石巻の救護チームを率いた体験を出版 医師・石井正さん(49)
災害時にリーダーが何をすべきかが書かれている本です。おすすめです。
1年前に書いたミクシィ日記を再掲します。
2011年04月03日22:40
(3月30日に長野県の医療チームの情報共有のため送ったメール)
○須坂病院は青葉中学校避難所担当でした。避難所には800人いるとのことでしたが、日中はそれより少ないです。1日で50人弱の患者がおり、扁桃炎が多かったです。青葉中学校はライフラインが復旧していましたが、まだ復旧していない避難所も多いようです。
○私たちのグループは薬剤師が帯同しませんでしたが、薬剤師がいるとより業務がスムーズにいくように思います。
○タイムテーブルは6時宿舎発、7時より石巻赤十字でミーティング、その後準備をし8時ころ各避難所に出発。午後6時より石巻赤十字でミーティング。8時ころ日赤出発し、宿舎到着後夕食。という感じでした。県のご配慮で私たちは足を伸ばせる場所で寝られましたがバスで寝ることもあるかと思います。また宿舎と言ってもキャンプ場のような場所でお風呂などはありません。1日目は非常に寒く私はほとんど寝られませんでした。防寒対策は必要です。
(4月2日に、医療需要を研究、提言している人に送ったメール)
私が帯同した須坂病院チームは、長野県の救護医療班の一員として3月28日~3月31日まで石巻に派遣されました。長野県では間断のないよう、継続的にチームを3泊4日で派遣しています。前後2日は移動であり、実質2日間が活動日となります。1つの班には大体4病院が単位となり、長野県担当の避難所を巡回することとなります。私たちの班は他に北信総合病院、下伊那赤十字病院、信州大学医学部付属病院のメンバーがおりました。ただし、日赤系はどうも日赤本部の指示命令系統におかれているようであり、私たちとは行動パターンが異なりました。
須坂病院チームは「石巻市立青葉中学校」避難所担当でした。避難所には800人いるとのことでしたが、日中はそれより少ないです。おそらく200~300名くらいでした。働き盛りの男性はほとんどおりませんでした。おそらく片付けなどの作業か、仕事のある人は仕事をしていたと思われます。
2日で100人弱の患者がおりました。朝8時半頃、校内放送で診療の案内をすると、20名以上の方が集まってくるという状況でした。他は各場所(教室や体育館)を巡回し、診療するという体制でした。薬品の主要なものは当院から持参しました。持参薬にないもの、慢性疾患の薬などは処方箋を石巻赤十字に持ち帰り、2日後に配達していただくという体制になっております。
患者内訳はほとんどが扁桃炎、咽頭炎などのウィルス感染症でした。当然同定は出来ませんでしたが、アデノウイルスか溶連菌ではないかという医師の話でした。後は胃腸炎が数名。インフルエンザが疑われる患者も1人おりましたが、避難所本部で隔離していただいたようです。
重症の患者は、透析導入直前に被災してしまい重度の腎臓病となっている60代女性くらいで、今回の災害で重症になっているような患者はいませんでした。もっとも、要入院患者はもうすでに石巻日赤受診(入院or被災地以外の医療機関へ転院搬送)していたでしょう。
ただ、今後の医療をどうしていくかの課題は多いです。体育館の埃っぽく寒い状況の中では健康な方でも今後罹患する可能性が高いと思われます。とにかく衛生状態が悪く、感染症が爆発的に流行してもなんら不思議ではありません。私たちが伺った青葉中学校はライフラインが復旧しており、食事、水、電気は問題ありませんでしたが、まだ復旧していない避難所も多いようです。当然そういう避難所ではリスクが高くなります。
このような状況の中で医療需要をどう読むか?どの推測を勘案し、どの推測を無視するかがポイントになると思われますが、前回お送りしたメールにも書きましたように「緊急入院」だけにフォーカスさせたほうがよいだろうというのが私の意見です。予約入院疾患は被災地近くの医療機関では請け負えない状況です。
雑ですが、取り急ぎ現地のご報告です。お聞きになりたいことがございましたら遠慮なくご連絡下さい。
(4月3日NHKスペシャル 東日本大震災「“いのち”をどうつなぐのか」を見て)
<→以降がひげの感想。主観のため、事実とは異なる点があるかもしれません。>
・案の定医療需要が多すぎ、病院がドミノ倒しのように供給不足になっている。被災地、拠点病院、大学病院、県外の順番で。
→東北各県だけでなく、例えば長野県でも、どのように受け入れるのか、その準備をしていかないと。予約入院患者(早期がん患者など)を受け入れるとか。その際の医療情報の受け渡し(画像・検査データなど)が可能なのかがカギ。つまり、紹介状を書いている余裕が東北の各病院にあるのか?もっと言えば、病院自体が被災している場合はどうするのか?特に後者の場合はCT、MRI、血液末梢検査など改めて施行する必要がありその医療費をどうするのかも課題になる。
