サル痘に冷静な対応呼びかけ、
厚労省「手指の衛生で対策」…
欧米の患者はほとんど男性
天然痘に似た感染症「サル痘」の感染者が25日、国内で初めて確認された。
厚生労働省は国内での流行に備え、サル痘にも効果が期待される
天然痘ワクチンや治療薬を準備してきた。
専門家は「患者を早期に把握して対策を取れば、感染拡大は防げるはずだ」
と冷静な対応を呼びかけている。
サル痘はデング熱や狂犬病などと同じ4類感染症に分類され、
患者が発生した場合、医師は保健所に届け出る必要がある。
多くは自然回復するとされ、必ずしも入院する必要はないが、
厚労省は入院できる体制を構築するよう各都道府県に要請している。
国内でサル痘向けに承認されている治療薬はなく、
発熱や痛みなどへの対症療法が原則となる。
厚労省は欧州でサル痘用にも承認された天然痘の治療薬「テコビリマット」を輸入し、
東京、大阪、愛知、沖縄の4か所で臨床研究として投与できる仕組みを整えた。
一方、天然痘のワクチンは、サル痘に対し約85%の発症予防効果があるとされる。
厚労省は一部の病院で臨床研究に限り、サル痘患者の濃厚接触者に
このワクチンの接種を認めているが、今後、正式にサル痘に使えるよう検討する。
ワクチンは国内で生産されており、同省は「十分な量を確保している」と説明している。
世界保健機関(WHO)によると、感染が急拡大した欧米の患者はほとんどが男性で、
男性間で性的な接触があったケースが多い。
ただ、濃厚接触をすれば性別や年齢を問わず感染する。
WHOは患者と同居する家族や医療従事者に注意を呼びかけている。
厚労省の担当者は「性交渉だけが感染経路というわけではないため、
偏見を持たないようにしてほしい。発疹などがあれば、身近な医療機関を受診し、
手指消毒の徹底やマスク着用など基本的な感染対策をお願いしたい」と話す。
サル痘に詳しい森川茂・岡山理科大教授(微生物学)は
「サル痘は、飛沫(ひまつ)感染のリスクは少なく、
感染者と肌が触れあうほどの濃厚接触で広がる。
日本人は手洗いなどの感染対策が日常化している。
患者を早期に把握して対策をとれば、
国内での感染拡大は防げるはずだ」と話している。
外務省は25日、感染症危険情報(4段階)でサル痘に関して
全世界を対象にレベル1の「渡航に十分注意」を出した。
新型コロナウイルスでは既に全世界にレベル1~3が出ており、
上から2番目のレベル3(渡航中止勧告)が41か国に上る。
大規模流行の恐れ小さく
サル痘、多くは自然回復
サル痘のワクチン接種のために並ぶ人々=17日、米ニューヨーク(AFP時事)
国内で感染者が初確認されたサル痘は、根絶された天然痘に似た感染症だ。
人から人への感染はまれで、新型コロナウイルスのような
大規模な市中感染が起きる恐れは小さいとされる。
多くの場合は重症化せず自然回復するため、冷静な対応が求められる。
国立感染症研究所などによると、サル痘はサル痘ウイルスへの感染で起きる急性発疹性疾患。
1958年に研究用のサルから見つかり、
70年にはコンゴ(旧ザイール)で人への感染が初報告された。
自然宿主はアフリカに生息するリスなどのげっ歯類とされ、
ウイルスを持つ動物にかまれた場合などに感染する。
人から人には、感染者の発疹との接触や近距離からの飛沫(ひまつ)、
感染者が使った寝具などを介してうつることがある。
ただ、今年5月以降の欧米を中心とした広がりは
「これまでの知見と異なっている」(厚生労働省)とされ、
男性間の性交渉で感染した例もあるという。
感染研は「早期の患者発見と接触者の追跡で
感染の連鎖を絶つことが可能だ」と指摘し、
爆発的な感染拡大の危険性は低いとみている。
東京慈恵会医科大の浦島充佳教授(予防医学)は
「現時点での死亡リスクや感染力の低さを考えると、過度な心配は不要だ。
日常生活のあり方を変える必要はない」として、冷静な対応を呼び掛けている。