います。
(岡山大学異分野基礎科学研究所 墨智成准教授)
「インフルエンザと違って上気道から入って下気道に入って、
その後、血管内に出て行って、全身にまわっていく。
例えば、中枢神経とか心臓とか肝臓とか腎臓とか、
非常にたくさん感染できる宿主細胞が体内にたくさんあって、
容易に感染できるというのが免疫が戦うのだけれど
なかなかゼロに追い込めない」
さらに、全身に感染した新型コロナウイルスを捕食する
“樹状細胞”と言われる自然免疫細胞が働き続けて数が減り、
体の免疫力が下がることで別の病原体の影響も受けやすくなるといいます。
(岡山大学異分野基礎科学研究所 墨智成准教授)
「樹状細胞が半分以下に減っている状態だと、
他の病原体が体内に入ってきた場合には感染しやすくなる。
あるいは重症化してしまう確率があがる。
いずれにしても樹状細胞が減っているということは
何らかの炎症反応が体内で持続的に起きている。
後遺症の症状として感じてしまう可能性があるかもしれない」
その上で、ウイルスが入ってきたときの免疫力の重要性を強調します。
(岡山大学異分野基礎科学研究所 墨智成准教授)
「免疫力が強い場合には持続感染も回避できるし重症化も回避できる。
体を健康に保って免疫力を最大限に高めた状態を維持することが
新型コロナに感染しかけた時にも
重症化や持続感染を回避するため非常に有効。
それがこの研究からのメッセージ」
今回は、変異前のウイルスでワクチン接種をしていない場合のモデルでしたが、
今後は変異株の場合やワクチンを接種したら持続感染を回避できるか
などについても研究を進めていきたいということです。
RSK山陽放送