・渡波小学校の状況が流される。ライフラインが壊滅的状況のため衛生状況が非常に悪い。
→私が伺った青葉中学校はライフラインは生きていた。その観点からだけでも、渡波小学校のほうがかなりひどい状況である。青葉中学校でも、体育館に避難している人は健康体の人でもいとも簡単に感染症になりそうな衛生状況という感触を持った。TVでもやっていたが、土足で体育館や教室に出入りするため、砂、土、埃がとにかくひどい。渡波小学校では更に便の処理ができないのだから感染性胃腸炎になるのは必然である。やはり、ライフラインの復旧している場所に早く移動していただく必要がある。住み慣れた土地にという気持ちはわかるが、その気持ちを尊重している時期は過ぎたと思う。これ以上犠牲者を出してはならない。
・石巻赤十字病院の災害担当GM 石井正 外科部長がクローズアップされる。
→この方が朝晩のミーティングの取りまとめ役であったが、本当に有能な人というのはこのような人なのだと思った。現実に即した判断、発言、行動をされていた。
一例。「避難所の巡回診療の最中、石巻日赤で見ていただけかなければならない重症患者がいても、搬送するすべがない」との発言があった。
GM曰く「自衛隊にお願いできるか確認します。」
その発言に対し「ほかにも自衛隊にお願いしたいことがあるのだが、どうしてあなたはそれが可能なのか(言外に「不公平ではないか」とのニュアンスあり)」との質問が出た。それに対し GM一言、「コネでしょ」。
ここでいう「コネ」とは、今回の災害でGMが協力していただけそうな人すべてに連絡を取り「必要なときは時はよろしく」とお願いしていたことを意味すると思われる。
その一言で周りは何も言えなくなる。それだけのことをやっているだろうと思わされるからだ。これは一例で、これ以外にも感心させられることは多くあった。
リーダーシップにとって大事なのは、「この人にならついていきたい」と思わせる雰囲気なのだと思う。もちろん必要なことをおさえ、実行していることを見せるからこそ、その雰囲気につながる。あの混乱した現場でそれができるのは、ごく一部の本当に優れた人であると思わされた。
災害時にリーダーが何をすべきかが書かれている本です。おすすめです。
1年前に書いたミクシィ日記を再掲します。
2011年04月03日22:40
(3月30日に長野県の医療チームの情報共有のため送ったメール)
○須坂病院は青葉中学校避難所担当でした。避難所には800人いるとのことでしたが、日中はそれより少ないです。1日で50人弱の患者がおり、扁桃炎が多かったです。青葉中学校はライフラインが復旧していましたが、まだ復旧していない避難所も多いようです。
○私たちのグループは薬剤師が帯同しませんでしたが、薬剤師がいるとより業務がスムーズにいくように思います。
○タイムテーブルは6時宿舎発、7時より石巻赤十字でミーティング、その後準備をし8時ころ各避難所に出発。午後6時より石巻赤十字でミーティング。8時ころ日赤出発し、宿舎到着後夕食。という感じでした。県のご配慮で私たちは足を伸ばせる場所で寝られましたがバスで寝ることもあるかと思います。また宿舎と言ってもキャンプ場のような場所でお風呂などはありません。1日目は非常に寒く私はほとんど寝られませんでした。防寒対策は必要です。
(4月2日に、医療需要を研究、提言している人に送ったメール)
私が帯同した須坂病院チームは、長野県の救護医療班の一員として3月28日~3月31日まで石巻に派遣されました。長野県では間断のないよう、継続的にチームを3泊4日で派遣しています。前後2日は移動であり、実質2日間が活動日となります。1つの班には大体4病院が単位となり、長野県担当の避難所を巡回することとなります。私たちの班は他に北信総合病院、下伊那赤十字病院、信州大学医学部付属病院のメンバーがおりました。ただし、日赤系はどうも日赤本部の指示命令系統におかれているようであり、私たちとは行動パターンが異なりました。
須坂病院チームは「石巻市立青葉中学校」避難所担当でした。避難所には800人いるとのことでしたが、日中はそれより少ないです。おそらく200~300名くらいでした。働き盛りの男性はほとんどおりませんでした。おそらく片付けなどの作業か、仕事のある人は仕事をしていたと思われます。
2日で100人弱の患者がおりました。朝8時半頃、校内放送で診療の案内をすると、20名以上の方が集まってくるという状況でした。他は各場所(教室や体育館)を巡回し、診療するという体制でした。薬品の主要なものは当院から持参しました。持参薬にないもの、慢性疾患の薬などは処方箋を石巻赤十字に持ち帰り、2日後に配達していただくという体制になっております。
患者内訳はほとんどが扁桃炎、咽頭炎などのウィルス感染症でした。当然同定は出来ませんでしたが、アデノウイルスか溶連菌ではないかという医師の話でした。後は胃腸炎が数名。インフルエンザが疑われる患者も1人おりましたが、避難所本部で隔離していただいたようです。
重症の患者は、透析導入直前に被災してしまい重度の腎臓病となっている60代女性くらいで、今回の災害で重症になっているような患者はいませんでした。もっとも、要入院患者はもうすでに石巻日赤受診(入院or被災地以外の医療機関へ転院搬送)していたでしょう。
ただ、今後の医療をどうしていくかの課題は多いです。体育館の埃っぽく寒い状況の中では健康な方でも今後罹患する可能性が高いと思われます。とにかく衛生状態が悪く、感染症が爆発的に流行してもなんら不思議ではありません。私たちが伺った青葉中学校はライフラインが復旧しており、食事、水、電気は問題ありませんでしたが、まだ復旧していない避難所も多いようです。当然そういう避難所ではリスクが高くなります。
このような状況の中で医療需要をどう読むか?どの推測を勘案し、どの推測を無視するかがポイントになると思われますが、前回お送りしたメールにも書きましたように「緊急入院」だけにフォーカスさせたほうがよいだろうというのが私の意見です。予約入院疾患は被災地近くの医療機関では請け負えない状況です。
雑ですが、取り急ぎ現地のご報告です。お聞きになりたいことがございましたら遠慮なくご連絡下さい。
(4月3日NHKスペシャル 東日本大震災「“いのち”をどうつなぐのか」を見て)
<→以降がひげの感想。主観のため、事実とは異なる点があるかもしれません。>
・案の定医療需要が多すぎ、病院がドミノ倒しのように供給不足になっている。被災地、拠点病院、大学病院、県外の順番で。
→東北各県だけでなく、例えば長野県でも、どのように受け入れるのか、その準備をしていかないと。予約入院患者(早期がん患者など)を受け入れるとか。その際の医療情報の受け渡し(画像・検査データなど)が可能なのかがカギ。つまり、紹介状を書いている余裕が東北の各病院にあるのか?もっと言えば、病院自体が被災している場合はどうするのか?特に後者の場合はCT、MRI、血液末梢検査など改めて施行する必要がありその医療費をどうするのかも課題になる。
・渡波小学校の状況が流される。ライフラインが壊滅的状況のため衛生状況が非常に悪い。
→私が伺った青葉中学校はライフラインは生きていた。その観点からだけでも、渡波小学校のほうがかなりひどい状況である。青葉中学校でも、体育館に避難している人は健康体の人でもいとも簡単に感染症になりそうな衛生状況という感触を持った。TVでもやっていたが、土足で体育館や教室に出入りするため、砂、土、埃がとにかくひどい。渡波小学校では更に便の処理ができないのだから感染性胃腸炎になるのは必然である。やはり、ライフラインの復旧している場所に早く移動していただく必要がある。住み慣れた土地にという気持ちはわかるが、その気持ちを尊重している時期は過ぎたと思う。これ以上犠牲者を出してはならない。
・石巻赤十字病院の災害担当GM 石井正 外科部長がクローズアップされる。
→この方が朝晩のミーティングの取りまとめ役であったが、本当に有能な人というのはこのような人なのだと思った。現実に即した判断、発言、行動をされていた。
一例。「避難所の巡回診療の最中、石巻日赤で見ていただけかなければならない重症患者がいても、搬送するすべがない」との発言があった。
GM曰く「自衛隊にお願いできるか確認します。」
その発言に対し「ほかにも自衛隊にお願いしたいことがあるのだが、どうしてあなたはそれが可能なのか(言外に「不公平ではないか」とのニュアンスあり)」との質問が出た。それに対し GM一言、「コネでしょ」。
ここでいう「コネ」とは、今回の災害でGMが協力していただけそうな人すべてに連絡を取り「必要なときは時はよろしく」とお願いしていたことを意味すると思われる。
その一言で周りは何も言えなくなる。それだけのことをやっているだろうと思わされるからだ。これは一例で、これ以外にも感心させられることは多くあった。
リーダーシップにとって大事なのは、「この人にならついていきたい」と思わせる雰囲気なのだと思う。もちろん必要なことをおさえ、実行していることを見せるからこそ、その雰囲気につながる。あの混乱した現場でそれができるのは、ごく一部の本当に優れた人であると思わされた。